表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/164

深海哨戒大航海

 食っちまうぞ(・・・・・・)


 それは恐らく最も古い記憶であり、最も根源的な恐怖だ。


 ありとあらゆる生物は捕食(・・)という超野性的な恐怖に常に晒されているからこそ進化すると言っても過言では無いね。


 ……まあ生存ローテーションに捕食される(・・・・・)事が前提な寄生虫(わたし)が言うのもなんだけども。


 さあ、どうする(・・・・)?やるかい?




「……引いたみたいっすね、威嚇っすか今の?」


「グラさんの本来の畏怖…魔王の殺気だよ、食料になりそうな生き物も軒並み逃げちゃうから普段は全部offにしてるのさ……怖かった?」


「一応は神なんでそこは……でも流石っす暴食王、これで成長途中だってんだから根幹(・・)は恐ろしいっす」


〔ま、言うてギリッギリの合格点くらいやろな……ほんまもんの魔王はこんなもんや無い〕


 会ったことあんの?


〔チラッとだけやけどな〕


「…段々見えなくなって来たっすね…」


「何のために君を連れて来たと思ってるのさ、頑張れ松明」


「僕の扱いが雑では?……えー、調和ある世界を記せ『不消の灯光』」


「ご苦労、ぼんやり明るくなったね……でもこれよく考えたら普通に深海じゃ狙われるんじゃないかい?」


『先の威嚇で粗方逃げ出しておる故問題は無いと思うが…急いだ方が良いであろうな』


「タコさん、ダッシュ」


〔無茶言うなや!!〕


「旦那様、只今より潜航致します、お掴まり下さい」


 お……どんどん沈むけどどういう原理だこれ。


「船底に独立した重りを出しました、質量を持たせる程度であれば多少は余裕がありますので」


「ものすっごい物理的に沈んでるんだこれ…まあ褒めて遣わす、そんで……クリシュナさん、例のクールマ君ってのはどこにいるんだい?」


「アクパーラ君の遺体の下なんで…まだまだはるかに下っすよ……でもそろそろアクパーラ君の身体が見えてくる頃かと…」



 んー、こっちの光が薄ぼんやりだからと言ってもそれらしい物は一向に見えないね……


「おや、旦那様からはまだ見えておりませんか?」


「……え?」



 光源の方向を調節してみると、ずっと崖…いや壁だと思っていた物が、光を飲み込んで輝きを吐く。


「……これ……でっかい水晶か…?」


「……紹介するっすよ……先代の、世界を背負い維持する神亀」


「……彼がアクパーラ君っす」


 巨大な生き物の眼球、いや……何らかの形で眼球が宝石みたく結晶化しちゃったのかね?


 ……これタコさんソードの材料取り放題だな。


『この玉から出て生きていられるつもりならな……』


 まあ即死だよね、グラさんはともかく他は。


「眼の下まで沈んだら、鼻を目指してくださいっす」


「鼻?」


「正直最初はこんな作戦無茶苦茶だと思ってたんすけど……よく考えたらアクパーラ君なら…自分の死後に後輩へ物理的な引継ぎとして体内を通路にするくらいはやるだろうなと……」


 んー、確か同僚であり兄弟であり…殆ど同一人物なんだったね。


 ……確かに、死んでドロンする前に何らかの引き継ぎを残しそうなものだなクリシュナさんも。


「……あれか、鼻の穴と言ってもこうもデカイと何が何だかわからないね」


「はは……まあその方が抵抗もないっすよね」


「……そうか、普通は生き物の穴に入るって抵抗があるものなんだよな、そうだよな」


 寄生虫生活も長くなると嫌な慣れ(・・)ができるからいかんね、早急に人間にならないと色んなものを失いそうだ、倫理観とか。


『最初から持たぬ物を無くせるか』


 たまに毒吐くね君。


「旦那様はお優しい方ですよ、少なくともご自分には」


 お?今日はそういう日か?ハリガネさんを細かく虐める日か?ハチャメチャにいじけてやろうか?


「この上なくダサい脅しっすね……」


「まあ、かっこいいハリガネさんなんて特異点個体くらいレアなものだからね、基本こんなものさ」


「旦那様、これより前方の大穴に突入いたします」


「ああ、頼むよ」


 さて……内部まで海水が通ってるかは運次第……酸素があるなら万々歳……ただしその場合恐らく生き物もいるんだよなー。


「……旦那様、良いお知らせと悪いお知らせがございますわ」


「それ大概の場合悪いお知らせがオチになるから悪いお知らせから聞こうかな」


「前方から敵性生物が近づいてきていますわ」


「……いい知らせは?」


「この先に空洞があるようでございます」


「ギリッギリのラインで目下の問題が解決されてねえ……」


 んー、けむりんが今深海の圧に耐えられる形態な以上生半可な攻撃は通さないだろうけど……一本道で前から来るとなると抜けられるかが怪しいと。


「ふむ、タコさん行ける?」


〔アカンちょっとホンマに今は無理や、思っとった以上にリソース使うてもうとる〕


 うーん……だよねえ。


「目標、捕捉致しました……これは……亀?」


 ……亀とな?亀の体内……と言うか鼻に?



「あれは……アクパーラ君…にそっくりな亀っすかね?」


「まさか本人じゃないよね?今いるここが何だってなっちゃうし」


 お嬢ちゃんじゃねえんだから操れるわけじゃないし……会話が通じるのかね。


「……」


「何か口をパクパクさせてるっすね……喋っている感じではなさそうっすけど」


「私は能力の都合上様々な生物の声を聞くことも可能ですが、彼は何も…」


「………あ」


「ん?」


「あぁぁぁああ!!?人間だあああ!?」


「おい人語喋ったぞこいつ」


 何だ、またトンチキ生物の類か、慣れたよいい加減。


『筆頭が何を言うか……』


「大変だぁぁぁ!!」


「うわぁぁぁぁ!!!こんな事今まで無いぞぉぉお!!」


「イレギュラー!イレギュラー!」


「報告しなきゃ!」

 

 うわあ後から後から……ぞろぞろ増えやがるし喧しいなおい。



「うん……タコさん、体当たりだ、蹴散らせ」


〔血も涙もないやん……もうちょい聞いたれよ〕


「あー……落ち着きなさい小さき者共よ」


「「「「はい」」」」


 ひっ…急に全員黙ると超怖い。


「……あれ、そちらの方は」


「クリシュナ様?クリシュナ様じゃない?」


「クリシュナ様って誰だっけー?」


「待ってね思い出……あ無理だ」


「1回、1回統合した方がいいよこれ、集まろ」


 おお…何か凄い見覚えのある、具体的に言うなら『スライムたちがどんどん合体していく』的な雰囲気だ…!


『何ぞそれは……』


 1番の雑魚が8匹くらい集まるとキングになるのさ。


『弱者が補い合い王に……そういう者も居るのだな』


 まあその上にエンペラーとかもいるけどね。


 お、合体終わったかな?


「んん……ふう……お客さんなんて久々ぶりですな…ご無沙汰しております、クリシュナ殿」


「き、君は……やっぱりアクパーラ君…!?」


「いえ厳密には亀違いですが……此方へどうぞ…昆布でも食べながらゆっくりと…お話致しましょう」




「ゆっくりしていられる場合でも無さそうですし」

お久しぶりです!!



Q.けむりんは体の一部だけを変化させるとかもできるの?


A.想像出来るものであれば何にでもなります。


Q.けむりんのメイド姿は自分で気に入ってるの?


A.ハリガネさんの心を読んで1番気に入りそうな見た目になってるのでグラさんに少し似てる人を選んでいます(スタイルはちょっと変えてる)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 人退の妖精さんみたいな亀さんを蹴散らせるハリガネさん。ちっこいものへの慈しみはないんですか。 逆にタコさんの株が上がりました。タコさんリソース魔だけどそれがなかったらいいタコ。
[一言] 更新お疲れ様です! ちっこい亀さん達が可愛いです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ