突撃!深海調査団
〔自分名案ありげに海辺まで飛び出して来たは良いけど…儂に何させる気なん?〕
「海底2万マイルだよ、タコさん…呼吸ってどうしてる?」
〔確かに儂等種族は水陸行けるけど……ちょい待てや、昔の姿ならいざ知らず、今の刀じゃ全員抱えて潜るんは無理やで?〕
「わかってるさ、そもそも抱えて行くのは私とグラさんとクリシュナさんだけさ…そして足りない分は…」
「私、でございますね……ですが旦那様、触手というのは些かアブノー」
「ブレ子、けむりんをちょっと斬れ」
「了解」
「あん痛い、そんなご無体な………あ、本当に痛い…!」
よよよ…と泣く冗談はできるようだけどブレ子の刀の性質上この世で一番けむりんに効く武器なのかもしれない。
「いや、まあやりたいこたわかったんすけど……それ沖の神に協力求めても同じなんじゃないすか?」
「恐らく例の亀さん探す都合上地中に潜る必要があるからね、それにレプンカムイ達は君らみたいに受肉してるってよりは精霊に近い物だから呼吸の必要が無いみたいだし、酸素を体内に貯めておけないと思う」
ちなみにこれはレプンカムイ本人から聞いた、確かに傲慢王に吸われてても不味いって言われてたし血液が流れてるかも怪しいもんね。
「成程……んで、これから何を?」
「潜水艦造りさ……さあ絵を描こう」
えーっと……いや潜水艦の構造なんてわからねえよ、昔博物館とかで見たのは…楕円形のカプセル状?
……いやこれタコがへばりついたカプセルだな、色を揃えてバイ菌にぶつけたら消えそうだ。
『……汝、画力が絶望的だな…』
うるさいよ……それっぽい物作ってトライアンドエラーで……
いやこれにおいてはエラー=死か。
「……駄目だな、この作戦はここで終わりだ」
「何があったんすか今の数秒で………なんすかその落書き」
「何これ……触手の絡んだパン?」
「部屋の隅に良く落ちてますよねこんなゴミ」
〔ひょっとしてこの縮れ毛は儂なんか…?〕
「お前ら嫌いだよ!!バカ共め!」
「もうよい、我が描く…」
グラさんに絵が……おー、スラスラと……え、どうやって今の線引いた?おん?下書き無しでそんな綺麗に描けんの?
「……こんなものか、こやつが頭で考えている代物は……それから水中での圧に耐えるためにはここは楕円ではなく完全な球体であった方が良いな……動力は……どうとでもなる」
「これはまた随分とわかりやすいですね」
「成程、理にかなってるっすね」
〔何がやりたいんかやっとわかったわ……え儂酸素供給しながら擬態して水泳もこなすん?キツない?〕
「私の身体で外付けの動力を付けましょう、となれば……下手に硬い金属よりもやや柔らかく密度の高い靱性に長けた素材が良いでしょうか…」
「以上だ、理解したならば翔くと取り掛かるがよい」
『……どうだ汝、見事なものであろう』
拗ねそう。
『何故だ…!?』
「……うん、まあそんな感じだよ……」
「露骨にテンション下がるじゃないすか……」
「ではこの絵だけでは細部まで分かりにくい部分がありますので、1度奥様と旦那様を取り込んだ上で記憶を読み取り私が整形させていただきましょう……ほら旦那様、合体…」
「それできるならこのくだり丸々要らなかったじゃないかい!」
あ、ついにハヌさんが突っ込んだ。
「……オレがおかしいのかいこの空間は…」
「まあふざけてないで、行こうか……旧友に会いに」
「僕のっすけどね…」
「では失礼致します……イタダキマス」
今小声でなんか言ったぞこいつおい。
ぐぁぁぁぁ……痛くは無いけど凄く不快……ゾワッゾワするこの煙…!
『……リソースの塊だぞ、全身を舐め回されている様な物だ』
くそ…何か…何か嫌だ…!腹無いけど下っ腹がゾワゾワする…
「必要な事なのです、我慢なさってください」
「……じきに気持ちよさが勝ちますよ」
引き際は弁えとけよ?
「はいごめんなさい旦那様」
あー……終わった…?まだむず痒い……ってすげえ、出来てる。
球体のコックピット……て言うか操縦桿すらないから酸素ボンベ付きの乗り込める球体だなこれ、都度開く方式なのか扉も付いてない。
タコさんが水中で酸素取り込んでこっちに回してくれれば…まあ素潜りよりはマシだろう。
「私が想定した通りの出来だね……まあ原始的な物ではあるんだろうけど、けむりんが素材な以上そうそう問題は無いさ」
「ええ、ですがリソースをつぎ込んでいる分私は分裂体を出す事もままなりません…」
「足りなくなる事はないだろう?いざとなったら私等から吸えばいい」
「言質、頂きました」
「何てこと言ってんすかハリガネさん!!?」
「私も今明確に失敗したなーって思ったさ…」
「私の身体で作った空間に旦那様をしまい込むことができる……これは最早私を母と呼んでも差し支え無いのでは?」
「多大にあるだろ、いいからさっさと乗せろ」
「かしこまりました、では旦那様、クリシュナ様…そちらへ並んでくださいませ」
「はいよー」
「は、はいっす……何故肩を抱くっすか」
ノリだよ。
「我々の脳が破壊されますね、では失礼致します…」
ぐぱぁって擬音が付きそうな感じで球体が開き、文字通り私達を飲み込ん……いや怖、普通に扉とか作れよ。
「……おお…狭いっすね流石に」
「座席すら無いからね、なるべくくっ付いてて……けむりん、始めてくれ」
「揺れますのでお掴まりください…とう」
「え、どこに…うわぁ!?」
「……大胆だね」
グラさんにしがみついてもそこまでのクッション性は無いけども。
『不満か?』
いいや?
「掴まる物が他に無いじゃないっすか!!」
成程、タコ足で漕ぐタイプか。
〔これ儂めっちゃキツイんやけど!?脚が足りてへんねんこっちは!!〕
「暴食王と沖の神相手に渡り合った近海の王がその程度とは言わせぬぞ、ポリプシオン」
〔こ、このクソガキャァ!!見とれやボケ!!〕
「酷いことをするっすね……」
まあタコさんみたいなのは乗せられてるのがわかってても良いとこ見せずには居られないんだよ、男気って奴さ。
「さて……どっか深い海溝でも無いかな?とにかく下方向にさえ進めれば…」
「…あるっすよ、昔……それこそ僕すら存在してない頃に起きた大戦争で出来た深い溝が…」
神話関連の話か……この辺りは人の頃に勉強しておくべきだったと常々思うよ…
「深海なのに明るいね、どういう原理?」
「あの洞窟みたく発光する植物があるみたいっすね」
ふむ、霊廟洞窟は元々海の中だったのかもね、タコもいたし。
〔……うぉ…あれはアカンな、行儀の悪いサメが居とる〕
「わあ傷だらけのでっかい鮫……とは言えそれよりデカイシャチを普段から見てるから驚きはあんまりないな、この機体くらいなら丸呑みされるかも知れないけど」
「言ってる場合っすか……この球…戦えるようにはとても見えないんすけど」
「まあ、私が飛び出て戦ってもいいけど戻ってくる算段がないし……この狭さじゃ真空ハッチなんてとても作れないから出た時点でクリシュナさんはお陀仏だね」
「ここに居てくださいっす…てかどうすんすか」
「切り札は置いといても……取り敢えず威嚇でもしてみっか」
殺戮者系統の称号と畏怖系を全部オンにしてと…言語が通じない相手への凄み方はわかんないけど……そうだね。
生物としての根本的な恐怖なら伝わるだろう。
てめぇら全員食っちまうぞ。
5人パーティ(実質2人)
更新ですわー!はーん!




