群衆束ねる長
さて……スラムの掌握は完了したが。
目下の悩みは今満ち溢れる富に興じてる連中だね、どう足掻いたって人類は自分から豊かな生活を手放してまで人を助けたいって考えづらい生き物だ。
「……そこで何か無いかな神様」
「いやぁ……まあ人類欲深いっすからね…僕ですらそこは擁護のしようが無いっす……」
「……求める物に際限が無いのも…人の子の可愛いところよ…ね?」
「オレもその口だから言えやしないが…」
ハヌマンって結構お調子者で欲張りな逸話あるもんね。
「まあそこで君に相談なわけなんですよ旦那」
「説明をしておくれよう!?何で僕は縛り上げられたんだよう!?」
床に転がるは丸々太った巨漢の男性、頭が象な事を除けば殆どアブドゥルだ。
「前回呼び出した神が大暴れしたからね、念の為だよ……こんにちはガネーシャ神、私はハリガネさんだ」
「ああこんにちは……じゃないよう!さっさと解いてくれよう!人気者の僕にこんな事してたら後が怖いよう!?」
「ガネーシャ……」
「……うるさい、わ」
「げぇラクシュミーおば様!?なな、何で居るんだよう!」
「……貴方の頭は象にされてしまったから、そこまで良くないけれど……私に2度言わせる程では無いわよ…ね?」
「……それは…はい…スミマセンデシタ…」
「まあいいやガネーシャ、これから君の腹に蹴りを入れて行くが、落ち着いたタイミングで静かにするといい、そしたら改めて話をしようね」
「はぁー!?」
「落ち着いてた!今落ち着いてたっすよ!ガネーシャ君その人マジで殺る気なんで協力お願いするっす!」
「はい!!喜んで!!」
それでいい、縄を解いてやろうね。
「ハァ…ハァ………何なんだようあの人、クソ怖いじゃんかよう…」
「その内慣れるっすよ……基本的には優しいっすから」
「貴方も戻ってこれて、良かった…わ」
「何があったかまるで覚えてないんだよう……何事だよう…」
あり?ラクシュミーの時から見て記憶はあるものだと思ったけど……
「……」
随分バツの悪そうな顔してんなぁヴァースキ、お前まだ何か抱えてんだろ。
「……いや我としては言いづらい事なのだが……ガネーシャ神は神の中でも民からの信頼はあれど、こと戦闘力においては他の追随を許さぬ程低く…」
「……破壊神が暴走した際に近くを通りかかり、破壊神が怒髪天を衝いた余波で消滅したのだ」
「スペ○ンカーかお前は」
とは言えハリガネさんも本体だけじゃ破壊神の威圧だけで死にかねないんだけどさ。
「……ラクシュミーおば様…僕って父上に嫌われてるのかな…頭の事も…ついうっかりって……そんなうっかりあるかよう……」
「事故…よ?」
折角呼び出した神様が部屋の隅で体育座りしてしまった、まあまあなサイズだから邪魔だなこれ。
「……それで、僕を呼んだ理由はなんだよう……」
「まあ、そこら辺は懇切丁寧に黒幕に説明させるから……ちょっと待ってね、今ひと仕事終えて割と瀕死なんだ黒幕」
バスキン君ただでさえ青白い顔にゲッソリした体が余計に死人みたいになってきてるから。
「……うわ、よく見たらお前ヴァースキだしお前ハヌマンかよう……」
「僕もいるっすよ、ガネーシャ神」
「……?誰だよう?」
「ああ……知らないっすよね、僕なんて…はは…」
反対側の部屋の隅で体育座りに……神様って基本打たれ弱いの?
「それはクリシュナだ……アクパーラーの後任でありヴィシュヌの化身……覚えていないか?」
「あの引きこもりの……へー、ほーん……随分可愛い姿だよう、元々髭のおっさんと亀とは思えないよう…」
「クリシュナさんって全神公認の引きこもりなの?そんなに顔すら覚えて貰えないレベルで?」
「仕事が忙しくて基本地中深くに居たんで……」
「まあいいよう……僕の力が必要な状況なんて正直わかんねえけどよう……皆の、神々の気配が殆ど無いんだよう、今のこの国は…」
「それどころか人だって皆ピリピリしてるよう…一見楽しそうに見える連中も居るけど、ハリボテみたいだよう」
「……そんなの寂しいよう、さっさと僕のやること教えて、やって、本当に楽しい宴会しようよう」
「ガネーシャ神…いいね、君面白いわ」
「君を群衆の王として呼んだからには……つまるところ民草の気持ち、言わば世論を動かす為さ……私は力無い者に擦り寄って奮い立たせることはできるけど……正直な話今の民主を従わせられる程の実力は無い」
て言うかやれるけど多分まともに祭りが機能しなくなる。
「順を追って紙に書いてくれよう、制限時間と、最低限の成功条件、失敗条件も含めてよう」
「うむ、我が説明をしよう」
「そしてブレ子が記録を…」
「お前がやれ」
「はい…」
スラム掌握でやや回復したハリガネさんの家庭内での地位が通用しないだと…?
「ではまずは…我の正体から説明していこう…」
「……詰んでねえかよう」
「半分詰んでるんだなこれが」
本当は9割詰んでるけども。
「あと数日で祭りが開催され、それをそのままにすると……ブチギレた父上が降臨してこの国を…クールマや大陸諸共粉砕……それによって次の世界からは更にやり直しが難しくなる…下手するともうチャンスは無い可能性すらあると…」
「だから僕を使って群衆を誘導、祭りの概念そのものを変える…でいいかよう」
「ガネーシャ……脳味噌いっぱい詰まってるね君」
「学問の神でもあるからよう!」
「いやそうじゃなくてよう…!」
「祭って今喧嘩して、殺害した数で点数制なんだよう!?それを安全な物に変えるなんて……どこから調整するにしろ維持神が過労死するよう!?」
「そこなんすよねー……クールマ君と連絡が取れて、尚且つヴィシュヌ様も居てくれたらどうとでもしてみせるんすけど……1人か…って感じっす」
「そのクールマかヴィシュヌ様とやらは呼べないの?」
「クールマ君は地面を掘れば会えないことも無いっすけど……果てしないっすね、それに前任者のアクパーラー君がデカイ岩盤になってるっすよ…」
グラさんの地中潜伏スキルでどうにかならないかな?
『ふむ……我は問題ないが呼吸を必要とする身に落ちているこの者達は死ぬであろうな……汝も含めて』
あー、酸素ないわ……最悪でも無呼吸で行ける奴以外はお陀仏か。
「……今から息止め頑張れば無呼吸スキルが……いや私のスキルを上げるには時間足りないか…」
「……いや待てよ?……行けるんじゃないか?」
「ブレ子、ちょっとタコさん貸して!」
〔儂?〕
「あ、ええ……構いませんが何に使うんです?」
「ふふ、海底2万マイルさ」
今年もありがとうございましたー!!
リアルも創作も来年は良いご報告できるよう頑張りますわよ。




