忘れ去られた神々と
「叔父ですか、私はブレインイーターのブレ子と申します」
「……ミリア」
「納得早いね君ら、もうちょい驚くかと」
「いえまあ……儂等と似たような存在が干渉していることは理解しておりました故、そんな事もあるでしょう」
「オレは元ハヌマーンのハヌだ、一応だが……」
「……ハヌマーン…」
「……今言い合う気は無いよ」
「……ああ」
「……それで?どうするの?まさか、仲直り?」
「んー、結果として今の惨状はこいつのせいではあるけど……ただこれで済んでるのはこいつのおかげでもあるのよね」
「いや確かに奴隷階級や…シャルヴみたいなのが産まれた一因はこいつだけど、こいつがいなけりゃそもそもシャルヴどころか鍛冶屋のおっさん達も他の国民も存在してない可能性がデカイからね」
「……そう」
「とは言え……何度か我々に向けて刺客を送り込んだことはまた事実では?」
「……その節は申し訳なく…ループに我の預かり知らぬ者が入るのは好ましくなくてな…何より、無駄であったろう?」
まあ、割ととんでもない目に合わせたよね。
「その刺客が生きてるのはクリシュナさんのおかげだからね、感謝したまえよ君」
「……すまん」
「いや……こちらこそ……」
屈強な男達がしじみサイズの貝殻水着で浜辺に磔刑にされたもんな。
「あれはこの世の地獄みたいな光景だったね……無惨な」
「何故やったんすか…そして僕は何故手伝わされたんすか……」
「楽しかっただろう?」
「んなわきゃないでしょ」
「楽しめよ、どんな困難も楽しんで行けば世はこともなし……そう思えていた時期が私にも……無いわ」
「無いんじゃないすか…」
「……楽しい、か」
「ねえバスキン、祭りの概念って書き換えられるの?」
「可能だ、だが……あまりに変更点を増やし過ぎるとリソースが稼げず最悪の場合ループすらできずにこの国が終わる未来すらある」
「となると……人の殺し合いによって得られるリソースは何者だ…?魂の比重…いやここはもう簡単に経験値か」
人の感情ややったという達成感みたいなものにリソースが付随するなら……
「……けむりん、君は今何からリソースを得ている?」
「旦那様から…♡と、言いたいところですが殆どは地面や底を闊歩する小型生物などから得ております……殆どは」
「つまり…何かしら周囲以外からもリソースは稼げる、そういう事かね」
「イエス、でございます……私に置いては、の話で良いのならば…旦那様と共にあること、それから過去の思い出でございます」
「甘く楽しかった戦い、結果として私を受け入れてくださったご主人様の慈悲、それらを思うと力が湧き上がります……一時的なので切り札でございますか」
ほぼリソースの塊なこいつがあの規模の戦闘をしても大して弱体化しなかった理由、炉心となる何か。
「つまり、認知か」
私の『暴食王の伴侶』のスキルからグラさんへのラブコールで一時的にブーストする事はあったけど、あれやっぱり外付けの新機能じゃなくて今までも出来ていた事の強化スキルだな。
「嬉しい、楽しいって気持ちを民から引き出せれば、殺意と狂気の認知から産まれる破壊神もマイルドに出てきてくれないもんかね」
「……考えた事も無かったが……あの神が破壊の限りを尽くしていない頃と言うと…それこそルドラとの修行時代のことであるが故」
「十分だね、破壊神も笑うならやる価値はある」
「あ、父さんが悪い顔してる……これはろくな事にならない」
「すんません……僕は反対っす」
「ああ……あまりにも賭けがすぎる」
まあ、神様2人はそうよね。
「それ、失敗したら最悪この国無くなっちゃうんすよね……やるには根拠も何もかも足りなすぎるっすよ」
「同感だ、何度も言うようだが……この国はリソースが貯まりきらなかった時点で輪廻が行われず壊れてしまうだろう」
「その時……何が起こるかは我自身にもわからぬ」
「まあ、仮の話だよ……実行はもうちょい詰めないと」
最悪の場合家族総出でこの土地と共に心中かますことになりかねないし、ぶっちゃけマイルドに破壊神が出てきたとて国の破壊その物が成り立たないから世界は廻らない。
ならどの道この世界はおしまい……だけど本当にそうか?
「……んー…難しいな」
「……あ、バスキン…お前他の神様の権能使えるよな?」
「多少だがな……だが我に破壊神を打ち倒すほどの力は無い……申し訳ないが、この身体その物の限界なのだ」
「あくまで劣化コピーか……めぼしいのは?」
「……いや、どう足掻いても不可能だ……そもそも、神々を打ち倒したのは毒による影響が大きい、戦闘神ですらない我ごときに扱える権能などたかが知れている」
うーむ、使えないなぁやっぱり。
「……よし、じゃあ長くなってもいいから持ってる神様の能力とか、全部教えろ」
「それからクリシュナさんも、どんな奴だったとかそんな部分も全部知ってるだけ教えて、破壊神周り特に」
「は、はいっす…!」
「ブレ子はメモの用意、けむりんはお茶お代わり!」
「かしこまりました…」
「……変な物入れたら今後無視するからね」
「心が読めるので…?」
やる気だったのかよ。
「……以上だ」
「聞いた私が言うのもあれだけど長かったね……」
「疲れったす……あ、お茶ありがとうございます、美味しいっす…」
「恐れ入ります」
「手首が……手首が痛い…父さん、これで解決するんですか?」
「うんにゃ、全然」
「……」
「無言で刀を抜くんじゃないよ!!ちゃんと意味はあるから!!」
「興味だけで儂にこれだけの量の会話の書き取りをやらせたとしたら…貴様の本体を縦に割く」
何それ恐ろしい……いやでもまあ、尋常じゃねえ量だな改めて見ても。
「そろそろ教えてくださいよ……何で突然こんな事を?」
「私の武器は口先八丁で、神様相手でもそれが効くことは証明済みなわけだ」
「……何すか」
「……何だい急に」
「……ね?」
「グラトニカ殿!!浮気ですよ!!現行犯!!妻の目の前で他の女性の肩抱いてますよ!!」
『構わん……が、後で話がある』
やべ。
「でもまあうん……私が思うに破壊神をどうにかして正気に戻して、その上で輪廻システムの修復するためにはどう考えても人手も能力も足りん、というわけさ」
「それはまあそうっすけど……だから困っているのでは?」
「だから、私は認知することにしたのさ、忘れ去られた神々を」
「……バスキン、お前に最高の死に場をくれてやる」
「私の為に死んでくれ」
お久しぶりでーす!!!
過労と肺炎によって心身共にズタボロで全く書けませんでした!!ごめんなさい!!
何とか生き残りました、皆さんも身体には気を付けてください!




