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愛とは形無き物

 やあ皆、お肌の乾燥が気になった経験、あるよね?


 私は今さ。


 そうさ、いつもの土下座タイムさ。


 何なら今日はグラさんも不機嫌なもんだから私の魅惑の本体(ハリガネボディ)が床に伏せているところさ。


「随分と余裕だな、汝?」


「また……誑かしたので?」


「アンタ……本当に虫なんだな…」


「ハリガネさん……釣りに行ってメイド釣れたの?」


「いやまあ……人手は多いに越したこたないっすけど…」


「君……やるね……本当に……いやそら僕も若い頃は色々ヤンチャもしたけど…1つの国で3人引っ掛けるかね普通…」


 見てごらん、私を信じる心が1mmたりとも存在してないこの眼を。


 違うんだよ皆、邪なあれじゃなくてね。


「……では海辺で偶然メイドを拾ってきたと?」


 メイドになったのは諸々終わってからだよ…


「……邪な気持ち無くメイド姿にしたのですか…?」


 やっべえ、さっきから娘に対する駄目な選択肢ばっか踏んでる気がする。


「……ええい話が進まぬ、そやつは古い力の吹き溜まりが形を得た特異点個体よ、名は……」


「ど…ドッペルゲンガーと申します、旦那様はけむりん(・・・・)と…」


「……嫌な事は嫌と言っていいんですよ、ドッペルゲンガー殿…父さんのあだ名ですね…?」


 お、私のネーミングセンスに何か文句がおありかな?んん?


「え、いえ(わたくし)は…」


「話が進まんと言っておるだろう、その者はブレ子に化けて我等に接触した……故に叩きのめしてメイドにしたのだ」


 まあ平たく言えばそうなんだけど大分端折ったね…


「……そしてそやつが襲いかかってきた理由はハリガネムシ(これ)に恋焦がれた一心でと…なあ、汝?」


 初めて会った時ばりの殺気だね!?


「……元カノ?」


 違うよ!?


「いえ、厳密に言うと私の片想いで旦那様との関係としては身体だけです」


「外道が!!」


 もっと違うよ!?


 お前ちょっと待てけむりん、うちでの順応早すぎるだろ。


 初見はもうちょっと戸惑うよこのパーティ、そこのハヌさんみたいに。


「…………」


 おや駄目だ、思考が宇宙へ旅立ってる。


「……けむりんは、ハリガネさんが好きなの?」


「好きだなんてそんな……ただ遠く離れた土地から痕跡を頼りにここまで追いかけて来て、活路を見出せずに悩んでいる旦那様の姿を眺めては悶え、この身に溜まった膨大なリソースを捧げてでも旦那様の勝利する姿が見たいと思った程度でございます……いえ、簡単に捧げる気は無いんですのよ?ただ私ごときに負けるような旦那様であればそれはそもそも命を賭けるに相応しい相手ではありませんし、そんな風に考えていたら気がつけば身体が勝手に動いてしまって……ですがブレインイーターお嬢様に完全に化けていたのに一瞬で看破した慧眼や、その後の私でさえ予想もつかない私の攻略法(・・・)を導きだしたり、御友人様がピンチに現れる豪運、グラトニカ様との信頼関係……場面を一つ一つ区切って思い出しても私……あぁ……あ……」


 ちょっ!?けむりん落ち着いて!モヤが!あのヤバいモヤが出てきてるよ!




「っは…!…失礼いたしました…」


「……成程、そうなんだ…」


「……グラさん、『砕け散れ、我が宿業』使おう」


「落ち着け、今は敵では無い…はずだ」


「……味方にこれ(・・)がいる方が怖いでしょ、ハリガネさんって変態を惹きつけるフェロモンとか出してるの?」


 どうしよう、否定できない。


「……ハリガネさん、年長者の意見としては独占とかを求めないのに自分を側に置いておこうとする奴は割とヤバいことが多いね、刺されて済むならマシな方だね」


 知らねえよお前の痴情の縺れの話は!!ハリガネさんは全年齢対象寄生虫なんだからそんな心配はねえよ!!


 まあこの子のスキルはかなり便利に使えるから……


「使えるだなんてそんな蔑ろにするような言葉……そんな風に言われると私…」


 ん、ごめん言葉のあやさ、聞き流してよ。


「いえ気持ちよくなってしまいます」


 こいつマジでスキルが強くなけりゃ追い出してんだけどな。



 あ、やべえハヌさんが遠い彼方から帰ってきたけど怪訝な顔してる。


「…も…モテるんだね、アンタ……と言うか喋ってるのかい…?」


 あ、こっちの声聞こえてねえわ、心の声読めない側がマイノリティなことあるんだ。


「……ハヌ、貴様本当に記憶が無いのか?」


「朧気なんだ、アンタ達と過ごした記憶があるような…無いような…」


「……ハリガネさん、ハヌさんの記憶…戻すっすか?」


 あー……私達に襲いかかっちゃった記憶も含まれてるもんなそれ……流石にアブドゥルみたいにはならないだろうけど、気にしそうだよね。


「……いやとは言えボコボコにしたのでしょう?こちら側は誰も死んでいませんし…シャルヴがこの場に居ない今だからこそ戻すべきなのでは?」


「……記憶戻したらまたあの姿になったりはしないの?」


「それは無いっすね、リソースもフラグも足りないっす」


「例えなってもグラトニカが止めるだろうしね?」


 ……まあ、諸々何とかしようか、実際問題1から全部説明するのも大変だし。


「……オレに何が起きたのか知るのが一気に怖くなったよ……だがやってくれ、おかしな話だけど、殆ど覚えちゃいないってのにアンタ達を信じたいんだ」


 ……記憶飛んでてもハヌさんだなぁ……じゃあクリシュナさん、頼むよ。


「っす……『調和を尊ぶ物語』」


 青白い光……綺麗だけどやっぱちょっと怖いよね、チェレンコフ的な意味で。

 


 さて……グラさん、入れて。


「……後で言い訳の続きを話せよ」


 ……うす。


「……うっ…!」


 フラッと前に倒れかけたハヌさんをすかさずキャッチ……彼氏力高いねグラさん。


『やったのは汝であろう……』




「やあハヌさん、気分は?」


「……最悪だよ……アンタ怪我は…くそ、腹が立つくらい元気そうだね…」


 結局1回死んじゃったけどね……でも、ハヌさんは誰も殺してないよ……ちゃんと止めた、しかも忘れなかったよ。


「……良かった……本当に良かった……ありがと…」



「……御友人様、あまりそうベタベタとくっつくものではありませんよ、お嬢様達の前です」


「何より私が羨ましいのでやめてください」


「……アンタは…新顔の割に馴染むのが早いね…」


「どちらかと言えばかなりの古参ですから、お嬢様達より早く出会っているんですよ?」


『結局のところ付き合いの早さも長さも我が1番だがな』


 初めての寄生はデカイコオロギだったけどね私。


「ったく……素直に落ち込ませてもくれやしないねこのパーティは……」


 …………ふむ。


「ハヌさん」


「…あん?」


「……来るかい?」


 両手を広げてウェルカム、よおしばっちこい。



「………すまないね」


 


 泣け泣け、泣いて吐き出して次行こうや、そしてグラさん本当にすんません。


『構わんぞ、先の戦いでは助けられたからな…我はそこまで狭量ではない』


 お、珍しく余裕あるね?


『……まあな』


「……どーん」


 ぐえ……お嬢ちゃん、死角から急にタックルは…


「とうっ!」


 ブレ子……お前鎧の分重いんだから気を使え。


「……じゃあ僕等もね?」


「いや…僕は別に……」



「いいよせっかくだから来なよ皆……もう無いぞこんなサービス」


「では私も……」


 ……まあいいけど。



「……暑い!!多くないかい!?」


「ただでさえ暑い国なのに鎧着たやつ含めておしくらまんじゅうの真ん中だからね」


「……本当に、ただ落ち込ませてはくれないねアンタ達は…」



「それが我が家さ、改めてお帰りハヌさん……じゃあ切り替えて早速王様暗殺しようか(・・・・・・・・・・)



「…………?」


 しまった、またハヌさんの意識が遠くに。

待たせたなぁ!!



Q.けむりんはヒロイン?


A.銀魂で言うとさっちゃん。


Q.ハリガネさんって自覚して誑してんの?


A.タチが悪い事に自分のパートナーの美貌と自分の口の上手さを理解している。

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