闇を散らす暴風
「情けない男…女か?まあいい……とにかく情けない奴だねアンタ、出会ってそうそうに助けてくれだなんて」
「あの化け物見てわかんだろうよ、今はとにかく人手が欲しいのさ、頼めるかい?」
んー、何かそこまで時間経ってない筈なのに懐かしい……あ、横顔綺麗。
『汝……?』
いや浮気とかじゃなくてね、こう……造形がね?
『……そうか、後で存分に鏡でも眺めるとよい』
『……これを片付けた後にな』
うーん……勝てるかね、ハヌさんが来たとて。
「ハヌさん、あのモヤモヤに直接触んないでね……数秒でも皮膚が所々持ってかれた」
「ああ!?相性悪いねぇ…って、アンタ今何で名前…」
「昔の知り合いさ、そんな事もある」
「アタシに覚えが無い辺り、前回からの付き合いかい?」
「……本当に覚え無いの?」
「新手のナンパみたいだね、1度でも会ってたらアンタみたいなべっぴんさん忘れやしないと思うんだが、ところで……こいつはなんなんだい?」
「えーと……昔の知り合い?」
「アンタどんだけ節操なく手出してんだい!?」
おかしいな、出会って数分でどえらい誤解を持たれた気がするぞ?
『貴様は言葉が足りない上に言葉が多いのだ……』
パラドックスが起きそうだな。
「おわっと!……炎に毒に超高圧の水と酸…何でもありだね…!」
「『暴風の寵児』!おいアンタ!名前は?」
「私はハリガネさん、寄生虫さ……外側はグラトニカ、暴食を司る魔王だよ」
「はあ!?こんな時にそんな妙な冗談……じゃないの…かい……そうかい、前回のオレがとちって、アンタに迷惑かけたんだね」
「お、だんだん思い出してきた?」
「……いや、朧気だ…アンタ達と仲間だったこと、それから…アンタに惚れてた事だけさ」
それだけ覚えてれば十分だね。
「合わせるからあのモヤモヤの攻撃を弾き飛ばして貰えるかい?」
「簡っ単に言ってくれるね……だが、何だかアンタとならできそうだ……力が溢れ出てくる」
お、『魔王の矜恃〈type:Glu〉』か……グラさんのステータスも上がってるし良い感じに強化されてるね。
『ああだが……足りるか?』
……後押ししとく?
『……頼む』
「あー……愛してるよグラさん、心から」
「こんな時に惚気かい?って……うぉ!?」
強化され過ぎだろグラさん、『更に先へ』は使って無いのに光りそうなくらい漲ってんぞ。
『黙れ!そう言うスキルなのだ!』
『暴食王の伴侶』…私の思いの丈によってグラさんの強化って言ってもあの言葉だけでこれとは……厄介なスキルと思ったけど割ととんでもないよね。
さっきのグラさん対グラさんの構図でも明確に勝敗を分ける程度には活躍したみたいだし……
……でもこれ毎回言うの?
『……言え、絶え間なく想い続けよ』
……それ強さが目的?
『………………』
「急に威圧が増したかと思ったら黙りこくって……アンタ大丈夫なのかい?」
「私に愛を囁かれないとこの体の主がやる気出ないんだってよ」
『言っとらんわそんなこと!!』
「馬鹿言ってないで構えな!来るよ!」
「『降魔舞踏LV.10』!ほら行きな!」
ナイスハヌさん!
「『加速LV.10』『加速LV.10』『加速LV.10』」
ハヌさんの風と蹴りのコンビネーションで攻撃を弾き……私達のダッシュで周りを取り囲む事でモヤモヤが無限に広がるのを閉じ込める……即興な上にこんな馬鹿みたいな戦い方が通用しちゃうとはね。
まあでも砲門がこっちに向き続けてるのは変わらないしそれがハヌさんに向かうのもまずいから…姑息に行かせてもらうけどね。
「えい…ゆ…う…………」
どっから発声してんだこいつ……まあ口っぽい器官はいっぱい見えてるけど、とても喋りそうには見えねえな。
「ハヌさん!!合図したら前方向にデカイの頼むよ!!」
「おう任せな!」
「なあ物真似名人、言ってみろよ、お前は私の何を見たかった、何で接触してきた!?」
「えい……ゆ…う……え……い」
「わかんねえんだよ!!はっきり言え!てめえはどうなりたかったんだよ!!」
「だから……私は……」
「……君を…君と一緒に戦いたい…君の傍にいたい……こんなに……強くなったよ……だから……」
「隣に置いて……もっと君の輝く様を見せて……それだけで……いいから」
「ハリガネ!!こいつはいったい何を言ってるんだい!?」
「君と同類みたいなもんだよ!!」
「はぁ!?……ああ、そうかい」
結局のところこいつが私達に接触した理由も、ハヌさんが助けに来てくれた理由も同じさ。
皆グラさんが好き。
『え…いや我か……?汝じゃ…』
少なくともハヌさんは君だろ、グラさんのツラの良さじゃそれも仕方ないね。
「ドッペルゲンガー、君の気持ちはわかったけど……応えてあげることはできない、わかるだろう?」
既婚者なものでね。
「……嫌だ……嫌だよ……えい……ゆう……1人に……なりたくない……」
1人が嫌か……この寂しがりめ、安心しろよ……うちは騒がしいからね。
「だからさっき約束したろ、お前が負けたら……一生うちのパシリだよ……ハヌさん!!」
「……父なる神■■■■の名に置いて命ずる…『決して止まぬ暴風LV.10』」
歪んで見える程の風の球体……狼爺さんが使ってたのに近い技かな?何にせよ……そんな技あったの君?前回ハヌマーンの時に使われなかったのが奇跡だな。
「あ……ぁぁ……舐める……なぁぁぁ!!」
「あの黒い煙を一部に集中して風を受け切る気かい…ハリガネ!!行きな!!」
「ナイスだハヌさん…君最高」
助走は十分、各種スキルもONにしまして…さて。
今後こき使ってやるから覚悟しろよ、けむりん。
『もうあだ名を…?』
いつまでもドッペルゲンガーじゃ長いからね。
しかし……世話かけるねグラさん。
『良い……今は疾く片付けよ』
『……怒ってない訳では無いからな、後で話がある』
……うす。
「行くぞけむりん、本気の速さだ」
「『砕け散れ、我が宿業』!!」
パソコン買いました!今後は配信とかもやってこうと思ってるので見に来てね!!
Q.ドッペルゲンガーの詳細を聞きたいです。
A.拡張解析に載せるよ。
Q.ハリガネさんと別れたあとのドッペルゲンガーの動きは?
A.拡張解析に載せるよ。
Q.爆発するアサリとかサワガニって結局どうしたの?
A.水槽とかに入れようかと持って帰ったらレプンカムイがバターと醤で炒めてた。