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憧れとは目を瞑る事

 ……さて、第2ラウンドなのかな?


「えい……ゆう……」


 グラさんの腹に穴開けて直接私を引きずり出すとは恐れ入ったね、ここは(・・・)?見た限りだと森っぽいけども。


「え…い………」


 やあドッペルゲンガー、フェイスレスのが聞き馴染みはあるけど何て呼ぶ?いやまず意思の疎通が可能かも分かんないんだけどさ。


「……話せますよ、勿論」


 お、気分は落ち着いたかな?…てかそれ誰?見た事ない女の子だけど。


「ええ……先程は取り乱してしまい申し訳ございません」


「この姿はどこぞで見た町娘です……獣に襲われ腸を食い荒らされていたので貌を拝借しました」


「その……貴方様の御知り合いの姿では混乱させてしまっていけないと」


 成程ね。


 それでこの場所は君の体内ってことでいいのかな?


「……ええ、あの者がいる場では落ち着いて話もしづらいと思いまして…僭越ながら私の体内に作った景色でございます」 


 幻覚……じゃないのかな。


「私は影……物事の裏面、すなわちこの場所もまた現実に存在する場所なのでございます」



 成程ね…………えごめん、つまりどこなのここ?



「……有り体に言えば私の体内に広がる現実とは少しズレた位置にある場所と申しましょうか…」


 別次元じゃねえか、とんでもねえ能力だな。


「奥方様も大概かと……」


 ……改めて他人から言われるとクるものがあるな。


 んで結局君は何の用だね、娘に化けてたり突然ガチバトル始めてみたり、情緒が私並に不安定じゃねえか。


「貴方様並などと言われてしまうと照れてしまいます……私の情緒なぞまだまだ遠く及びません」


 これギリギリのラインで褒められてないな?


「……少し、昔話をさせてください」


「英雄様、地脈をご存知ですか?」


 ご存知ないね、お湯とか出るやつ?


「間欠泉ですそれは……いえしかし通ずるものはありますね……大地を構成し、地下を血液のごとく流れるリソース、それの吹き出し口となるのが地脈です」


「……私はそこで産まれました…いや、産まれた(・・・・)ということ自体正しくは無いのかもしれません」


「水を求めて水場に生き物が集まるように、地脈にもリソースを求めて数多くの魔物が現れます……私はずっと、それを眺めていました」


「毛の生えている者、ツヤツヤとしている者、見上げるほど大きい者、生き物か分からぬほどに小さい者……数え出してはキリが無いほどに、沢山の生き物を見てきました」


「沢山の生き物を見て、地脈に触れた生き物の姿を写す鏡の様に変身し、立ち去ればまた貌を失う……」


「……ある日思ってしまったのです、私にはどうして彼等のような(カタチ)が無いのだろうかと」


「……そして気が付けば私は貌無き者(フェイスレス)と呼ばれる存在になっていました」


 生き物でなく自我を持った自然現象か…じゃあ君は結局のところ……何なの?


「……リソースでできたガス状の現象、それが私の本来の姿です」


「そう……私は本来ただの現象、感情など持ち合わせるはずもない…ですがある日突然知りたい(・・・・)という欲望に支配されたのです」


「世界を知りたい、世界を旅したい……そして」


 実際に旅をするようになって、どっかの水辺で私の卵を取り込んでしまったと。


「……はい、恐らくは」


 ……交通事故みたいなものだよね。


「ああいえ……嫌ではありませんでしたので、戸惑いはありましたが……貴方の感情豊かな言葉の数々、1人なのに何人もお友達ができた気分でした」


 そう?それならまあ良かった……いや独り言だったんだけどさ全部。


「本当に楽しかった……」


「ずっとそうしていたかった……貴方は私の初めての友達で……沢山沢山話したかった……」


「でも、そうはならなかったんです……貴方は、貴方様は英雄でした」


「自分が死ぬかも知れなくとも誰かを助けずには居られない……」


 ……そっか。


 あの時のお礼、言ってなかったよね。


「……あの時?」


 でっかいミミズモドキと戦った時さ、最後に崖から自分ごと放り投げて……私だけ崖の上に上げてくれただろう?


 ありがとう、君のおかげで私も、私の娘も助かったよ。


「……」


「…………」


 ちょ、何でそんな泣くかな!?私変な事言った!?


「す、すみません……嬉しくて……」


 泣かんといて……ハリガネさん女の子の涙に弱いんだよ、物理的にも塩分でやられるし。


「……お会いしたかったです、あの時からずっと……私の英雄様……沢山沢山探しました……私、強くなったんです……」


 ……まあそれはいいんだけど、さっきは何で襲いかかってきたんだい?


「それは……英雄様の戦う姿が見たくてつい……」


 …………さっきグラさんに押し負けてブチ切れてなかった?


「……ヤキモチです」


 ……お前多分だけど私に対してそこまで強い感情……いや、方向性がそうじゃない(・・・・・・)だろ。


「……そんな……私は貴方様の事だけを想って……」



 …………じゃあなんで『共生』が発動しないんだい?


 ここは、君の体内だろう?


「………………ふふ」



「…………あははははは、流石です、流石すぎますよ英雄様」




「打つ手なしと腐ってる姿を見た時は殺してやろうかとも思いましたが、素晴らしい、最高です」


「私の英雄様はどんなに部が悪くてもピンチでも絶対に1枚上手なんです、油断せず、絶対に騙されたりはしない」


 うーん……イカれてやがんな、さあてどうするハリガネさん。


「もっともっともっともっと格好良い姿見せてください、もっともっと本気で戦いましょう、あの下品な虫ケラなんぞに任せずに」


「ここで永遠に戦い続けましょう」


 ………………それは(・・・)地雷だよ、物真似名人。


 撤回してくれ、グラさんは素敵な人だ。


「いいえしません、その方が本気でやりあってくれるでしょう」


 

 ……て言っても実際私だけじゃ戦闘力なんぞたかが知れてるしな、降参していい?


 ……ダメか、そうか。


 なら仕方ないね、綱引き(・・・)しようか。



「そう、貴方様は勝ち目の無い戦いでこそ向かっていかずには居られない……だからこそ英雄なのです」


 買いかぶるなよ……成り行きさ、できれば穏便に生きてたいんだぜ?


 でもハリガネさんは英雄(ヒーロー)じゃないからね。


 だから君は、ただただムカつくから(・・・・・・)ぶっ飛ばすよ。



 うん……よし、じゃあ私が勝ったら君うちのパシリな。


「なら私が勝てば貴方様は私のものです、もっとも私に負けるようならいりませんが」


 

 ほざきやがる、後悔すんなよ。


 

 魔王の伴侶のド根性、てめえの魂に焼き付けていきやがれ。


[アクティブスキル『寄生LV.10』使用]


[侵食を開始します]

1日遅れてすんません!!


Q.溶解王ってどのくらい強いの?


A.本体は超強いけどスライム系の方々は自分を分けて散り散りにしてるからグラさんとかなら勝てるよ。

それ故に殺し切るのはかなり大変だけどね。

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― 新着の感想 ―
[一言] ハリガネさんがグラさんのこと照れずに伴侶って言ってるの微笑ましいわ。
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