罪業とは理解した瞬間重く伸し掛る
神も何もが寝静まる真っ暗な夜、奇襲にはピッタリだね。
「……あの、これ意味あるんすか?」
「勿論あるともさ、明確にあの場で記憶を持ったままループしているかもしれない人間だし…祭りにおいて彼は常連だからね……ブブの爺様って手もあったけどあの人殺し合い以外にコミュニケーションのコマンド無さそうだし」
「いやそっちじゃなくて……何でこんな真っ黒な衣装を……」
「……趣味だよ」
暗殺って言ったらこう言う真っ黒なローブを頭まで被って方がそれっぽいかなと……別に暗殺しないけど。
ちなみにローブは街からかっぱらってきた物をタコ墨で染めた物さ。
故にやや臭い。
「まあ……僕は例によってあんまり力になれないんであれっすけど……」
「ぐだぐだ言ってないで行くよ……」
そう、ここはとある家の天井裏。
足元に見えますわ世にもおぞましいこの世の怠惰の象徴のような男。
皆大好きアブドゥルさんだね、私は嫌いだけど。
「すぅ……とう」
流れるように落下、そして空中でバランスを取ってからのー。
「んごふっ!!?……あ……がぁ……」
「ハリグラさん式フライングニードロップ…相手は死ぬ…!」
「いや、殺さんで欲しいんすけど…」
「生きてる生きてる、鳩尾狙って自由落下しただけだから」
顔紫色だし白目剥いてるけど。
「……人間ってそれで死にません?……むしろ死んでません…?」
まあアブドゥルは結構強かったって聞いてるし大丈夫だろ、知らんけど。
「よしっと……ほら助手、手っ取り早くこのローブで包んで拐うよ」
ほれこのように包んでしまえばあっという間に……何だこれ。
おかしいな、人らしい部分は隠してるのにシルエットだけで事件性を感じるぞ。
『汝……見つかればことだぞ……』
グラさん判定でも駄目なんだこれ、もう迅速にずらかろうか。
「父さん……この生き物が船に居ることに耐えられませぬ」
「うーん、祭の時もそうだけどミリアに変な物見せないで欲しいよね…」
不人気だなぁこいつ……
「ごめんよ皆、ちょっとばかしこのデカイのと話す事あるから……うん、クリシュナさん以外は出て行って貰おうかな」
「……子供扱いしないでってば」
「いやぁ…子供関係なしに見られたくない事をするつもりだからさ…ほら、レプンカムイと近海の遊覧でもしといで」
「いいね、夜の海はまた違った感じで楽しいし水中からの景色を見してあげようかね」
あ、言い出しといてなんだけど凄いそっち行きたい。
『汝には仕事があるだろう』
わかっとるわい……
「ふう…………よし、起きろ」
垂みきった脇腹に鋭い爪先が突き刺さ……ブヨっとする……いつぞやの母親みたい…キモイ。
「うごふ!?な、何だ君達ぶぎゅう!?」
「落ち着いて聞いてアブドゥル、君に危害を加えるつもりは無いんだ」
「え、今蹴…」
「うるさいよクリシュナさん、細けえこたぁいいんだよ」
「私だ、グラトニカだよアブドゥル……おい兄弟、忘れちまったか?」
「あ……えぇ……君……あれ祭は……」
これ思い出しかけてるやつ?予想外のダメージで頭が働いてないだけ?
「両方だと思うっすよ」
「しっかりするんだアブドゥル!!脳みそをフル回転させて記憶を呼び起こせ!!今際の際に立ってるぞ君は!!」
これは君を殺したくない私なりの愛なんだ!愛という名の往復ビンタだ!
「や!?やべ!なぐ…!殴らないで……!?」
「落ち着いたかいアブドゥル……思い出してくれただろう?」
「お、思い出しまちた……なぐららいで……」
「何だその喋り方、ふざけてんのかお前殺すぞ」
「口の中腫れて喋れないんすよ多分……いやてかハリガネさんこんな容赦ない人だったっすか…?」
娘が世話になったからつい……
『家族の前では見せる多少の倫理観すら無くせばこんなものよ……友と呼んだ生き物を絶滅寸前まで食い荒らしたこともある』
あったねそんなことも。
「……ふー……ふー…………君…前回の祭で僕とは戦わなかったけど……ブブと戦ってただろう?」
「思い出したか友よ、ブブの爺様は美味しかったさ」
「まさか勝ったのかい……?いやそんな事はいい…………なんでこんな事すんだい……?」
「ああごめんよ、まだそう言えば拐った理由を話してなかったね……何勝手に質問してんだてめぇこの野郎」
「いだいいだい!!?ごめんなさいぃ!?」
「心2つあるんすか…?」
『これが素だ、その内慣れる』
「……わかってくれたかな?君は今こう言う状況で、言葉は慎重に話さないといけない……とびっきり私からの好感度が低いからね、その上で質問するよアブドゥル」
……って言っても何から聞こう。
『祭での事であろう?』
うん、プレイヤーとして参加し続けてる人間と、運営側に1枚噛んでたクリシュナさん、そして異物の私達。
この3方で話しながら上手いやり方を模索するつもりとはいえ、こんだけ殴っても反撃の1つも無いあたり前回で随分弱くなっちゃったのかも。
「うーん……アブドゥルお前どこまで覚えてる?」
「えっと……祭に出る前と、出てる時……マスクの……僕殺されたんだ」
「うん、私の娘に粉々にされて死んだらしいね……良い奴だったのにな、ざまあみろ」
「……君そんなんだった?」
「私はこんなもんだよ、この後死ぬ奴の前で取り繕う必要も無いから前に話した時とは違うかも知れないけど」
「さてアブドゥル、お前祭についてはどのくらい知ってる?」
「えっと……祭で殺せば殺すほどポイントが溜まって、次の世界では尊い存在になれて……」
「はいクリシュナさん、これについてどう思う?」
「どうもこうもねえんすよ、そんなイカれた風習あるわけないじゃないっすか」
「だよねえ……じゃあもう根本から違うじゃん認知……」
「違うみたいっすね……果てしない作業っす」
「うーん……じゃあ、非人はどう言うものだい?」
「え……そりゃあ…………えっと」
「殴らないから、お前がした事も含めて話してごらん」
「……えっと」
「……クリシュナさん、大丈夫?」
神も青ざめるんだね、今にも倒れそうって感じだ。
「吐きそうっす……誰がこんな……こんな業を……」
恐らくは蟲……目的はわからないけどね。
「……クリシュナさん、大丈夫?これが恐らくはこの国の人間の大多数の認知なわけだけど」
「……やってやるっすよ…!」
「マイナスな面もプラスな面も含めて人間っすから……それを正す神が諦めたらこの世は乱れっぱなしっすから…」
「今が、今が1番のチャンスだって言うんなら、僕だって命を賭けて民を救う責任があるっす…!」
『……神風情が吠えるではないか』
ね、ご立派。
「……アブドゥルよ、貴方を殺しません……その代わり……惨い事を今から貴方に行う……許して欲しいっす」
「……ひ……ひゃめ……」
「違うよアブドゥル、殴らない……蹴ったり、痛い事はしないよ」
「だけどこれは君にとってとても重い罰だ、だからまあ……頑張れ」
「どんな目にあっても最終的には助けてやるから」
「じゃあクリシュナさん、お願いするね」
「っす……すんませんハリガネさん……あるべき物をあるべきように……天秤が丁度釣り合うように……『調和を尊ぶ物語』」
青白い光……何やら危険な匂いを感じるな青い光って……
「…………ねえ取り敢えず流れに乗ったけど何したの?」
「……今のは僕の神としての力……書き換えられた事象を元に戻す調和の力っす」
「神の力って……使ってよかったの?」
位置バレするしヤバいみたいな事言ってなかった?
「だから謝ったんすよ……すんませんハリガネさん……」
……そう来たか。
「うんいいよ、どの道この後すぐとは行かなくても行く予定だったし……それはそうと今とは驚いたけど」
「……あ……あぁ……」
そしてアブドゥルはどうなっちゃったんだこれ、さっきから呻きながら泣いてんぞ。
「彼への罰……罪悪感っす、スラー酒や認知がそれを変えたなら……それ等が起こる前の調和が取れていた頃の彼になったってことっす」
「ぼ、僕は……なん……なんて酷いことを……僕は……生きていちゃいけない人間だ……こ…殺してくれ!!頼む!!今すぐに!!耐えられないんだ!!」
「耐えなくていいんす……泣き喚いて、誰にって訳じゃなく沢山謝って、それでも何も許されない物なんす……今まで行ってきた事は」
「でも……だからと言って、君だけの罪にはしないっす」
「……広めてくださいっす……こんな世界間違ってるんすよ……僕が、『調和神 クリシュナ』が国民を導いて見せるっす」
「だからどうか、もう一度僕達を信じて欲しいっす……必ず、必ず助けるっす」
……あら気絶しちゃった。
「……なーんか、思ってた段取りと随分離れちゃうけど……まあやるだけやってみっかな」
「すんません本当……僕神のくせに人間臭いって散々言われてたから気を付けてたのに……熱くなっちゃって」
「いいよいいよ、かっこよかったし」
「……あのつきましては僕を狙って来る……」
「あーもうわかってるから!野暮なこと言うなや、むしろ現実を見せないで…」
まあ端っからある程度予想してたけどね。
しかし……国全体の認知を変えるか……難易度高過ぎだろ。
「……ブブの爺様とかは戦闘狂なだけだろうけど、大半はアブドゥルみたいな感じだろうしなぁ……」
民草全体に声を届けられる力……
「……いっそ王様にでもなるか」
『……む?』
ゼルダの伝説楽しそうですね。
だからどうしたとは言わないけども。
Q.ハリガネさんって今はグラさんにかなり引っ張られた性格なの?
A.以心伝心できるくらいには心通わせてるしかなり引っ張られてるとは思うよ。
Q.二次創作ってR18でもいいの?
A.まあ商業化もなんもしてない作品だし作者はボーダーを作らないから原作のリンクだけ貼っといてくれれば構わんよ。
でもやるなら楽しんでね。




