満たされぬ飢えのままに
「父さん……本当にやるんですか?」
「止めてくれるなブレ子……パパにはやらねばならぬ時もあるのさ…いやまあ前回は全力でやったけど実質負けちゃったしね、アイツだって協力するからにはもう1回ちゃんと戦いたいだろうさ」
厳密に言うとまあ、新しい私達の攻撃がどこまで通用するかって話なんだけども。
「体のいいサンドバックじゃないですか……」
さあ我等の船でやってきたのは因縁の洞窟前、潮風とお日様浴びて気合いもバッチリだ!
「行くよー、グラさん……私達の新境地」
『ああ、やろう』
「時限解放の暴食王」
「名付けて、ちょっと昔のグラさん形態…!!」
「ネーミングセンスどうにかならんのですか父さん……」
ならん。
「ぐっふぇ…!!負荷強いなぁ…!」
メキメキと全身を砕かれるような痛み、背骨に溶けた鉄を流されるような熱い感覚……来た!
「何ともまあ……見た目が悪役ですね」
「前の祭りで掴んだ新境地さ、ちょっとあの時よりかは甲殻薄いし軽いけど、喋りにくさも無いしいい塩梅だよ」
両手を覆う大きな副腕、肘から伸びる大顎のブレード、顔半分だけの牙とマスク……悪役だな。
『……嫌いか?』
大好きさ、カッコイイじゃない。
「さあタコさん、もう1回胸借りるよ」
『更に先へ』!
「『加速LV.10』&『水切り足LV.4』『百足走りLV.10』『我が覇道ここにありLV.10』『秩序無き強襲LV.3』オン!これが!今の私たちの全力だ!!」
全力全開の『砕け散れ、我が宿業』なら、あのタコだって相当なダメージなはず!!行くぞ!!
〔待て待て待て待てぇい!!!!〕
〔さっきから黙って見とったら自分等儂を殺す気かいボケェ!?〕
「あ、タコさん……ッチ、気付かれたから『秩序無き強襲』が使えなくなったか…」
〔この後に及んで奇襲までするつもりやったん!?儂一時仲間やったやん!?〕
「いやループしちゃったし君肉体取り戻したし……下手すりゃ敵に回りそうだなと」
て言うか縮んだ?いやデカいことはデカいけど……前回みたいなサイズでは無いような。
〔肉体取り戻した言うても儂のリソースの殆どはそこの剣に突っ込まれとんねん!殆どスッカラカンで今更自分等相手に喧嘩できへんがな!!〕
「よろしい、良く戻ってくれたねポリプシオン……君はループしても仲間でいてくれるような義理堅い奴だと信じてたよ」
〔おお……恐ろしいやっちゃでホンマ…倫理観とか無いんか…〕
『我もたまにそう思う』
「さてじゃあ……クリシュナさーん、もう甲板に上がっておいでよー、戦いは無しだってさー」
「何だったんすかあのえげつない気配は…」
「祭の時は本調子じゃなくてね、改めてやってみたらやっぱりとんでもない力だわ」
『我の本来の力を引き出しておる、当然のことよ』
完全じゃなくてこれならお義母さんっていったい……まあ、だから暴食王なんて呼ばれるのか。
〔ん……あの坊居らんやん〕
〔まあ……あんだけの事あったらそらそうよな……でも、ちょっとだけな…寂しいわ〕
「あ、いるいる……単純に今回は色々早く進めてるからまだ熱に魘されてるだけだよ」
感覚的には明日くらいに目覚めるとは思う。
〔居るん!?マスクのお嬢ちゃんとかすり潰されとったけど!?〕
「やめなさい、まだ若干トラウマなんだから」
ほら!見えないけど多分今青い顔してるぞ家の娘が!!
「……彼個人の意思に反する行動であるならば…それを咎める理由はありません故…」
〔何やホンマ……イカれとるな自分等〕
「……誰がイカだこのタコ」
お嬢ちゃん…!?
〔急にツッコミづらい毒吐くのやめぇや!?〕
「……シャルヴを守ってって言ったのに…役立たずのタコ…」
「お嬢ちゃん……それは」
「わかってるよ……わかってるけど……」
〔……すまん、言い訳はせえへん……罰が必要やってんなら受ける〕
〔でもな、儂かて悔しい……あんな子供が苦しみようのに何もできへんかった自分が不甲斐ない……〕
〔せやから、もう1回やらせてくれや、チャンスがあるなら……今度こそ、この【偽蛸王 ポリプシオン】が見張っとくわ〕
「……ごめんなさい……今のは八つ当たりだから…」
「あー…お嬢ちゃ」
「うんうん、ミリアもタコ君も悔しい気持ちは一緒だよね、それなら喧嘩じゃなくて仲直りして一緒にやらないとだね」
ヌルッと出てくるなレプンカムイは、助かるけど。
「えっとじゃあ……ポリプシオンは協力してくれるわけだけど……どうやんの?」
このタコのままの姿でいるの?縮んだとは言えレプンカムイよりかはデカイぞ
「えーっと……クリシュナさん?」
「困った時はここぞとばかり僕っすね……魂を移すだけなら剣の柄を偽蛸王さんに押し当ててくださいっす」
「こうかい?」
ザグっとな。
〔それ刃やんけ!?何してくれとんねん!?〕
「え、いや……どうせ効かないだろうしネタとして受け取ってくれるかなって…」
〔どこの世界に身体に剣刺されて漫才成立する芸人がおんねん!!どつき漫才も真っ青やろがい!!〕
多分このツッコミで成立はしてる。
「あー……まあ刃でも大丈夫っすから……やっちゃいましょ…早く」
〔そこの眼鏡の婆ちゃんびっくりするくらい儂に興味無いやんけ!!どないなっとんねんこのチーム!!〕
「……これでできた…のかな?」
『いや…ホンマにえらい目に遭わせるやん……びっくりするわ』
「…ふむ、剣に力が戻りました……以前よりは弱まっているようですが……使っている内に取り戻すでしょう」
「ループする時に記憶を残すための通行料払ってるっすからね……そればっかりは」
〔構わへん、雑魚何十人かすり潰しゃあ戻るわ〕
「しかしこのタコさんの体は抜け殻になっちゃうんだね」
〔魂抜けてもうとるからな……放っとけや、文字通り海の藻屑になるだけやろ〕
この形態……なるだけでも割とお腹空くんだよなー……リソースが残ってなくても食べればある程度は回復するし……
〔……どうしたん?何やその顔……いや自分まさか〕
「あの凄く変なこと言うけど…………これ食べていい?」
〔もう嫌やなんやけどこのサイコ!?〕
更新よー!!
『秩序無き強襲』
攻撃相手がこちら側を認識していない場合に限りダメージ加算、スキル発動中に発見された場合はスキル効果が逆転する。
[無法なる戦いの場において、正面からの攻撃は馬鹿を見るだけだが、狩る側がこちらだけだと思うのはこの上無く愚か者と言える]




