期待逃走エスケープ
「ああここ鍵かかってんだったわ」
ほいメギョッとな。
「歴史ある霊廟の鍵が!?」
鍵だろどうせ、歴史があるのは中の洞窟だけさ。
「うぅ…ハリガネさんに任せたら国の重要な文化財とかがどんどん破壊されそうっす…」
「人を破壊神みたいに言うんじゃないよ、やめろ破壊神とか言うな!!いるんだぞちゃんと!!」
「全部自分で言ってるっす!?」
「細かいことは気にしなさんな、ほら光源出して」
「えぇと……調和ある世界を記せ『不消の燈光』」
おお…ハヌさんの光より明るい。
「ちょっとスキルの名前も前口上も違うんだね?何これ」
「うーん……まあはっきり言うと神の力ではあるんすけど、僕らの根底にある様な『権能』とかではなく……あー…」
「うん、君らで言うところの口笛とかお手玉みたいなもんす、特殊技能って程じゃないすけど出来ない奴はいますし、それができるできないでその人の価値は測れない……的な?」
「宴会芸的なノリの技なのそれ…?一応神様の灯火なんだろうに」
「ハヌさんが使ってた奴は元々使ってたけど神様じゃない姿だから弱体化してた感じか、まあ納得」
「大体そんな風に思っていただければ……あ、あの棺桶ずらすんすよね?」
「そだよ、前回は勢いよくやって中から崩れた音がしたし……せっかくだから今回は開けてみようか」
鬼が出るか蛇が出るか……あの位置にヴァジュラが居たってことは中身はお師匠さんじゃ無いんだろうね。
『待て、盗人を警戒しての策であるならばこの中身は罠か囮であろう……開ける必要は無いのではないか?』
「それもそうか……開けないでおこ、何が起こるかわかんないし」
「え……」
「何ドキドキした顔で棺桶の蓋に手かけてんだてめえは……あ?」
おいおい開けちゃったよ……まあ最悪でも死ぬこたないだろうし1回逃げるか?
「……空っぽっすね」
「あれ?本当だ……いや空ってこた無いだろうよ、仮にも前回のループじゃ音はしたよ?」
「んん……ハリガネさん、これ見て欲しいっす」
何だこの……手紙かな?
『拡張解析LV.10』
[このメッセージを読んでいるということは、君は恐らく我が弟子に認められた男だろう]
[そして宝を得たと言うのに最後に人の死体を拝もうとする物好きでもある]
これ洞窟出てきた後に読んでたら棺桶蹴り飛ばしちゃいそうだな。
[残念ながら君たちの求める私はここにはいない]
[だが真に相応しいと思うならいつの日か1目会うことはできるだろう]
[私は怖いのだ、神としての名も、叡智と言う劇薬に取り憑かれてしまった私がどうなってしまうのかも]
[だから逃げる事にした、弟子達は置いて行く事にしたが、恐らく直ぐに追いかけては来るだろう]
[誰も、自分の罪からは逃れられないのだから]
「……鬱屈とした内容だな…凄いことだと思うんだけどね?あんな死にかけの子供を回復させるなんて…」
「まあ……彼も悩んでたらしいっすからね」
「誰にもできないことができてしまう、でもその先に何が待っているのか、自分がどうなってしまうのかもわからなかったんす……」
逃げられただけでもマシか……人が何より逃げられないのは自分のやった罪じゃなくて、やってしまったことへの罪悪感だろうに。
『…汝?』
……ハリガネさん今何話してた…?何でこんなこと……まあいいや忘れよ、一々こんなことしんみり考えてらんないよ。
『……ああ』
「……ハリガネさん……君は、調和とは程遠い存在なんすね…」
「そらな、誰も彼もが敵視してくる下賎な寄生虫様ですよこちとら」
「そうじゃない、そうじゃないんすよハリガネさん……不安を隠すためにおちゃらけて、誰かを守るために死にたがって……」
ハリガネさん割と自分が生き残ることで精一杯だよ!虫ケラ上等の精神だもの。
「今だって自分で茶化して誤魔化して……君はまるで……」
「やめよ」
「…神風情が、我の伴侶に随分な口を利くではないか」
「自分だけが見破ってやったつもりか?あまりにも哀れだからと、神としての驕りか?」
やめなよグラさん、悪気は無いって。
「だからこそ不満なのだ、神という生き物は人々の為と、良かれと思って…平気で無理難題や見たくもない現実を押し付ける」
「そんなもので救われる存在は最初から神になど頼らぬ、そんなこともわからぬから…」
聞こえないのかグラトニカ。
「……ふん」
「……失言だったっす、すんません」
「良いってことよ、ハリガネさんは緩く生きてりゃそれで十分なんだからさ…いや人の姿にはなりたいけども」
「そうっすね……全部が解決したあかつきには、他の神に協力してもらって人型になる方法を探すといいっすよ、勿論僕も手伝います」
「お、期待しちゃうね」
「さーてここから先は骸骨に巧妙に擬態する蛸が大盛りで配置されてるし……1回通ったからもうサクッと行っちゃおうね」
「突っ切る?…わっちょ!?」
よいしょっと……重たいなこの人。
「そんなことは無いはずっす!!岩をぶん投げる膂力の人の腕力で重いわけがないっす!!!」
「まあ岩とかよりはね、ただハヌさんとかと比べると…」
「何すか!?やっぱ怒ってんすかさっきの!?」
「はっはっは、ソンナコトナイヨ…」
「ちくしょう抗議してやるっす!調和の神として助言しようとしただけなのに!!」
「まあまあ、グラさんも本気で怒ってるわけじゃないから……ところで舌噛むから口は閉じた方がいいよ」
「走るんすか!?こんな岩場だらけの狭いとこを!?僕のつま先とか削れるっすよ!?」
「えーもう………だから、できるだけ密着して?」
喧しい子を黙らせるグラさんの顔面力、相手は死ぬ(情緒が)。
「そんなもので騙されたりはしない!!頼むから安全に運んで欲しいっす!!僕が今死ぬ程のダメージ受けたら回復する時に神の権能が出るんで一発でバレるっすからね!!」
くっそ、防がれた。
「てかそうなの?じゃあ駄目だ全速力は」
「やっぱり最悪死んでも治るだろ、程度に考えてたっすね!?」
しかしそうか、神の尺度での回復力って考えたらそらまずいわな……仕方ない歩くか。
「そうしましょ、戦闘は任せるっす…後極力揺らさないで欲しいっす…酔っちゃうんで…すんません…」
「……注文が多い松明だ」
更新ですわよー。
新しいプロジェクトと言うか目論見的なあれで、肩パッドTRPGのシナリオ書くことにしました!!それによってハリガネムシが滞ることは無いけどその内配布したら遊んでね!!
Q.クリシュナさんはヒロイン枠?
A.この世界のヒロインはもう読者の解釈次第だよ…アブドゥルの可能性もある。
Q.この世界に存在する魔法学園ってホグ〇ーツ?
A.ビルゲンワース。
Q.お嬢ちゃんの寿命って残りどんなもん?
A.まず森林小人自体が衛生環境とか医学の浸透的な問題で50年やそこらしか生きない。
しかしお嬢ちゃんに関してはレベルが高いからそれ以上に寿命はある。
この世界寿命で死ぬやつなんて稀だけどな、冒険者の寿命とか長くて10年とかやぞ。