姿はあれど貌無く
こ、この姿は……何だ?
四足歩行で肉球があって毛むくじゃら、哺乳類っぽい。
んー……犬?
犬っぽい気がする。
[生体侵食率100%]
[生体の持つ全能力を使用可能]
[生体解析完了]
種族名 貌無き者
LV. 27 HP 138/140 MP 4780/4780 SP 620/620
アクティブスキル 『貌無き者LV.10』
パッシブスキル
魔法 『図々しき者』
状態 寄生 変化
……おぉん?
えー……うん、ピーキーだわ。
よくわからない魔法は置いておくとして、耐久紙過ぎるな?
これは酷い、ハリガネムシの方がまだ丈夫だ。
そんでスキル少な!初期ハリガネムシのがまだあったぞ…パッシブにいたってはもはや無いし。
……まあ、仕方無い。
一概にハズレとは言えないしな?ぶっちゃけこのまえの槍おじさんくらいならやり方によっちゃ生贄でも完封できかねないし……要するに相性だ相性。
ああ、鹿とムカデは相性最悪だったとも。
あんな御都合パワーアップが起こらなかったら余裕で負けてた気がする。
さて、じゃあメインのスキル使ってみるかね。
はー……『貌無き者』!
お…おぉ!?
体が溶け……いや駄目だこれ本体飛び出る、解除。
……明らかに生物としての骨格が変わったんですが?
さっきまで犬とか猫みたいな四足だったよな?
何だこの足は、何だこの肌は、何だこの馴染みのありすぎる肉体は……
答えはそう、避役。
そんでわかったぞこいつ、ゲームなら一体くらいは出て来る奴……所謂プレイヤーの姿を模倣したり色んな姿の魔物になって攻撃してくる不定形生物だ。
あた…ハズレ……いやうーん…本気で何とも言い難い存在だなこれは。
何になれるんだろうかまず……さっきの『貌無き者』だと不定形になる、なら魔法の方にある『図々しき者』は?
てかこれ明らかにスキルと魔法セットだよな?
じゃあユニークじゃないの?種族間で持ってる物だからいいの?
ふー……落ち着こう、クールにいこう。
えー…あー……自分の生前の名前も思い出せないのか。
落ち着こうハリガネムシ、開き直りつつ落ち着いていこう。
あれてかこれ…他の生物になれるなら人間とかにもなれるんじゃね?
それどころかムカデにも鱗ドッグにも鹿にもなれちゃうのでは!?
……まあ、無理だろうな。
セオリーがあるのだよこう言うのにはね、どうせ倒した相手とか自分より弱くないととかだ。
ちなみになんだけどさっき不定形になった瞬間ハリガネボディが若干削られたからあれ多分消化用とかだわ。
仕方無い、恒例行事から始めるか。
ムカデはある程度わかりやすかったから楽だったなぁ……いいけどさ。
結論、魔法がよくわからん。
何かしらの効果はあるはずなのに一切実感できない、それにMPもゴリゴリ持って行かれている。
しばらく封印しとこうね、MPが何かもわからないからね。
SPが恐らく代謝とかに関係ある以上MPがどうなるかわかんない内に無理して使用するわけにはいかない。
だってMPじゃなくてMPとかで使う度に心を失うとかだったら怖いじゃん?
ムカデの魔法?カスダメもでないから使ってねえよあんなもん。
いやまあムカデは…魔法でやれることが基本本人のスキルで完結してたから。
あいつ、優良物件だったんだなぁ…まあそらそうだけど。
鹿倒した後魔王になれそうな感じになってたもんな。
へっ、大きくなりやがって。
マジで物理的に大きくなってたからもう取り付けないとするなら二度と会いたく無いんだけどね、下手すると数年後には新幹線みたいなのになってそうだし。
あと何より私次は殺す言われた気がした、ピンチ。
当面の目標はこの森から離れることだねやっぱり、まあ道もわかんねえんだけどさ。
………待てよ?今まで寄生しようも無かったけどこいつなら。
こいつなら鳥とかいけんじゃね!?
夢がある!夢が……まあまだちょっと狙った物になることはできてないんだけどな。
取り敢えず何か吸収しなきゃだが……ん?
……逃げないのかいそこを歩く生け贄よ。
まあ、今見た目同種だもんね……『貌無き者』。
うん、考えた通り吸収できたね。
味も感じないし丁度いいや、私が何で吸収されないかは色々考えたけど寄生スキルの問題だと思うわ。
まあ『貌無き者』ずっと使ってると多分吸収されきっちゃうんだろうけどさ?
考察とかしてるブロガーがいたら解明しそうな御都合要素だけど無きゃ詰むから仕方無いね。
私なー、昔はあんなにゲームやアニメの御都合展開嫌いだったのに……こういう立場になるとわかる。
めっちゃありがたい。
しかし過去の自分はあんまり思い出せないのに何でこんなことばかり覚えてるんだろうな。
まあいいか、取り敢えずせっかくのカメレオンだし早いとこ木にでも登って鳥を探すかね。
あれ?
……駄目だ、くっつかない。
あくまで外側を真似てるだけってこと?
は?
束の間の喜びを返せ?
上げて落とすんじゃねえよ、私はボールじゃなくてガラス細工なんだよ。
はぁ…まあいいや、どの道こんだけ小さいと狙われにくいし……寄生してるだけだから何とも言い難いけど無いよりましだ。
さっさとレベル適当に上げて何か別のに寄生しないとだな、そろそろ人になりたい。
やっぱあのおっさんなぁ…勿体ないことしたわ。
何か肩書きとかも強そうだし人間の中じゃ有名人だったんじゃねえの?
上手くいかねぇな、何もかも。
いいや、切り替えていこう。
メンタルまで落ち込んじまったら終わりだぜ、今がハリガネムシなんだから後は上がるだけだ。
そんな事を言ってくる奴は一回ハリガネムシになってくれ、それか寄生してやるから覚悟しろ。
ハリガネムシ惨めだぞぉ……どんなにカッコ良く戦おうがカッコいいのは自分じゃなくて宿主なんだからな。
ハリガネムシボディで戦えるスキルがほしい。
口から入って内臓引きちぎりながら尻から出て行くとかどうだろうか?
駄目だな、子供が泣き喚く。
何より私がやりたくない。
体内に入り込むまではスキルでも何でもないあたり中々無理があるしな、そもそもこんな体じゃ内臓どころか粘膜を腫れさせることもできねえか。
ああ、股間は腫れさせられるかもねって言った奴はマイフレンドと同じ目に会うことになるからな。
……1人で何やってるんだろう。
空を見上げたいけど骨格的に上向けねえや……お空綺麗も言えない身体か。
まあうん…マイフレンドに文句は無いんだ、一度は体を借りて……何度となく食べてきた仲だ。
だけど透明化も壁面登りもこなせない君は正直動きにくいし弱いし遅いし……舌も伸びないから的がデカいだけというか……
いや、うん。
文句は……無い。
さ、行こうか。
鳥はまあ…最悪マイフレンドを適当に殺めて餌にでもすれば来るんじゃないかな。
貌無き者「何か変な虫食ったrrrrrr……」