開祭
ふむ……これが父さんの言っていた新しいスキルですか……凄いな。
最初はまた惚気だしおった…と喉から込み上げる甘い何かに辟易しておりましたが、これは中々どうして気分が良い物ですね、腹の底から力が溢れるようです。
さて、儂の獲物は……
「……貴方…ですね?アブドゥルという者は」
「ん〜?……会ったこと…無いよね?僕のファンかな?」
醜悪なツラだ、コノハ殿の身体を舐め回すように視線を向けてきおる……
「残念ながらファンではありませぬよ……強いて言うなれば…起きろ『大混夜叉』」
父さん直伝、会話の途中での超下段から脚力に任せた高速前身…まず1本頂きましょう。
「んぬがっ!?ぎぁぁぁぁ!!?ぼ、僕の脚あ、あ……あれ…着いてる」
相変わらず美しい刃物だ……まるで何にも触れぬかのように振り払えると言うのに痛みは本物、返り血も付かぬ上に殺してしまうことも少ない。
「ご安心を、まだ貴方の身体からは一滴の血も流れ出てはいませんよ」
「失敬、儂の名乗りがまだでしたな」
「ふむ…執行者、とでも名乗りましょう…汚辱に狂わせた人の魂、今ここで償わせてくれる」
でしょう?コノハ殿……貴女がこのような下衆をのさばらせるわけが無い。
見せましょう、儂等2人の大裁き。
「ブレ子の奴上手くやってるかな」
奴の戦闘力はタコ戦を経てグラさんのスキルも貰ってるおかげか、最早昔までの非殺傷系不審者の名前は返上してただの拳骨で人の頭を落とした卵みたいにできちゃう、そうそう死ぬこた無いだろうけどね。
「不安かい?アンタの娘が……っと、オラァ!」
「んー、まあね……ただ信じちゃいるから大丈夫さ、持ち場からは離れないよ」
そう言えばハヌさんもかなりレベルやら何やらが上がってるもんだから私がカバー役に回ってる意味がほぼ無いなこれ。
1番不安視してたシャルヴさえ最小限の動きで急所を捉えては物言わぬ肉の塊が積み重なっていくもん、これ下手すると今この場で1番戦果上げてないの私なんじゃないか?
「まずい…ハリガネ!『屍商人』が動きやがった!」
『屍商人』……ああ、噂のゾンビ使いおじさんか。
「オッケー5秒だけ離れるからお互いカバーし合ってて!それからハヌさん例の物を!」
『更に先へ』も使えないし勿論『砕け散れ、我が宿業』も無理だ…となれば…
「こんなん人を飛ばす用じゃ無いんだからな!?死んでも俺を恨むんじゃないよ!『暴風の寵児』!」
ぐおぉ!!?タコ戦より滅茶苦茶勢い増したね!?
でもまあ…好都合。
「合体技、『ハヌさん大砲風式』」
……うん、まあこれでスキルとして認められたらめっちゃ困るだろうね、ハヌさんが。
「こんにちはー、大魔王様(代理)です…ヤマってどいつ?」
「ふぉっふぉっふぉ!!儂の名を聞いて勇ましいものごべら!?」
挨拶がわりの必殺グラさんエルボー、会話を繋ぐグラさんボディブロー、グラさんラッシュ、そしてトドメにグラさんアッパーカットだ。
お前うちの娘と喋り方被ってんだよ、紛らわしいからさっさと退場しなさいな。
「聞いてた通り本体は貧弱みたいね、『魔王の吐瀉』……うん、跡形も無い」
この手の能力者は後々ゾンビ化して出てくるのがお決まりだ、強酸でデロデロにしておくに限る。
「おっとそろそろ5秒か、戻ろ」
帰りは徒歩移動なのがトホホって感じだね全く。
……何かお嬢ちゃん達がいる客席方向からとても冷たい空気が来たな、ハリガネさんのジョークに対する警告かな?
「あら、このオッサンのゾンビってもしかして本体潰しても残る感じ?」
うーん、死体を動かしてるだけの物ってリソースになんのか…?ならないなら無闇に相手するのも……ヤベ。
「『無双腕・百』!」
戦い終わって一息着いたとこに真上から奇襲…くっそそう言うのは私の専売特許なのに…ライセンス料払えよ。
「おう、お前さん中々やるじゃねえか、屍商人はともかくあの洞窟の化け物殺ったんだって?」
何だこの爺さん、只者じゃ無い感出してるから瞬殺は無理そうだな……まあいいや殺っちゃお。
「洞窟……洞窟……ああ、あの…人違いです!『魔王の吐瀉』」
うーむ素晴らしい、奇襲とはこうやるのだよおじいちゃん、冥土の土産に持ってけや。
「連れねえな、良いじゃねえか話そうぜ」
……液体ってそう斬れますっけ?
「おん?言葉わかんねえわけじゃねえだろ?なあ、俺はもう今回分は殺ったから後は強い奴探してんだよ、なあ、やろうぜ」
やっべえかもしれない…私の経験上(漫画とかの)この手のジジイは強い。
「……オーケー、私ハリガネさん…魔王グラトニカの側近やってます」
「お?名乗んのか…俺はブブ、気が遠くなるような昔はこの祭じゃ人気の戦士だったんだぜ?今じゃ『鬼宿老』何て呼んでジジイ扱いしてきやがるがな」
『鬼宿老 ブブ』……ハヌさんが言うには恐ろしく強いけどそこまでガンガン来る訳では無いらしいけど……そんな気配ないが?むしろやる気満々じゃない?
「悪いね、仲間が待ってるからここに長居はできないんだ…えーと、『土竜の如くLV.10』!」
脱出の手段は最低3つは用意する、これぞハリガネさん式兵法術なり……ピッ!?
親方空…と言うか頭上から剣が!?危うくグラさんが縦方向にグ/ラさんされるとこだったが!?
「逃げんなよ、魔王の側近なんだろ?それとも何か……主人の名がどれほど穢れても関係ねえってか?」
「いやぁはは…ブラック企業なものでして……」
弊社の理念は生き残ること、泥をすすろうが取り敢えず生きてられれば儲けものさ!!
「……んだよ、じゃあ仕方ねえな…やる気がねえ奴殺すのも気が滅入る…」
「へ、へへ…すんません……それじゃあ失礼します…」
いやああっぶねえ……帰路は地中のちょっと深いとこ通って帰ろ…恐ろしいわ彼奴。
……地中からなら助走はバッチリだしな。
『加速LV.10』『無双腕・百LV.10』!!あんまりフィールド壊すのも悪いが、埋まっちまえ!
「液体は斬られちゃったけど…純粋な物量攻撃なら流石に効いたでしょ?」
おう爺ちゃん、おでこ切れてますよ。
「この…クソガキが……面白ぇじゃねえかよ」
うん、思ったよりはダメージ無いな。
「弊社の社則の1個目は『命大事に』そんで2個目は……」
「舐められんなだよ」
……すまんハヌさん、でも私ハヌさんとシャルヴがやればできる子達だってわかってるから!!そう、殺ればでkill!
「まあそんなわけで……死ねや」
お久しぶりですわ皆様ー!
無事国家試験を受け終え、そして依然としてTwitterが凍結されている世紀末肩パッドですの、マジ困った。
さて、1ヶ月以上も待たせてしまって申し訳ないね、また今年からもガシガシ書いていくから是非楽しんでくれよな!!
助けてイーロン・マスク。




