求めるために捨てたのさ
「誰……グラさんじゃ…ない」
「何を言って……まあわかったよ…」
ブレ子は抜刀済み、ハヌさんとレプンカムイは様子見って感じかい、仲間への信頼のない奴等だ……でも正しい。
……さて、どう見るか。
お嬢ちゃんが冗談を言っているとは考え難い、その上で私、もしくはグラさんが既に何かに成り代わられている可能性がある…
後半は嫌だなぁ……喋らなかった辻褄が合っちまう、怒らせたって思って視点が狭まってたか、最悪だ。
まず仮に乗っ取られていた場合、誰に?容疑者としては4つ。
1.王様。
2.蛸。
3.魚…は本人じゃないかも知れないけども。
4.全く別の何か。
……まず王様の可能性は低いか、会ったのは喋らなくなってから少し後の事だしそもそもわざわざそんなことするなら目の前に引っ張り出してくる理由がない。
次に蛸、これも無いだろうね。
そもそも彼に今更戦う理由があるのかは知らないけど、彼と戦っていたのはずっと私だったしそもそもの能力ともかけ離れすぎてるからこんな芸当ができるとは思えない(ていうかそんな器用な奴じゃない)。
魚……こいつにおいてはわからない。
蛸みたいに逆鱗に触れた感じはしなかったし……まずあの場で会話したのは私とレプンカムイだけだったし他のメンツは気絶してたわけだ、グラさんが殺気飛ばしてたにしてもこんな回りくどい真似しないだろうし。
となると……全く未知の敵からの攻撃か。
精神攻撃を使えるやつで言えば1人思い浮かぶけど傲慢王は海の底の筈だ、脱出したにしても私達をわざわざ正確に追跡して搦手を使ってくる程執着があったようには思えない。
ともかく被害状況も掴めなけりゃお嬢ちゃんが気付いたことでどんな行動に出るかわからない。
ようするに何より怖いのは最大戦力(レプンカムイは除くけど)のグラさんが未知の状態、つまり……私が動ける状況が一番まずい…ブレ子!
「……父さん、御免っ!」
四方八方から迫る質量のない刃物……馬鹿野郎大正解だよ。
「構わんよ、私がお前でもそうしたさ……」
ぐっ…いっっっってぇ!!!?
……づぁ……くっそ流石だなぁうちの娘は!特に痛いとこを一番痛むように刻んでくれやがったよちくしょう……でもナイス……ピクリとも指が動かないね。
「な、何をしてんだい!敵だか決まったわけじゃ…」
「……ハヌさん、大丈夫…ブレ子が正しい、にしても容赦ねえな……」
「……人の肉体基準のものですので完璧とは行きませんが……太い神経の通り道を縦に裂きました、しばらくは立ち上がることもできませんよ」
おう、今度からお前と戦う奴には同情してやるわ。
かっこはつかないがごろ寝スタイルで失礼、寝返りすら打てないから今のハリガネさんは新生児並みの戦力だね。
……まあハリガネさん単体なら普段からそれ以下だろうけど。
「ふぅ………お嬢ちゃん、何が見えた?」
「わからない……凄く悲しくて重たい…そんな気持ちがグラさんを縛ってる」
それは何となく私もずっと感じてるけど……グラさんを縛っている…誰が…?
「嫉妬心……だけじゃこうはならないよね」
「……そうとも言えないかもね……」
「……レプンカムイ?」
「あー…僕に心当たりがあるんだね」
嫌だなぁ……この場合の神様の心当たり、神の尺度ってのは大抵の場合人類には理解できないものだし、何より私はムシケラだもの。
「今のグラトニカは……名が、認知が世界から剥がれそうになってるね…」
「元はと言えば無理もない事だね…人形態になるために権能をいくつも削ぎ落としている上に…最近じゃ大して食べなくなっていたね?」
「まあ……今のグラさんなら自動回復するから食べなくっても燃費が良くなって………っ!!そうか!」
「ああ、そうだね……今の暴食王は名に反しようとし過ぎたんだ……」
くっそ……私の大馬鹿野郎!!暴食王だぞ!?もう燃費悪くないなんて楽ちん!じゃねえよ!
弱体化なんてもんじゃねえ…!何で気付かなかった!
「名に反する、それがどんな重大なことなのかはわかるね?僕の本体が沖から離れれば生きてはいられないように、君達が水中で息を止め続けているのと同じなのだね…」
「…しかし何故こんなことをしたのかね…?」
「……私の……せいだ…」
ムカデの時…何度も何度も燃費が悪いって……
「ハリガネさん、今は反省じゃなくて対応だね……取り敢えずは僕が何とかしよう……でもこのままの状態が続くなら…覚悟は必要になるね」
「……うん、幸いにもまだ持ち堪えてるね、これならすぐ起きるね」
「……グラトニカ…【暴食王 グラトニカ】起きなさい……君は何者だか、沖の神の名に置いて呼ばせてもらったんだからね……」
お…身体のリンクが……起きたのか?
「……ぅ……ぐ……ぉぉ……」
「落ち着いて、君は誰かね?」
「……わ…れ……我は…【暴食王】…!」
グラさん!!
「そうだ、戻ってこれたみたいだね」
「……どのくらい寝ていた?」
「あの戦いの後からって考えると……数日だね、何があったかわかるかね?」
「……思い出せない…だが我が我で無くなるような感覚だけが覚えている…」
「っ……おい、ミリア…?」
「こらミリア…病み上がりにあまり飛び付かないように……おや」
「……良かった……グラさんだ……良かったぁ……」
お嬢ちゃん……
「……我を何だと思っている、小娘ごときが心配しなくとも……いや、すまん……な、泣くな……困る」
まあまだ子供だもんな……お嬢ちゃんからしたらグラさんは母親もいいとこだろうし。
「……いいかねグラトニカ、それは嫉妬だ…」
「いやレプンカムイ殿、いくらグラトニカ殿といえど文字通り自分を失う程にヤキモチを焼くなどそんな…」
「まあこの国でもたまにはヤキモチで旦那を刺したとかも昔は聞いたけどねぇ……」
「ああいや違うんだ、ちょっと語弊があったね……」
「それは【嫉妬王】の権能だね」
今年中にあと一回か二階くらいは更新できるかしらね。
Q.グラさんの身長は?
A.180cmくらい。
Q.ハリガネさん達一味って名前無いの?
A.いま名付けたら最後に海賊団って付きかねないぞ。
Q.認知が大切な世界なら世界的に有名な人とかが強くなったりするの?
A.認識は惜しいけどちょっと違うかな。




