沖の神
『まあ、正直君がいつそう言ってくれるか期待していたんだよね』
じゃ…これも想定の内ってこと?
『悪く思わないで欲しいね……沖の神なんて重たい名前貰って自由に喧嘩だってできなくなっちまったんだよ僕は、鬱憤くらい貯まるってもんだね』
『山の神ともその内また喧嘩がしたいもんだね』
喧嘩がそんなに好きなんかい?
『そりゃあ好きさ、だから期待していいね?』
[アクティブスキル『共生』の使用可能]
[身体権限が移ります]
おうよ、任せとけ。
「くっ……流石に何時までも止めておける相手ではありませんね……!」
「よう、まだ生きてるみたいで何よりだよ」
ピンチに颯爽と現れて空中キャッチと……こらこら、一歩間違えたら格好いい救助からプロレス技よろしく海面に娘を叩き付けることになるから暴れるんじゃないよ。
「れ、レプンカムイ殿!参戦してよろしいのですか!?」
「自分の意志で戦うのはマズイけど寄生されてりゃ仕方ない……って屁理屈が通用するのかは知らないけど、まあそんなわけでハリガネさんだよ」
「え、あ、父さん!?」
「勿論パパだともさ、1度船まで戻るからお嬢ちゃんを頼むよ」
しっかしすげえもんだなレプンカムイの身体……人形のアバターだけとは言え消耗が半端じゃない。
『本当だったら本体で相手したいところなんだけどね、流石にそれはハリガネサンが数瞬と保たないだろうからね』
そもそもこの力にデメリットなんて今まで感じてなかったから消耗することすら知らなかったんだけども。
『そりゃあ普段はグラトニカから吸い取ってたからね、僕は神様だからそれができないだけさ……そういうわけで打てて5発だ、慎重に使うんだね』
5発……十分だ。
「よし……行ってくるわ、お嬢ちゃんももう能力解いて大人しくしてて」
「……疲れた……速く倒してき…て……」
「おわっ!……気絶したみたいです…」
「ナイスキャッチシャルヴ、まあ後は任せて……ね?グラさん」
「…………」
おぅ……拗ねてはる。
「…さっさと行け、我がその入れ物を引き裂く前にな」
これは後で全力でご機嫌取らないとだわ。
「よし……行ってきます」
〔あー……しんど…もう身体中痛いわボケ……そんで?今度はなんなん?〕
「悪いねタコさん、今度こそ決着を付けよう」
「最終ラウンドだ」
しかし形態変化が何個もあるなんてまるで私がボスキャラだね。
〔うっざ…いい加減諦めえや〕
「諦めが悪いのは家族全員でね、今帰ったら君より怖い顔して怒られるよ」
〔……『ヤマタコオロチ』〕
「私がぶっ飛ばされた触手を蛇みたいにする技か……さてどの技にしよう」
〔ごちゃごちゃうるっさいねん!もうとっとと逝ねや!!〕
一本一本が電車みたいなサイズの触腕、それも別々の生物みたいに動きが読めなくて全部に鋭くて痛そうな牙がわんさか生えてる……大丈夫ってわかってても腰が引けるね。
はて?何故タコの足が蛇に?
『そこ今考えてる場合かね?』
それもそうね。
「まず一発目……広範囲殲滅用『號華絢爛』!」
おお…自分を中心に外側へ弾く衝撃波か、一発で体制崩れちゃったよ……私達渾身の一撃でやっとだったのになぁ……
『流石にぶっ飛ばせやしてないがね、そら腹ががら空きになった…チャンスだね』
「うおっしゃあ!!痺れろや!『號腕號拳』!!」
声で超振動させた身体で音速超えのアッパーカット……この技って人の姿で戦うこと前提に作ったの?
『うんにゃ?普段も使うけどその場合は尾鰭で海底からかち上げるね』
あー……まんまシャチの狩り……
〔こんな力……見た事あらへん…自分…この国の神に匹敵しとるやん……ざけんなや…そんな奴勝てるわけ…〕
「じゃあ降参するかい?触腕の殆どは引き千切れてもう体制を保つのもやっとだろう?」
〔せえへんわボケ……見せたるわ……儂が何の長老級だか〕
……消える気か!逃さん!
「うぉらぁ!……ってもういないわ、何て逃げ足だ…」
『風景に溶け込んだね、それもありとあらゆる感知に引っ掛からない擬態……流石だね』
あの巨体で波しぶき1つ立てずに目の前から逃げられるとか……擬態を軸にした生き物の長老級は本当にまともに戦って勝てる相手じゃなかったんだね本当に。
あま…あいつの決定的なミスを一個指摘するなら、シャチは音で敵の位置を探れるっってことだよ。
『號音波』
後ろか、芸の無い奴め。
〔殺ったぁぁぁ!!〕
「『號体崩』……『號腕號拳』で体ごと高速振動させてたのを片手に集中、音速移動はできない代わりに触れた物を分解する……らしいよ」
何これ、ユニークスキル?
『うんにゃ、普通のスキル』
お前本当にバランス崩壊するからつまらなくなるタイプの味方キャラなのね。
『酷い言われようじゃないかね!?』
いやだって……軽く腕で弾いただけで触手一本消し飛んだよ?文字通り。
『まだまだこんなもんじゃないんだけどね?信仰が届く地域なら最初の一撃でそのまま消滅させられてたしね?』
いやー、敵じゃなくてよかった。
〔……アカン……ほんま…死ぬ……〕
〔…………まだや!!!〕
〔諦めへん、絶対に!〕
〔儂は特異点になって……神も魔王も全部しばいてこの世の王になるんや!!〕
〔見せたるわ……儂の取っておき!!〕
悪足掻きかな?
『……や、何かしてくるね…トドメ刺したほうがいいと思うよね』
……まあ、今更油断なんてしてやらないよ。
そもそも空っぽになったのに乗り物チェンジしてボコボコにしに来た私が言えたことじゃないからね、誠意を持って叩き潰そう。
「悪く思わないでね、弱肉強食…だろ?」
〔諦めへん……!儂はぁ!!〕
……何だ…?
『リソースが……集まっていく…まさか…!』
この…懐かしい感覚…!!
レプンカムイ!こいつこの土壇場で特異点個体になろうとしてやがる!!
他のじゃ駄目だ!傲慢王に使ったあれやるぞ!
『もう溜め始めてるね!あと一発しか無いんだ外さないでよね!』
〔…もう遅い……っちゅーねん!今!ここで限界を越えたらぁぁ!!〕
仮にこいつが特異点に成ったとして一撃で殺りきれるか?
多分……無理だ。
くっそ…間に合え!
『もう…少し…!』
〔うおぉぉぉお!!〕
〘………そこまでだ〙
……誰…?
〘控えよ、下郎〙
〘先程からその方の無礼、極まっている〙
〘誰に断ってこの海の支配者を名乗っている〙
何だよこの声……誰が話してるの…?
『ハリガネサン……絶対動かないで…僕等以外全員死ぬ』
レプンカムイ!これはいったい…
『いや……まさかこんなところまで来るとはね……誤算もいいとこだね……』
『ダゴン……!』
Q.100話記念なんかやらんの?
A.何かしてほしい?何も考えてないよ?
Q.タコさん美味いやろがい
A.ミラージュオクタに関しては不味くなることで食べられにくくなってる種族だからな…