誰が為に犠牲になろうとも
……やったねグラさん。
『ああ……もうこれ以上は……』
「まあ……頑張ったってことで」
「……私達の負けだね」
〔いっったいわボケぇ!!ふー……何やねん今の…殺す気かぁ!〕
殺す気ではあったんだけどさ。
いやー、あんだけ威力出した『砕け散れ、我が宿業』で殺れないとはね…
『……すまぬ……もう新しくユニークを使う体力も無い』
仕方ないさ、殺しきれるつもりだった……っていうかおかしくない?キラウシすら殺しかけた一撃の更に数段上だったよ?
今戦う相手じゃなかったのかもな……場合によっちゃ特異点より強いってのは本当だったか…ハズレ引いちゃったかもね。
〔……ふー……ふー……ま、自分よくやったと思うわ、儂相手にここまで削るのは快挙やでほんま〕
〔……アカンしんど…悪いんやけどさっさとリソースにさせてもらうわ、どえらいバケモンやな特異点個体……〕
「……見逃してくれない?」
〔そうしてやりたい気持ちはあんねやで?ただな、これも弱肉強食…受け入れろや〕
「……だよね……」
「……じゃあ、悪いね……タイマンは終わりだ」
〔んなっ!?何やこれ!鳥…いやコウモリか!?〕
突如襲来したタコの視界を塗り潰すコウモリの群れ…他の洞窟から連れてきたのかな…?
まあ何にせよ……遅いよ。
「ほ、本当にいいのか!?細かい加減なんて出来やしないよ!?」
「構いませぬ、全力でお願い致します」
「親子揃って無茶を……『暴風の寵児』!!」
「さては皆様お立会い……この身に受けるは友が宿した風の加護……抜きます、ニつ目一刀『大見得・空舞台大立ち回り』」
〔がっ!?いっ!?あっがぁぁぁ!?〕
一閃した筈の斬撃が攻撃の後から身体を走ってる…?
いつ覚えたんだあんな大技……とはいえ虚仮威しにゃ変わりないけど。
ってうわぁ…バタフライで見知った顔が近づいて来てる……いやありがたいけど。
「やっほーハリガネさん、大変そうだね?」
「レプンカムイ…!ごめん倒しきれなかった!あと任せられるかい?」
「うーんそれが厳しいね、僕一応神だし自分が攻撃されてもないのに無闇に戦うわけには行かないんだよね?」
何で……って今議論してる時間はないか。
「じゃあ私を船に上げて!」
「お安い御用だね、そおーれ」
「おわぁー!!?」
着地失敗してベチャってなったぞお前!!そんなぶん投げることねえだろうよ!!
「悪いね、受け身くらい取ると思ってね」
「こちとらケツ搔く体力も残ってねえよ!」
「ああ、そういえばさっきの見てたよ、凄いねあれ」
「え、やっぱり?まあグラさんの最強の一撃だからね……防がれたけど」
「………後にしてくれない?」
……いたのねお嬢ちゃん。
「……誰があのタコの追撃から助けてやったと思ってるの……動けないなら休んでて、ブレさんもそんな長く保たない」
っとそうだブレ子……あいつ大丈夫か?
「俺の風でぶっ飛ばしてくれって言い出したときは死ぬ気かと思ったけど……案外戦えてるじゃないかさ」
「ハヌさん……実際結構まずいよ、確かにブレ子の動きは人間の領域で言えば十分に化け物の部類だけど……あの刀はダメージが無い」
「なんの引っ掛かりもなく肉も骨も切り裂くことはできても、痛みしか相手には伝わってないだ」
「……そう、だからあのタコに本当は怪我してないって気付かれるとマズイの……わかったら集中させて」
考えろ私……お嬢ちゃんの声も無限じゃない……それにタコがいつブレ子の攻撃に気付くかわかったもんじゃねえ……
「レプンカムイ!守ってくれるんだろ!?」
「うーん……まあ君達に無事に海を渡らせるのが僕の役目だったわけだけどね……わざわざ自分から戦いを挑んで負けて、助けてくださいはちょっと違うんじゃないかね?」
「私の目論見が甘かった、どんな罰でも受けるよ……だから他の奴は……!」
「違う違う……失望させないでほしいねハリガネサン、それにこれはただの意地悪というわけでも無いんだよね」
「君は、人々に示したのだろう?神に頼らぬ生き方を」
「君が招いた災いにまで手を貸してしまっては……英雄としての君はどこに行くのかね?」
「それとももう諦めたのかね?体力が切れた?最大級の一撃で倒せなかった?君はその程度なのかね?」
「それは……」
くそ!どうする!『一回休み』覚悟で『削ぎ落す命』でグラさんを回復するか…?
『汝!ふざけたことを抜かすでない!断じて許さぬぞそのようなこと!!』
じゃあどうするってのさ!一秒長く悩めばそれだけ娘が死ぬ可能性が増える!!
「……げほっ…あっ…」
「ミリアちゃん血が!」
「……黙っててシャルヴ…ゲホッ…私も負けないから…!」
お嬢ちゃん……
「マズイ……ハリガネ!あの侍ももう限界だ!」
ごめんグラさん……使うよ。
『やめよと言うのが聞こえぬのか大馬鹿者!』
『汝が軽い気持ちであろうとも、こうなるとは思わなくとも……』
『皆承知の上でここに来ているのだ!何故いつもいつも自分勝手に抱え込んで己を簡単に犠牲にするのだ!』
『……それで助けられた者達は…何を糧に貴様の帰りを待てばいい…?いつ戻るやもわからぬ貴様を…どうして待っていられる…?』
でも……もう他の案を考えるには時間が足りないんだよグラさん!!
『黙れ聞きたくない!!我だけでなく皆が家族と離れたくないと何故わからんのだ!!』
子供が危ねえ時に犠牲になれなくちゃ何のために親やってんのかわからねえだろうが!!
『……勝手にしろ、どこへなりとも行くが良い……』
必ず戻るから……そこだけは約束破ったことないだろう?
…………いや待てよ?どこへなりとも……
あ……!!
「レプンカムイ!!」
「何かね…?英雄、ハリガネサン……甘い考えで家族を危険に晒し、その上で神に何を願おうと言うのかね?」
「あえてお前が私を英雄と呼ぶ理由がわかった……英雄としてあの時の見返りを求めることにするよ」
「……身体を…貸せ!!」
「……ああ、お安い御用だね。」
Q.結局『更に先へ』って心が負けなきゃいいの?それとも歩かなきゃ行けないの?
A.心が負けなけりゃ解けないしギリギリ死なない
それだけでぶっ壊れてるのに前進することで回復とステータス補正が入るしグラさんは他のスキルとの併用で半分バグ技じみたバフかけてる。
Q.タコさんターハルの内情詳しくない?
A.長生きしてるからね……
Q.タコさんはどんな感じでなら食べられても許した?
A.〔食べんといて……〕