第6話 夜が明けました
夜が明けてオレンジ色の朝日が村をうっすらと照らす。
あれから俺は全ての村人を殺してしまった。本当は全員を殺める気など毛頭なかった。しかし、一気に大量の魔力を体内に吸収してしまった俺は正気を失っていた。
おまけに村の周囲に白い霧がかかり、霧を抜けて村をでようとすると入り口に戻ってきてしまう怪奇現象も起きていた。だから俺は村の門に集まった村人達を一網打尽にすることが可能だった。
「あら、こういうことになってしまいましたか」
聞き覚えの声が聞こえてきたので振り返る。そこには人型のなにかが突っ立っていた。肌は灰色で顔はのっぺらぼうのそいつは、見た目に反して声は美しい。
「よぉ精霊様。斧に多くの魔力を入れて置いたのも、白い霧もあんたの仕業か?」
そう、声の主は完全に泉の精霊と同じだった。
「それはどうでしょうねぇ。ただ、このような惨劇が起きてしまったのは私の責任でもあるわけですから、責任は取りましょう」
灰色ののっぺらぼうは少しずつ姿を変えてマリアのような見た目になった。
「彼らはドッペルゲンガーですわ。自由に姿形を変えることのできる魔物ですの。暫く貸し与えるので村を上手く運営しなさい。少しずつ時間をかけて奴隷や戦で生まれた難民なんかを村に受け入れて人間だけの村にしていくのですわ」
見た目だけでなく、声質や口調もマリアにそっくりだ。いつの間にか周囲にはたくさんののっぺらぼうが集まってきており、彼らはそれぞれ違う村人へと変身していく。
こうして俺は誰も居なくなった村をドッペルゲンガー達を使って運営していき、少しずつ外から住民を集めていった。そして村長となった俺は死ぬまで悠々自適に過ごすことになる。
◆❖◇◇❖◆
〜数百年後〜
「はぁ〜」
ラルフは今日もため息を吐きながら木を切り倒していた。彼は魔法が上手く使えず、村からは無能呼ばわりされている。
「クソッ! どうして俺だけこんな目に合わなきゃいけないんだよ!」
ラルフは斧を思いっきりぶん投げる。彼は斧に八つ当たりするのが癖になっていた。投げた斧はそのまま近くにあった泉へと落っこちる。
「あ、やばい」
ラルフが泉へ近づいていくと、水面に渦巻きが起こり、そこから美しい女性が現れる。
「あなたが落としたのはこのオリハルコン製の斧ですか? それとも……」