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第2話 いじめられました

俺はとぼとぼと帰り道を歩いていた。銅貨5枚を払わねばならないのは地味に痛い。だいたい1日にかかる食費と同程度の値段だからだ。


その日暮らしの生活を送っている身としてはかなりきつい。だけれどマリアに金を払わない選択肢は無い。そうでもしなければ村長の息子バレンに何をされるか分かったものではないからだ。


はぁ。こんな村から逃げだしたいとは思うも、領主の許可なく他の場所へ移り住むことはできない。冒険者は例外だが、先ほども言ったように俺が冒険者になるなんて不可能だ。


そんなことを考えながら畑道を歩いていると、前方から3人の子供がやってきた。ガキ大将として有名な大工の子供、ダインとその取り巻きたちだ。


段々と彼らとの距離が近づいていく。彼らはちらりとこちらを見てくるも、会話に熱中しているらしく、特になにもしてこない。やがてすれ違うが、何事も起こらなかった。


しかし、ほっとしたのも束の間、すれ違ってから10秒ほど経過したとき、頭に鈍い痛みが走った。


あまりの痛みに思わずうずくまり、右手で頭を抑える。後ろからは複数人が笑いながらばたばたと足音を立てて遠ざかってゆく音が聞こえた。


足元に目を向けると、そこには生卵サイズの石ころが転がっていた。


悔しい、悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい。


頭の中が悔しさでいっぱいになるも、俺にできることは無い。下手に子供たちを追求すれば、彼らの親から何をされるか分かったものじゃないからだ。


目に涙が溜まり視界が歪む。腕で目を擦ると再び起き上がる。


まだじんじんと痛むが、さっきよりはだいぶ良くなった。再び歩きだすも、幸運なことに誰にもであわずに帰宅する。


家に戻ると、早速黒パンに野いちごのジャムを塗りたくり、まるで飢えた狼のようにむさぼり食らう。


極上のハムでも挟んで食べたいところだが、また恐喝されて金を取られでもしたら困る。暫くは貧相な食事をして貯金するべきだろう。


朝食を食べ終え、壁に立てかけてある斧を手に取る。長い間使っているため少し刃こぼれしてはいるものの、木を切り倒すのに支障はない。


腰に着いているベルトに斧の柄を差し込むと、仕事のため再び家をでた。


◆❖◇◇❖◆


俺は木こりギルドへ足を踏み入れる。ギルド内では既に多くの木こりたちが仕事の準備をしていた。木こりギルドはその名の通り木こりたちのためのギルドである。


木こりギルドでは、山で切り倒した木材を運ぶ馬や荷車などを貸し出してくれる。林業はこの村の主要産業なので多くの村人が木こりギルドに加入していた。


「でよう、ドミニクのやつ、その女とスラムにある宿で一晩やっちまってよう。起きたら女はどっかに行っちまった後で、持ち金全て奪われたらしいぜ」


「わはははは! そんな分かりやすいのに引っかかるなんて、あいつは真性の馬鹿なんじゃねぇのか」


受付の近くで2人の大男が談笑している。最初に口を開いた無精髭の、野性味溢れる男がイワンだ。そして彼に相打ちを打った目つきの悪い男がヨーゼフである。


ギルドの受付に行くには彼らの前を通らねばならない。嫌な予感がしたものの、早く仕事に取り掛かりたいため彼らに近づいていった。


2人は俺を視認すると、会話をやめた。そしてヨーゼフは顔をニヤつかせながら、俺が通るであろう場所に右足を置く。(辞めるは仕事を辞めるなどで、会話なら『止める』か『やめる』かと)


俺は敢えて彼の思惑通りに足を引っ掛けられて転ぶことにした。機嫌を損ねればもっと酷い目にあうかもしれないからだ。


ヨーゼフの足に思いっきり触れて盛大に転倒する。敢えて手を床に付けるようなことをせず、頭から地面に突っ込んだ。


「ぷッふふふ」


「フハッ!」


2人は含み笑いをした。俺は悔しくて彼らに顔を向けることができず、さっと立ち上がる。受付を済ませ、馬と荷車を借りると足早に木こりギルドを去った。


ところどころ傷ついた木製の荷車を、背中が折れ曲がった頼りない老馬に引かせる。空は曇っており、まるで俺の心の内面を表現しているようだった。


しかし幸いなことに、仕事場である山までは特に誰にも絡まれることなく到着した。そろそろ仕事に取り掛からねば日が暮れてしまうため、俺に構う時間がなかったのだろう。


早速手頃な木々を伐採していく。魔法の使えない俺と一緒に仕事をするような物好きはこの村に1人もいないため、全作業を1人でやる。


ただでさえ身体強化魔法が使えない俺は作業が遅いというのに、1人で黙々と作業するせいで余計に他の木こりたちより効率が悪い。


しかし、俺にはこの仕事しかない。少しでも売却額が上がるよう、なるべく切り口が綺麗になるよう木々に斧を打ち込んでいく。

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