うさぎの花びら屋さん
ごぞんじですか?
悩んでいるときにすってんころりんすると、うさぎの花びら屋さんに行けるって。
ころころころがって落ちた穴の先にうさぎの花びら屋さんはあります。
ころりんさんがぼうぜんとしていると、ちょっと広めな巣穴みたいな空間の、かれ草の山の中からうさぎさんがおそるおそる顔をだすのです。
その時うさぎさんがもっているお花。
それが、すってんころりんした人におくられるお花です。
花びらをつんで食べてみたら、あらふしぎ。
お花の色にたいおうした味がするんですよ。
1月にころりんした人には黒色のお花がおくられました。
黒色の花びらは、いろんな味のまざりまざった味がしました。
しんゆうとおおげんかをして悩んでいたころりんさんは、しんゆうの全てをいちど受け入れてみようと思いながら帰りました。
2月にころりんした人には黄緑色のお花がおくられました。
黄緑色の花びらは、みずみずしい味がしました。
長年つとめてきた会社でようせいさんになりかけていたころりんさんは、入社したてのころのしんせんな気持ちを思いだしながら帰りました。
3月にころりんした人には桃色のお花がおくられました。
桃色の花びらは、幸せな味がしました。
もうすこしで赤ちゃんが生まれることに不安をいだいていたころりんさんは、家族がふえてからの幸せな生活にむねをおどらせながら帰りました。
4月にころりんした人には黄色のお花がおくられました。
黄色の花びらは、おひさまの味がしました。
なんとなくいろんなことがうまくいっていなかったころりんさんは、あしたは良い日になる気がしてるんるんと帰りました。
5月にころりんした人には紫色のお花がおくられました。
紫色の花びらは、のうをしげきする味がしました。
書いているしょうせつの続きになやんでいたころりんさんは、むくむくわいてきたアイデアをメモしながら帰りました。
6月にころりんした人には緑色のお花がおくられました。
緑色の花びらは、とても落ち着いた味がしました。
さいきんてんしょくとひっこしをして不安だらけだったころりんさんは、不安が小さくなってのんびり帰りました。
7月にころりんした人には水色のお花がおくられました。
水色の花びらは、しんみりなみだの味がしました。
とてもつらくて悲しいのに泣けなかったころりんさんは、なみだがあふれてきて泣くだけ泣いたらすっきりして帰りました。
8月にころりんした人には橙色のお花がおくられました。
橙色の花びらは、元気があふれる味がしました。
やる気がなくてだらだら日々をすごしていたころりんさんは、とりあえずへやのそうじをしようと元気もりもりになって帰りました。
9月にころりんした人には青色のお花がおくられました。
青色の花びらは、ふかい知性の味がしました。
けんきゅうせいかが出なくていきづまっていたころりんさんは、むかし読んだ本の内容をはってんさせた新しいりろんをくみたてながら帰りました。
10月にころりんした人には茶色のお花がおくられました。
茶色の花びらは、枯れた味がしました。
会社のけいえいほうしんでむすこさんと対立していたころりんさんは、自分はそろそろ引退してむすこに全て任せるかと思いながら帰りました。
11月にころりんした人には赤色のお花がおくられました。
赤色の花びらは、おいしいトマトの味がしました。
りょうり人なのにトマトぎらいだったころりんさんは、トマトぎらいをこくふくして帰りました。
12月にころりんした人には白色のお花がおくられました。
白色の花びらは、何の味もしませんでした。
しゅういの人に合わせ続けることにつかれていたころりんさんは、自分は自分と開きなおって帰りました。
あらあら、話をしていたら新しいころりんさんがやって来たようですよ。
うさぎさんの頭がかれ草の山からひょこんと出ます。
ころりんさんとびみょうにきょりを取りながら、うさぎさんはぷるぷるお花をさしだしました。
「お花、いかがですか」
ごぞんじですか?
悩んでいるときにすってんころりんすると、ふしぎな穴にころがり落ちてしまうって。
ころころころがった穴の先にいるのはちょっとひとみしりなうさぎの花びら屋さん。
およびごしでちかづいてきながら、うさぎさんはお花をくれるのです。
お花をもらったら、その花びらをぜひ食べてみてください。
ころりんしたきっかけになったなやみをいやす味がするはずですから。