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言葉を重ねるしかないんだ(一日一詩(あくまで目標)

おみせやさんごっことやさしいせかい

せっせせっせとかいがいしくおかあさんが

こどもにやらせるおままごとのおみせやさんごっこは


500円で仕入れたものを100円で売ったら

ほら、みんなしあわせになるわよね!

ほら、みんなよろこんでくれるわよね!


じゃあ1000円で仕入れましょうか

100円で売ってごらんなさい

ほら、みんなもっとしあわせになる

みんなもっともっとよろこんでくれる!


善人の種はそうして育つ

そんな不平等がやさしさだと信じている


傾いた天秤を傾いた視点は正しく等しさを測れない

お金をもらうことに罪悪感を感じ

ついには働けば働くほど病んでいく


そしておかあさんはかいがいしくこどもの世話をする


大好きなおままごと

なにげない仕事の愚痴に返す言葉は

一生懸命やらないと誰もわかってなんてくれないのよ

あなたはただ一生懸命にやりなさい


それしかあなたの取り柄はないし

そうすることでしか人間は認めてもらえないものなのよ


だってあなたの売るものなんて

100円じゃなきゃ買う人なんていないでしょう!


たくさんたくさんお金をかけて手を尽くして

そして100円で売れば買ってくれる人がたくさんいるのよ!

そしたらあなたはほめてもらえるの!

ほら、思い出して、あの頃のおみせやさんごっこ

安くしたら買ってくれた人は笑顔になった

それをあなたはとても嬉しいと思った!


こどもは仕事の楽しさを覚えない

奉仕しなければいけない、いけない

身を切り崩さなければ誰にも必要とされない

まだ足りない、まだ足りない

消耗するしかない、誰も喜んでくれない、くれない


やさしいやさしいこどもを育てた

つもり

やさしいやさしいいけにえを育てたの


見知らぬ空腹の旅人に己の身を焼いて食べさせる

あの星になったうさぎのような


そんなやさしいこどもが理想だったのでしょう?


そんな未来のないこどもでいさせたかったのでしょう?


いつまでも大好きなおままごと


こどもはもうすぐ体はボロボロ

心もボロボロ


他人のためにこんなに心を砕けるこどもに育ってよかったわと

確信さえ得るのかもしれない


そしてこどもは若いうちに死ぬ

もう無理がたたってどこもかしこもボロボロだったのだから

自分を育てるための水も肥料も他人に与えてしまったのだから

それを他人に与えることでしか自分を肯定できなかったのだから


まだ続けられるわね、悲劇ごっこのおままごと

おかあさんが天寿をまっとうするまでね

あの子はいい子だったと言い続けることであと何十年


いい子だったのにねえ

いい子だったのにねえ

佳人薄命とは言うけれど、いい人から死んでいってしまうものね

世の中ってそういうふうにできているのよね

まさかうちの子がこんなにはやく

逝ってしまうとは思ってもみなかったけれど


世の中じゃないよ、あなたがそういう子に育てたの

親切で、善意で、全身全霊をかけた100パーセントの善き心で

ボロボロになって苦しんではやくに死んでいくこどもを育てたの


やさしい子だったのにねえ

思い出にひたるおままごと

アルバム何度も見返して

ああ、そうでしょう、よい思い出しか残ってないわね

そして善意の憐憫で涙をこぼしさえするのでしょう



立派に生きてくれてうれしいわ

親より先に死んでも私は責めたりしない

あなたはなにより誇らしい私のこども



でもね、その大事なこどもは


私はなにもできなかった

なんて価値のない人間なんだろう

おとうさんおかあさんごめんなさい


そう泣きながら死んでいったわ




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