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プロローグ 「そして金はそこを尽きる」

 夏の暑い、平日の昼下がり。

 俺は小中高、同じ学校に通っている唯一の女友達の遥と帰っている。


「まじ、今日の期末テストの古典むずくなかった? しっかしなんで私が昔の人の言葉なんか勉強しなくちゃいけないのかねぇ? もう分かんねぇから私全部、断定にしたわ。 ワンチャン10点あるわ」

「········」


「おい。 お前元気ねぇなぁ。 もしかして、カイトも出来なかったのか? いつも学年トップなのに?」

「······いや、悪い遥。 ちょっと帰りに行かなきゃいけない場所あるから先行くわ····」

「あ、付き合おうか?」

「いや、いい····」

「おう、わかった。 それじゃあね」

 俺は、別れた遥がまっすぐ道に進むのを確認すると、重い足取りで逆方向のコンビニに向かった。


「いらっしゃいませー」

 コンビニに入ると定員の声が聞こえたが、すぐに曲がりトイレの前のatmに向かった。


「暗証番号の入力してください」

 この音は今まででいったい何度聞いたのだろう‥‥

 正直残り残高はもう分かっているが、少しの可能性にかけ入力すると

 「0」

 あぁ、知ってた‥‥どうしよう‥‥

 裁判始まって開始、五秒で死刑宣告された感覚だ‥‥

 嫌な汗がだらだらと吹き出てくる。

 俺はすぐにコンビニを飛び出し、急いで家に帰った。


「ただい···ま」

「あらおかえりなさい」

 皿洗いをしていた母が返事を返してくる。

「にいさん‥‥おかえり‥‥」

「おう帰ったか、カイト 。 後でよ、バイクで暴走しねぇか?」

 しねぇよ。

 平日の昼下がり、家に帰るといつも家族全員が迎えてくれる。 それも毎日‥‥


 俺は大きく深呼吸し

「お金が尽きた」

「「「は! 」」」

 今までゲームで対戦していた父と妹はコントローラを落とし、皿洗いをしていた母は、皿を落とし割り涙を流しながら口々に

「くすん、これで私達も····絶滅なのね」

「私最後にケーキ食べたいな」

「俺は今夜ぐらいバイクで暴走するか久しぶりに」


‥‥‥って

「じゃねぇーだろ! 働けよ!お前ら! いい加減! 」

「無茶言わないでよ! 私、太陽に当たったら焼け死んじゃうわ! あ、痛」

 割れたお皿を拾いながら、言い訳をする母。

「おめぇは、ドラキュラかなんかなのかよ! 」

 親に対してこの口の聞き方は一般的にはおかしいが‥‥この馬鹿共には、これで話さないと話が通じない。


「俺は人間関係····無理だ。 俺の友はバイクしかない」

「黙まれこの機械見るだけ症候群が! 機械音痴なくせに!」


「兄さんの宝くじのお金無くなったら、私達家族全員で心中するって約束した」

「してねぇよ! 怖えぇぇぇよ! 唯一のかわいいの取り柄のお前からそんな怖い言葉を口にするな!」


 父は重い腰を上げ、台所の戸棚をあさりながら

「しっかしなー、お前はほんとに俺達の子か? 」

「そうよねぇ」

「なんだよ急に····」

「「だって何で、私達からこんな成績優秀で友達もいて、外に出れる子が生まれるの?」」

 父と母は、一言一句全く同じ言葉を同じタイミングで言った。

 やめて、聞いてるこっちが悲しくなる‥‥


 そう俺の家族は毎日どのタイミングでも俺が家に帰れば全員揃う····つまり、俺以外母、父、妹全員引きこもりニートだ!


 働かない家族がどうやって今まで生き延びたかというと、それは俺が小学生の時1枚だけ買って当てた2等の宝くじの当選金5000万で今まで生活をしてきたが‥‥今日というか、一週間前にそこを尽きていた。

 恐ろしすぎて言えなかったが‥‥

 これからどうやって生きていけば‥‥


「とにかくだ。 俺は絶対に死なないぞ! こんな年で死んでたまるか!」


‥‥‥‥‥‥‥


「おい、何やってる‥‥」

 父と母が手分けして、窓を締切ライターを取り出す。

「仕方ないでしょ‥‥‥」

「いや、あの‥‥ちょっと待ってください!」

「大丈夫だ! 父さんに任せろ!」

 そう言うと、父は練炭に火をつけた。

「いや違う待って‥‥任せろとかそう言うとじゃ‥‥」

「‥‥‥‥みんな死ねしかないじゃ──」

「それはやべぇぇぇやつーーー」


 俺は無我夢中で練炭を蹴り上げた‥‥

「「「「あ‥‥」」」」

 練炭が倒れ、近くにあった服に引火し家が火事になった。


 そのまま俺達、家族は意識が無くなった‥‥

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