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黒の王  作者: カキネ
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終編 愚6

 スレインは事実が受け入れられなかった。ユマの話を真実とは到底思えない。


 それではティラは死ぬためにこの世に生まれたとでも言うのか。それは絶対に受け入れられない。それを受け入れてしまってはティラを諦める事になる。


 スレインは拳に力を入れ、


「それが真実という保証はどこにもないですよね、確かに似ている所は確かにある。だけどそれは似ているだけだ。レミリアさんの生まれ変わりなんて保証なんてない。第一願いを叶える必要なんてないんだ。誰もティラにいなくなってまで願いを叶えて欲しい人なんていない!」


「兄様・・・」


 ティラはスレインのあまり見せない怒りに、心配そうに見る。


 ユマはスレインの迫力に若干怯む。だがすぐに、表情を元に戻し。


「確かにそうね。ティラが死ぬことはあなたたちは望んでない。でもグリモアの書は違う。グリモアの書は望みを叶えてほしいと思っている。だって、グリモアの書自体は願わねばその力を使うことができないんだもの」


 ユマの言葉は死の宣告と同意義に感じられた。あまりにも残酷な言葉にそこに慰め等の言葉などなかった。その言葉にクレアはユマを凝視し、顔が強張る。


「母様・・・、妾とてこのまま見捨てるのは不憫じゃ。なにか良い方法がないじゃろか?」


 ユマは首を振る。


「まだ話は終わってないわ。まずは全部聞いて欲しい」


 ユマは周囲を見て、皆が衝撃を受けている事を感じる。


 それでもユマは話さなければ、行動できなかった。自分の罪を告白しなければ、目的を遂行できないのだ。


「ショックだろうけど、もう少しだけ耳を傾けて頂戴」


 それに力なく頷くのを確認して。


「先ほどの話に戻るわ。トルンはグリモアの書の使い方を知って、使うことを放棄した。そして当初の計画通り、魔獣との融合の実験に戻った。でもね、もう時間がなかったの。国と国の争いはすでに私達の国まで巻き込もうとしてた。兄はね、まだ試験可能状態ではないにも関わらず、自分の体を使って実験をした。レミリアは最後までグリモアの書を使う事を望んでいたけど。兄はそれを拒んだ。そしてレミリアは兄の魔獣との融合の試験体を聞いて反対した」


「そして魔獣との融合が成功したんですね。僕は断片だけど知っている。そいう事だったのか・・・」


 スレインの言葉にユマは頷く。


「そう、兄は強行して融合実験をし、成功させた。ただ問題があった。魔獣との融合の副作用とも言うのかしら、兄は魔法が使えなくなった。協力な魔獣を召喚するにはそれこそ、国の大魔導師クラスではないとダメなのよ。兄はそれこそ魔術ではその部類に入っていた。そして私達の中では兄だけだった」


「つまり・・・、魔獣を呼び出すことができなくなってしまったと・・・」


 アリスの言葉にユマは頷く。


「私達の実験は兄で最初で最後、次がなかった。そしてあの日が来た。敵が攻めてきた。兄は一人で国を守ろうと戦った。もちろん国も必死に防衛をしてた。なんとか国内に入れずに瀬戸際の防衛戦を繰り広げた。ただ・・・」


 ユマは忌々しいとばかりに、吐き捨てるように言う。


「転送ポータプル、コードを変え国内に敵を入れないように対策をとっていたのに、平和主義者が抵抗するから血が流れると言い、コードを管理してる場所を占拠、そして敵を国内に入れたのよ。その結果私達の国は一気に押され・・・」


 後は聞かなくても皆は分かった。負けたのだ。


「いとも簡単に陥落。そして、私達の所まで敵は来た。私は幸か不幸か一番奥にいたから、遭遇する事はなかった。でも研究所、グリモアの書が保管されている場所に敵は来た。やつらは愚かにも自ら滅びの道をとった」


「そこでグリモアの書とレミリアか・・・」


 クレアが小さく呟く。


「レミリアはね、最後までグリモアの書を兄であるトルンに使って欲しかった。そして最後までグリモアの書を守ろうとして命を落とした」


「レミリアさんが死んだ事でグリモアの書が発動した?でもなにを願ったんだろ?」


 マイが疑問を口にし、アリスが。


「まさか滅びを・・・」


 ユマは首を振る。


「レミリアが願ったのは、3つ。本来は一つだけ叶えることができるグリモアの書。でもレミリアは3つ願ってしまった。その結果がこの世界そのもの」


「一体なにを・・・」


「レミリアが願った1つ目は、兄トルンを守ってほしいと思った事。でもね3つ願った事で、トルンにその願いは届かなかった。当時兄はもう人ではなかったせいかもしれないけど。名前を変えガルムと名乗っていたわ」


 その言葉に全員が目を見開く。


「まさか・・・獣人王ガルムが母様の兄君だったとは、考えてもみなかったわ」


 ユマは微笑む。


「兄との約束でね。言えなかった。私も隠すのが上手よね」


 だが次の言葉で更なる驚きが全員を襲う。


「そしてトルンでありガルムである、兄に願いは届かなかった。その変わり兄の生まれ変わりである・・・。スレインあなたにグリモアの書の加護が得られたのよ」

 

 表情をあまり変えないスレインも驚きのあまり急激な表情の変化をする。周囲の者はそれ以上の変化をさせる。


「さすがにびっくりしたようね。でもね、先ほども言ったように加護は完全ではないの。幼少期の様に扱いきれない力を託されても、不幸を招くだけ」


 スレインはハッとする。


「だから、あの時獣人王に負けそうな時に助けてくれたのか・・・」


「グリモアの書自体は語りかけてこない、でも兄のかつての記憶を使って助けることはできる。ただそれは加護を得られたあなたと、鍵であるティラだけだけど」


 驚きの連続で皆、情報の整理が追いつかない。


「2つ目の願いは、敵の憎悪よ」


「当然じゃな・・・、レミリアにとって平穏を壊された様なものじゃからな」


「その結果、私達が住んでいた国以外全て消えた。人も、動物も、植物も、そして大陸すらも・・・。1つならば良かった3つ願ってしまったから、願いはそのまま叶えられる事はなかった。そして私達の国も敵が入り込んでしまった為、その影響を多分に受ける事になる。それが今の世界の全て」


 ユマの言葉は驚きの連続、3つ目の願いを聞くのが怖かった。そして3つ目の願いを聞くことで、状況は一変する事になる。

 

 


真相が終わらないんです。安西先生・・・。

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