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黒の王  作者: カキネ
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終編 愚4

 全ての説明を終え、それを回避する術があるのか尋ねる。


 ユマはしばらく考える仕草をとる。


 そしてティラに視線をやり、何度も頷き。


「大体の事情はわかったわ。ここに来た理由もね。だけどその前にまずは話さなければならない事があるの。その話はね、あなたの話した事に大きく関わる重大な話。そしてクレアごめんなさい。あなたには半分嘘をついていた」


 クレアは食べるの止め、ユマを見つめる。ユマもまたクレアを見つめる。


「全てを話したかった、でも兄との約束で全てを兄の責任にしなければならなかった。本当に辛かった」


 ユマは悲しそうな表情を浮かべる。


「い、いいんじゃ、母様がそうせねばならない理由があったんじゃろ?母様が気に病むことはない」


「本当に優しい子、クレアはいつでも私の為を思ってくれるのね」


「当たり前じゃ!母様は素晴らしい人なんじゃ。そんな母様が平気で嘘を付くわけがない」


 ユマはクレアに微笑む。


「ありがとう」


 クレアの表情は一気に崩れ、子供の様な純白な嬉しそうな表情を浮かべる。


 ユマは視線をスレインに移し、十秒ほど見つめ。


「長い話になるわ。かつて人類が繁栄を謳歌していた時代。そしてもっとも愚かな時代の話。霊廟を見て分かったと思うけど、当時の世界は魔法と人間の知恵の結晶が融合した世界だったの」


 スレイン達は神妙に頷きそれを聞く。


「人はその力で、医療、代替エネルギー、食料、水、あらゆるものが改善されていった。他者から奪わずとも生きていける世界。人類は平和を謳歌していた。だけど、そんな事は不可能なのよ。どこかで歪みがでるものなの。それが表面化した時、もう手遅れだった」


 ユマは辛そうな表情で語る。


「それは・・・?」


 アリスが疑問をつい口に出す。


「人はいずれ死ぬわ。だけど、魔法医療が発達したその時代。人はほとんど死ぬことはなくなった。移動ですら転送ポータプルが出来、安全にあちこち移動できた。外の国ですら一瞬で着けるのよ。その意味がわかる?」


 誰も答える事ができなかった。今を生きる者には想像がつかない話。


「老死ですら今とは考えられないほど、長生きできた。事故もほとんどなく、負傷、病気してもほぼ治る。それはね、結果的に人口が爆発的に増加してしまうという事なの」


 マイは首を傾げる。


「それは善いことではないのですか?」


 クレアが首を振る。


「それは違うな。何事にも限度という物がある。人だけそれが許される道理はないじゃろ」


 ユマは頷く。


「そう、この世界が抱え切れる人口には限りがあった。世界は有限なのよ。人が住むには土地が必要。その土地もまた限りがあるの。そしてその土地は人だけ住めればいいわけではない。植物、動物、昆虫、様々な生物も住んでいるの。人口が増えるという事はね、それらを追い出すという事なのよ」


 合点がいったのか、何度もマイは頷く。


「でも、それが何故滅びの方向に?」


 ティラが更なる疑問を口に出す。


 クレアはため息をつく。


「母様がいったじゃろ。人が世界の限度を超えたと。つまり、人も漏れなく例外ではないという事だ」


「騙し騙し人類はそれを隠し生活してきた。でも表面化した時には、それはもう手遅れ。世界は人だけで動かす事はできない。あらゆる生物の営みを得て、人はそこに住むことができた。でもそれが出来なくなった。魔法と人間の技術で代用できるものはそれでも何とかなった。だけど、世界はそんなに甘くなったかった。土地は段々砂漠化していき、今まで得た食料が得られなくなった。そうなると海洋の食料も取り尽くし、最後には国と国の奪い合いに発展していった」


 スレインは生唾を飲む。


 想像以上の話、グリモアの書で一気に消えた訳ではないのだ。


 皆、話を聞いて顔を暗くしている。


 でも、スレインにはそれがティラの命に何の関わりがあるのか不思議だった。


 ユマは皆を元気づけようと、微笑みながら。


「本題はこれから、聞けるかしら?」


 少し悪戯めいた言葉で話す。


 誰もがユマの言葉で席を立つものはいなかった。


 皆本心では、これ以上は聞きたくなかった。でもここからが本番なのだ、その為に来たのだ。


 ユマに真剣な眼差しを向けながら。それをみてとって、話を続ける。


「国と国の奪い合いが始まる前、兄と私、そしてレミリアの話。ここからあなた達に関わって来る事になる」


 


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