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黒の王  作者: カキネ
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終編 愚2

 あまりの光景に誰もが混乱する。開かない霊廟が開き、女性がその中から出てくる。その声、姿を見たクレアの動揺は激しかった。あのクレアが涙したのだ、まるで子供の様に泣きじゃくってるのだ。


 マイは動かなかった、動けないと言った方が正しいかもしれない。それほど場は常軌を逸していていた。


 女性は笑む。


 その笑顔は綺麗だった、涼やかだった。ただ問題は現在いる場所が霊廟の前ではなかったらだ。その笑顔は異質な物に感じられた。


 クレアはなおも泣きじゃくる。そして・・・。


「母様・・・」


 と女性に向けて、手を差し出す。距離はあり届かない位置にいるにも関わらず。クレアはまるで追いすがるように差し出す。


 母様というクレアの言葉に、更に混乱の局地に達する。


 何が起こっているんだ、これは一体どいう事なんだ。はるか昔に亡くなっているユマが生きている?馬鹿な、そんな事が起きたというのか。だが、クレア様は目の前の女性を母様と呼ぶ。そういえば、僕もあの女性に見覚えがある。では、本当にユマだと言うのか。


 スレインが自問自答を繰り返す中、女性はゆっくりと歩き始める。それに気がついたスレインは注意深く見守る。女性はクレアの前まで歩を進めると、膝を地面に下ろし、その手を取る。


「クレア、また泣いているの?もう泣き虫ね」


 女性はクレアに慈愛の表情を浮かべ、頭をなでる。


 クレアの表情は一層歪み、涙に拍車がかかる。


「母様~、ずっとずっとお会いしたかった」


 それはもうスレインが知るクレアではない。一人の子供の姿だった。


「よしよし、さあもう泣き止みなさい。皆さん困っている」


 ポンポンとクレアの頭を軽く叩き、膝に着いた汚れを落としスレインに向き直る。 

 

「お初にお目にかかります、私はユマと申します。ここでは何ですから中でお話をいたしましょう」


 ユマと名乗る女性は離れないクレアを連れて、中へ誘導する。


 中へどんどん進むユマとクレア。それをお互い視線を交し進退の判断を確認する。


「私は反対します」


 声を出したのはカインだった。


「皆さんはこれを事実と受け止めれるのですか?あまりにも情報が不足しています。もし危険が待ち構えていたら、罠の中に飛び込む様なものです」


 カインの言葉は状況を把握している軍人の言葉だった。


「クレア様をあのままにできるわけがない、頼む皆着いてきてくれ。私になにかあった時、クレア様を任せる人が必要なんだ」


 マイの必死の言葉が響く。


 カインとマイは両者譲らず。今にも剣を抜きそうな勢いだった。それを止めようとアリスとティラはスレインに視線を投げかける。


 今の状況で正解を導くのは難しい、だけど今更あとに引き返してもティラの命は助からない。自ずと結果は出ていた。


「行こう。今は進むしかない。だけどカイン、君はここに残ってくれ。もし僕達に何かあったら、それを聖王都まで伝えて欲しい」


 カインはそれに憤慨する。自分の役目は護衛なのだ。その護衛が留守番では示しがつかない。


「カイン、頼む」

 

 スレインは頭を下げる。カインはスレインを数十秒見つめ。

 スレインの真摯な態度にカインはしぶしぶだが了承する。


「ですが、今日一日です。今日一日戻らなければ、聖王国王都へ行き、救援を頼みます。よろしいですね?」


「ああ、それで構わない。ありがとうカイン」


 カインはため息を一つつき。


「ご無事で」


 スレインはそれに頷き。


「何が待っているかわからない、気を緩めずに進もう」


 そう声を掛け、前へ進む。


 最後尾のマイが入った瞬間だった、カインがその後ろ姿を見送っている時、開いていたドアは勝手に締まり始める。焦ったカインは勢いよくドアまで走りそれをさせまいと力いっぱい抵抗するが、その勢いは弱まらず、完全に閉まってしまう。


「これは・・・、いけない。罠だ。すぐに助けを呼ばなければ」

 

 カインは焦る。スレイン達の退路が塞がれた事への焦り、そしてこれは恐らく罠という焦り。カインは駆け出す。


次回から物語の真相が語られます。多分。


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