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黒の王  作者: カキネ
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転機2

 刻々と時は流れる。クレア以外の人たちはその動向に注視する。かすかな望みを胸に抱いて。


 しばらく考え込んでいたクレアは突然笑う。


 その視線ははるか遠くを見ている。


 視線を戻してスレイン達に向ける。


「すまなんだ、突然なつかしい名前が出て驚いてしまった。レミリアか、いつ以来に聞いたじゃろ。もうその名前を聞くことはないと思っておった」


「心あたりがあるのですね?」


 アリスは問ふ、クレアはそれに同意するかの様に静かに頷く。


「妾が知っておるレミリアという女性は母様から聞かされた。はるか昔にな。母様が生きておった時に、よく楽しそうに話された過去の話。その中にレミリアという女性が出てくる」


「どの様なお話でしょうか?お願いします、今はどんなお話でも必要なのです」


 クレアは顔の前で振る。


「慌てるでない。災厄とは無関係な話じゃ。母様が時折なつかしく話す仲間の話じゃ。母様であるユマ、そして兄であるトルン、そしてもう一人幼じみのレミリアという女がいた。3人はとても仲良く、いつも一緒だったそうじゃ。そんなたわいのない話じゃ」


 アリスはがっくりと肩を落とす。そこにティラを助けるヒントはないと思って。


「災厄に全くの無関係なのですか?」


 スレインが間に入る。


「兄さん?」


 スレインの問にクレアは頷く。


「母様から聞かされた話の中には、レミリアは出てこなかったな。なんぞ気になるか?」


 スレインは薄らと汗を流し。


「おかしい」


 とポツリと呟く。


 クレアは首を傾げる。


「僕の見た夢の中にレミリアは出てきた。そして今のところその3人が仲間だと言うのも矛盾していない。なのに、全くの無関係はおかしい」


「どいうことじゃ・・・」


 クレアの顔が強張る。


「僕の夢にはレミリアは災厄の時、何かを守って死んだ。そうクレア様の育ての親ユマ様が言っていました。つまり災厄に全くの無関係というのはおかしいのです!」


「馬鹿な!」


 クレアの顔は一層強張る。


 それを心配するかの様にマイが不安な表情で見つめる。


「妾は母様からそんな話は聞いておらん!母様が嘘をついたというのか!」


 クレアの怒声に似た声が部屋に響き渡る。


 スレインはあまりの剣幕に二の句が告げられなかった。


 どうやらクレアにとって、ユマに関わる事を否定するのは琴線に触れるらしい。スレインはここで自分の失言に焦る。


「落ち着いてください、クレア様。兄は夢の話をしているのです。事実は兄にもわからないのです」


「わかっておる!じゃが、あまりにも無礼だぞ。母様が嘘をついたなぞ」


「わかっております、ですが兄とて必死なのです。何か糸口が掴めないかと」


 アリスの説得に少し落ち着きを取り戻し。


「ふー、例え、レミリアがそこに関係しておったとしてじゃ、それで何になる。ティラの見た夢ととうに死んでいるレミリアがどう結びつく?」


 クレアの言葉は当然だった。


 すでにこの世にいないのだ。はるか昔に存在していた人なのだから。


 その言葉に誰も反論できず、ただ口を閉ざす。


 クレアも大人げなかったと少し戸惑う程に、4人は落ち込んでいた。


「妾とて・・・・ティラを助けたいのじゃ。じゃとて、相手がグリモアの書ではな。どうしようもない・・・の!!」


 クレアは突然何かに気が付いたように目を見開く。


「だが、あそこは・・・。しかし、なにか見つかるとは思えん。うーむ」


 クレアが独り言をブツブツ呟く。


「仕方あるまい、何もなければそれでよし、なにかあればもうけものか」


 クレアはそう言い、4人に声を掛ける。


「お主達、一つだけ関係する場所がある」


 その言葉に4人の視線はクレアに集中する。


「じゃとて、そこに行ったとしても、関係ないやもしれん。それでも行くか?」


「どこですか?」


 4人は同時に同じ言葉を言う。


「本来は禁忌なのじゃが、命を助ける手助けになれるならば母様も許してくれよう。場所はな、ここ聖王国の中心の神山であり母なる山。妾の母様が眠る場所であり、獣人王ガルム、そして・・・」


 皆の期待が一気に高まる。


 しかしマイの表情は固まった。


「レミリアが眠る地じゃ。本来は祭事以外立ち入ってはいけない場所じゃが・・・、この際目をつむろう。だがお主達に申しておくぞ。妾が力を貸せるのはここまでじゃ。わかったな?」


 一同頷く。


「そこはいくらクレア様とはいえ・・・」


 マイの言葉にクレアは何事かマイに囁いて、表情は青くなる。マイの弱みを言ったのか、口を閉ざしたのだ。


 そしてスレインは夢の涙が分かった気がした。彼はレミリアの眠る場所に行きたかったのだ。だから、彼は生きる事を終わらせたかったのかもしれない。


「ありがとうございます、クレア様」


 スレインが代表して言う。それにクレアはやれやれと言った感じで受け取る。


「まったく手がかかる者じゃ」


 クレアは小さく呟く。


最終章突入します。転機はもしかしたら付け足すかもしれないですが。そのときは、活動報告に載せようとおもいます。感想お待ちしています。

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