帝国と巫女
帝国が各国に派遣した間者の報告を聞き、帝国皇帝ガルザスが勢いよく立ち上がり命令を下す。その命令内容は大軍召集令だった。
帝国軍は命令を受け、慌ただしく動く。さすが帝国軍というべきか、10万もの軍勢がわずか1週間で集合する様は、精兵を思わせる働きだった。
集合した兵に進行命令が下される。目標はサイラス国。
皇帝ガルザスは家臣の諌言を押切、自ら陣頭に立つことを選んだ。本来ならガルザスはこの様な軽率な動きをする人物ではなかった。だが、今回だけは例外だ
。それも全て、自分の命を救ってくれた恩人が危機に陥ってるという報告を聞いてしまってはいてもたってもいられない。それは家臣も同じだった、皇帝ガルザスは帝国で偉大な人物、その命を救ってくれた人の危機を見逃すことを良しとはできない。出兵には反対はしないが、皇帝ガルザスが陣頭に立つことだけは承服できなかった。
だがそんな家臣の諌言を無視するかのように、命令が下される。帝国の忠実な精兵は進軍を開始する。その進軍速度は倍かかる日数である距離を数日で踏破する。だがしかし、ここで壁にぶち当たる、いつもなら理解できることが理解できてなかった。
帝国軍10万はある国境で進軍を中止する。その国境は皇国との国境だった。いくら帝国といえど皇国を脅して越えることなどできない。それはつまり全ての国を敵にすると同意義なのだから。皇帝ガルザスは気を逸る気持ちを抑えて、早馬の使者を出す。1週間程して使者は帰ってくるが、返事は軍を留め置くようにとの指示だった。これには使者も皇帝ガルザスも首を傾げる。
皇国の巫女クレアの返事は拒否でもなく賛成でもない。これにはガルザスも理解ができない。反対ならば、兵を退くように返事をする。賛成ならば兵を通すように返事をするだろう。だが巫女クレアの返事はそのどれでもなかったのだから。皇帝ガルザスは仕方なく、兵を国境に陣を張り待機するよう命令を下す。
荘厳な宮殿の一室で皇国の巫女クレアは、帝国の使者と会う前にある人物と会っていた。未来予知という手段の他にも、何千年もかけて各地に根を張ってきた手足とも言うべき存在、その一人が持ち帰ってきた情報にクレアは興味を抱いた。
「黒の砦によりサイラス黒の砦討伐軍敗れる」
その報だけならば、クレアも皇帝ガルザスの様に焦るだろう。討伐軍を倒してもサイラスが動員を本気ですれば、黒の砦も抗うことはできないだろうという目算でだ。だがしかし、使者の言葉はそれだけではなかった
「スレイン率いる黒の砦の一団は民を併呑し、サイラス王城に向かい進軍中」
それを聞き、クレアは思案する。ここでクレアが援軍を出せば一方の勢力だけに肩入れをすることになる。それは皇国の根幹に関わる大義が失われる。それは避けなければいけなかった。そして、先ほど帝国軍が国境に展開し帝国の使者が面会を求めていると言う、恐らくは同じ理由なのだろうと推測できた。心情的には通したい。しかし、通せば結果的に皇国は黒の砦に味方をしたと見られるだろう。クレアは傍観をするという結論に達した。サイラスは皇国が動くほどに国は腐敗している。だが皇国の権力が絶大なだけに使い方を誤るわけにはいかなかった。それは自分を拾ってくれた、母様の願いなのだから。それ故の傍観であり、帝国の使者に対する返礼だった。
その5日後、クレアにサイラス崩壊の報がもたらされる。王は捕らえられ、黒の砦の一団が王城を占拠したのだ。今は各地に残る反乱分子を片付けているということだから、サイラス平定は時間の問題だろう。
クレアはそこで命令を下す。帝国軍に事は片付いた事を伝える使者と、自らが調停にサイラスに行くための命令を発する。王のいない国は荒れるものだ、元々荒れていたとはいえ、さらに荒れるだろうと予想できる。自らが行くことで皇国が後ろにいることを見せつけなければ、民の苦難はひどくなる一方であろう。
準備に追われるクレアの元に、帝国の使者がまたやってくる。忙しいときに何じゃと忌々しげに、報告を聞き、使者と応対する。使者の言い分は皇帝ガルザスと近衛兵100名、宮廷魔術師タレルをサイラスに行ってもいいかと言う確認であった。それにはクレアも驚く、命を救われたとは聞いていたが、まさかそこまで義理堅い男とは思ってもいなかった。ならばと・・・・クレアは自らの参列に加わることを進言する。プライドの高い男、ガルザスが巫女クレアの傍に侍らう参列者になるとは思えないが一応そう伝えてみた。だが、意外とそれに同意する旨を伝える使者が来たことには驚きを隠せなかった。
皇帝ガルザスが皇国の王宮で巫女クレアと面会し、巫女率いる一団へと加わる。この頃にはほぼサイラス平定が終了していた時期であり、またスレインが王になるよう求められておらず悩んでいない時だった。
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