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黒の王  作者: カキネ
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作戦会議


「馬鹿な!そんなこと可能なのか!」


 静かな円卓の会議場で、スレインの声が響き渡る。

 スレインの憤る姿を見て、周囲は動揺する、しかしシークだけは想定内とばかりに、口を開ける。


「スレインさん、現状それが優先されます。このままでは落ち着いて目的を達成できませんからね」


 シークが提案した内容は、黒の砦とサイラス国の争いを解決を目指す策だった。

 シークが話した内容はこうだった。

 サイラス軍が黒の砦に襲った経緯をまず話。さらにその後の作戦として黒の砦ほぼ全軍と味方した民、さらに降伏した兵を率いて、サイラス統一を目指すというもの。結論で言えば、王城さえ落とせばほぼ統一はなされるだろうというシークの話だった。それにスレインは怒る。

 スレインとしては、自分の目的に他の人を巻き添えにするのはためらうのに、サイラス全土を巻き込んで我を通すというのはあまりにも想定外の事だった。


「ならば、拠点を変えるのではだめか?」


 スレインはどうしても賛同できない、多くの血を流すであろうこの作戦にはどうしても。

 しかしシークはそれを真っ向から否定する。


「ダメです、もし拠点を変えてもいつかは同じ問題に行き着くと思われます。あまりにも有名になりすぎました。かえって、拠点移動するとしても他国から妨害を受けるのは想定されますよ」


 シークの言葉は正論だった。

 だけどスレインはどうしても頷くことができない。


「ならば民だけでも、帰すことはできないのか?」


 それもシークは頭を横に振る。


「残念ですができません。民を守るという大義名分がなくなります、スレインさん安心してください。矢面には立たせませんので、あくまでも民が味方についているということが大事なのです」


 スレインは苦渋する。

 そして沈黙が訪れる。


 その沈黙をグレンが破る。


「とりあえずよ、それさえ解決すればまた目的再開できるんだろ。さっさと終わらせちまおうぜ」


 グレンの能天気な言葉が場内に響く。


「おいおいグレン、それだけの問題じゃないと思うんだがな、俺も詳しくはわからねえけど・・・・」


 それに答えるようにレオンも言葉を発する。


「そいうことね、例え作戦を遂行するにしても、食料問題があるわ。この砦にはそれだけの人を何日も食べさせてあげることなんてできない」


 アリスの言葉にシークは頷く。


「そうです、計算してもサイラス軍から徴収した食料、砦からの食料あわせても、1ヶ月持たないでしょう。ですから、速やかな作戦行動が大事です。当座の目標は、我が砦から近くのクライシス城を落とす。そしてその城付近の都市を開放する。それにより食料の確保が可能になります」


 シークはスレインを見る。

 後はスレインの許可が降りるだけだとばかりに。

 スレインは決断ができない、そもそも自分の目的にこれほどの人数は必要なかったのだ。ただ結果的に黒の砦に大勢の人々が集まっただけ。そしてスレインは居心地が良かったからそれを許していたに過ぎない。そもそも拠点なんて必要なんてなかったのかもしれない、その結果こんな争いに巻き込まれてしまったのだから。自分は甘いと思う。勝ってに目的に付き合わせて、仲間はそれに努力で答えてくれているのに。だけど自分以外が傷つくのを良しとするほど、スレインは無慈悲な心を持ってはいない。

 スレインは皆の視線を感じるこの状況で、頭をあげることができない。

 自分の決断が仲間を傷つける結果になるとわかっているから。

 そんなスレインをティラは心配そうに見る、そしてシークに質問を問いかける。


「シーク、王城を取って国を統一しても、その後どうするの?まさか兄様に王様をやれと言うわけじゃないよね?」


 シークは冷酷な笑みを浮かべる。

 それを見て、頭を下げているスレイン以外は、理解する。シークは何か企んでいると。


「もちろんですよ、まあまずは宰相閣下を救出してからということになりますが」


 笑みを浮かべるシークを見て、周囲は思うこいつ絶対もうすでに結論でていると・・・。

 だからといって、別の案があるわけでもないので口を噤むしかない。


「スレインさん、あとはあなたの言葉だけです」


 シークの言葉がスレインに重くのしかかる。


「兄様・・・」


 ティラが声をかける。

 スレインはティラを見て、ティラは微笑みをかける。


「兄様がどんな決断をしても私はついていきます」


 ティラの言葉を聞き、目を閉じる。

 そして少し考える。

 ゆっくりと目を開け。


「わかった、これより黒の砦はサイラス統一の為に軍を挙げる。皆付いてきてくれ」

 

 スレインの意思が皆に伝えられる。

 シーク、グレン、レオン、ティラ、アリスはその言葉を聞き、大きく頷く。

 スレインはそれを見て、今は迷わず前に進もうと決意する。


 早速、行動に移された。黒の砦は準備にかかることになった。降伏したサイラス軍はすでにシークにより篭絡済みであった。元々サイラス軍の半分は、民からの徴収であったため、シークの民を救う目的に賛同する形となったのだ。民もサイラスを良き国にする目的と理解して付いてきてくれる。それは、斥候を放ち、サイラス全土に伝えられる。今、黒の砦は出発の号令を待つだけとなった。


 そしてスレインは思う、シークにうまく転がされている現状に恐怖を感じる。

これシークが全て仕組んだんじゃね・・・と不安がよぎるが、今はそれを忘れる

こうして黒の砦は表舞台に立つことになる。



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