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二面性の僕の、好きと嫌い

作者: 彼方 舜

 彼女の事を好きな僕と、彼女の事を嫌いな僕がいる。


 それはどちらも同じ僕だけど、どちらも違う僕だ。


 3年付き合った彼女とこの前喧嘩した。


 いや、喧嘩したより一方的にこちらが怒鳴りつけただけの結果だったけど。


 怯えた彼女の表情が忘れられない…。


 今更後悔したって、過去には戻れない。


 今だってなんだってあんなに怒鳴ったか自分でもわからない…。


 自己嫌悪に陥るばかりだ。



 彼女からもメールがこなくて数日。


 それでも彼女のことが好きだと思う気持ち、怒鳴り散らした時のように嫌いな気持ちが混在する。


 彼女を好きだと思う瞬間、嫌いだと思う瞬間、それぞれ違う。


 ただ、今まで付き合っていた彼女たちの事を思うと、今の彼女の扱いは全然違う。今までの彼女に、ここまで優しくはなかったし、気持ちが通じなければ「さよなら」って終わってた。大体にして、女は言葉が多すぎる。あれやこれやそれや「私のこと好き?」「どこが好き?」「どんなところ?」って、一々事細かいことまで思い巡らせてはいない。男は単純だ。好きだから逢いにいくし、面倒だから行かないし。女は複雑すぎてわからない。ちょっと「そのクセ直したほうがいいんじゃない?」って言えば、自分を否定されたと思って、過去から根掘り葉掘り否定された自分を嘆いて、あげくは言った僕が加害者扱いだ。付き合っていく中で気になるから言う言葉を、一々根深く捕らえすぎだと思うが、女はそういう生き物なんだろうな。

ただ、彼女は今までとは違う。なんとなく、僕に近い言葉や感覚を持ち合わせ…いやもちろん違う事も多いが、そして違うからこそ面白い部分もあり、その中でも認められなかったりする部分もあり…複雑だが、複雑だからこそ彼女を気に入っているのだ。そして、その彼女に翻弄されている自分も、気に入っていたりする。


 だが、今回は何とも言えない…。


 前から気になっていたことを、いくら酒が入っていたとはいえ…ぶち当ててしまうとは、自分でもショックを受けた。これで彼女に嫌われても、もう仕方がないかなと思えたし、それに付随する言葉を自分から言った。そして彼女からは距離を置きたいとメールがきた。そりゃ…そうだろうな。

 

 そして一週間経ち、僕の中で気持ちが半分諦めかけていた時、彼女からメールが入った。


 「あの時は怒らせてごめんなさい」


 たった一言だった。


 けど、嬉しい気持ちと反面、そう言わせた自分が情けなかった。


 彼女は自分に自信がないけど、プライドは高い。この言葉を選ぶにも相当時間がかかっただろう。


 ただ、僕は今回は謝らない。


 情けない自分を認めることになる。彼女を嫌いになる。


 だから「ごめんなさい」と心で謝りながら「メールありがとね」って返した。


 それからのやりとりで怒濤のメールをもらうことになるが、鬱陶しいと思いながらも想われている自分を実感できる彼女が、やっぱり好きで、この鬱陶しさが嫌いな僕。


 この好きと嫌いはどちらも僕。


 二面性の僕の、好きと嫌い。


 そんな僕を、きっと彼女はまだ知らない。

 

 

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