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母と娘。母said。

 娘は私にとって人生の全てである。

 他家からみたら変と思われていても私は娘を溺愛している。

 自分で言うのも変だけど娘は母想いの優しい子供に育ってくれた。

 いつか社会に出ていい人を見つけて、結婚式を迎える日までは娘に恥じない親で有りたい。

 スーパーで惣菜担当を任されてるので朝と昼は娘と一緒に卓を囲む事が出来ないので、《夕食は家族一緒に食べる》このルールは今でも続けている。


 夕方のお客様が多くなる前に惣菜を作り、パックに詰めて価格シールを貼って陳列を終えた。

 その後炊事場を清掃したら帰れるのだが、その日だけは違っていた。

 食材などを買いに来た客に紛れて、娘と同じ歳くらいの少女を見たからだ。

 少女の服装がV字に開いたシャツに少し屈んだだけでお尻が見えてしまいそうな短く改造したスカートの格好が娘と同じ学校の制服だと一致するのに少しだけ時間が掛かった。

 明るめの髪を少しキツめにカールしてツインにしている。

 見たままの雰囲気はギャルっぽかった。

 少女は周囲を見渡して私と目が合うとゾクッとした笑を浮かべて堂々近くの商品を手に取り出口に向かった。


「………大変!万引き」


 私は慌てて少女を追い掛ける。

 しかし店舗を出てスグのショッピングカート置き場で少女は私が付いてくるのを待っている風に立ち止まっていた。


「ん。なに?」

「お客様、お会計がまだの商品があると思いますが……」

「これでしょ?」


 少女の手には掌に隠れるほど小さな箱、中身がコンドームだと解る品物だった。

 悪びれる様子も無く、逆に値踏みをする様な絡みつく視線を送る少女に不快感を憶えた。


「悪いけど、規則だからバックヤードに来て貰うけど付いてきて」

「だったら手を繋いでよぅ。じゃないとアーシ逃げちゃうかもよ?」


 確かに少女ならやりかねないと思い手を繋いで休憩室へ入った。


「……貴女、何をしたか分かってるの!万引きは犯罪って知ってるの?」

「アーシがソノ事を知っているのと、万引きと犯罪が結びついている結果と事実が整合性があると本当に思いますぅ?」


 先程まで大人しくついてきた少女との違いに私は戸惑った。

 二人きりに成った途端、少女の視線は私の身体に絡みつく。

 少女の視線の前では衣服なんか関係なく裸で立たされてる気分になり思わず両手で身体を隠して視線から逃れようとした。


「どうしちゃったの?お・ば・さ・ん」

「………っ!」


 休憩室で二人きりになった事を後悔した。

 テーブルの上には少女が万引きしたコンドーム。


「あっそーだ!」


 恋人とデートの時に『今日はお弁当作ってきたの~』みたいな感覚でカバンから生徒手帳を取り出してコンドームの隣に添える。

 生徒手帳の名前と年齢を見て、写真と少女と見比べる。


「何で万引きなんてしたの?」

「おばさんに興味があったから」

「……ふ、ふざけないで!」


 少し強く言いすぎたのか、少女は下を向き涙声になる。

 生徒手帳に書かれた学校は娘と同じ場所だった。


「さい……ごめんなさい……おばさん……ごめんなさい」


 謝罪の言葉を口にする少女。

 見た目は派手で不良みたいな風体でも根は素直なのかも知れない。

 私は少女に情けをかけてしまった。


「反省してるみたいだし、商品も問題ないと思うから今回だけは警察に言わないであげる。……でも親御さんか学校に連絡して貴女を迎えに来てもらわないと帰す事は出来ないわ」

「それならココに電話して。お願いします」


 アドレス帳を少女は取り出すと、一つの番号を指さす。

 携帯番号だった。


「学校の担任だから」


 学校の先生なら大丈夫、そんな気持ちで電話をした。

 コール3回で出た教師の声はどこかで聞いた女性の声だった。

 担任教師が来るまでの間、少女と話をした。

 学校の事、好きな食べ物や嫌いな食べ物、両親の事………初めはただの時間つぶしの程度だったが気付けば親身に相談を受けていた。

 少女の両親は親として機能を果たしていない。

 少女が孤独に耐えている、そんな状態を私は勝手に娘と重ねてしまった。


 休憩室の扉をノックする音で現実の時間が動き出した。

 鍵を開けてドアを開けた。

 そこには娘の担任が申し訳なさそうに立っていた。

 事情を話して少女を女教師に預ける。


「ねぇ……寂しかったら相談して。娘も貴女なら友達になってくれるわ」

「……」


 少女は一度私に笑顔を見せると女教師と一緒に夜の街に消えていった。


「………ふぅ」


 少し遅くなったけど、夕飯の買い物をして帰ろう。

 家に早く帰り娘の顔を見たかった。

よくNTR物は疲れると聞きますが……なるほど疲れますね。


では。

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