姉と妹の八月一日。
前回スポーツジムに行こうとするが妹との語らいで断念した。
今回こそはと八月にも入ったので、再びジムに行こうとシャワーを浴びた後に事件は起こった。
新しく置いた下着だけが無い!
しかも洗濯籠に入れた古い下着も漏れなく無くなっていた。
「まさか泥棒が?」
古いのも兎も角、新しい下着まで取っていっているから泥棒……いやもしかすると変態はまだ家の中に潜伏して下着が無くて困る私を眺めてほくそ笑んでるに違いない!
だとしたら、妹も危ないじゃないか!
下着だけは何故か残っていたので着替えて脱衣所から出た。
声を立てて変態の餌になるのは真っ平だ。
なるべく音を立てない方向で家の中を歩いた。
先ずは自室のタンスを開く。
「……なっ!」
タンスに入れといたブラが根こそぎ無くなっていた。パンツは無事なのに……。
「パンツには用はないってどんな神経してるのかしら?」
取られないなら、それならソレで本来良い事なんだけど……私にはオッパイしか価値の無い女と変態に思われてる事実だけが、胸の中でモヤモヤと凝りになっている。
妹が変態に何かされていたら大変なので部屋を出る。
居間の方向から何やら楽しげに鼻歌を鳴らす声が聞こえる。
妹の声だ。
妹の安否を知りホッと胸を撫で下ろす。
「ねぇ、お姉ちゃんのブラだけ盗まれたみたいなんだけど……」
居間に入った私は目の前の光景に言葉を呑み込んだ。
居間には色とりどりの私のブラが干されていた。
楽しげに干しているのは妹だった。
「よし♪」
干したブラに囲まれる形で妹は満足気に下着を眺めていた。何かをやり切った清々しい笑顔をだしてだ。
「妹よ。つかぬ事を聞くが」
「なぁにお姉ぇちゃん?」
少々食い気味で返答する妹。
私はその笑顔に騙されてはいけないと強く心に念じて問いただした。
「………居間に干してあるのは」
「お姉ぇちゃんのブラジャーだよ?」
「いや……それは分かっている。……しかしだ!なぜ今!?全部!?」
「ヤダなぁお姉ぇちゃん!8月1日だからだよ!」
うわっ!
なに! !
妹の言ってることが理解できない!
「ごめん……お姉ちゃんよく分からないから詳しく教えてくれない?」
「もう仕方ないなぁ。8月1日は《洗濯機の日》だからだよ♪」
やっぱり妹の言ってることが理解できない!助けてGoogle先生!!
Google先生は優しく教えてくれた。
国土省か8月1日を水の日と制定したのでそれに関連する洗濯機が名乗り出たと言うことらしい。
「……洗濯機の日は分かったけど、それと私のブラジャーが犠牲になるのと何の関係があるの?」
「犠牲じゃないよ!洗濯だよ!!」
「そうね……洗濯よね」
エアコンの送風でゆらゆらと揺れるブラジャーを眺め嘆息をついた。
妹はコチラに目を輝かせて何かを期待している。
いや……何かでは無い。
「ご褒美にキスして欲しいの?」
「キスは欲しいけど……今日だけは違うの!!」
「それじゃあ~何かな?」
「お姉ぇちゃんオッパイ出して!!母乳権を行使するよ私は!!」
「オッパイ……えっ!ぼ、母乳権ってなに?」
「8月1日だし!おっぱいを、出そうよ!ぱぁ~っとね!!」
「妹よ!8月1日と言ったら何でも許されるとは思うなよ!」
流石にオッパイと八月一日は無関係だろ!
一応Google先生にまた頼ってしまう。
「……うそ……だろ!」
《世界母乳の日》
本気で有りやがった!
世界母乳連盟がWHOとユニセフに援助を出して貰って制定した日。
我国でもそれに合わせて《母乳権》を広く知ってもらう為に記念日にした。
「いくら姉とはいえ、流石に母乳は出ないぞ」
「育ち盛りの私はお姉ぇちゃんのオッパイですくすくと育つ所存だ!」
「所存だと言われても……」
「つまり……愛する姉妹がちでちをあらうんだな?」
それは《血で血を洗う》なのだろうけど、妹の言い分だけを聞いたら《痴で知を洗う》が正解な気がする。
それだと姉である私がただ妹に翻弄されて恥辱に悶えるだけなのでは!?
「………くっ!……悪くない!!」
私は妹を抱き寄せ……胸を……むねを……。
「出来るかぁ!!」
「………お姉ぇちゃん」
「なんだ?」
「妹の前でノーブラでいられるってどんな神経してるのかな」
誰のせいで!誰のせいで!!
うわあああ!!!
その夜私は涙混じりに友人に朝まで電話をした。
リアルで色々あって………更新が2ヶ月ぶりになってしまいました。
それでも!それでも!『世界母乳の日』を伝えたかったんだ!
ボクは悪くないぞ!
では!