どうやら妹が………。
「じゃあお姉ちゃん出掛けてくるから留守番お願いね」
居間のソファに窮屈そうに寝っ転がりながら妹は聞いていた。
たぶん最近ジムに通いたいと姉は言っていたから今日が初日なのだろう。
ボストンバッグから少し飲み口が覗く水筒をみて妹は確信した。
「お姉ちゃん何処に行くの?……スポーツジム?」
「そうだよ。いっぱい運動してくるからね」
「……今日はジムに行くの止めない?天気こんなだし」
窓の外を姉は見るが雲一つないいい天気だ。
「運動するには絶好の天気だと思うんだけど?」
「今はこんな天気だけど午後には雨も降るしカナブンも沢山でるかもしれない」
「カナブンは兎も角雨くらいなら折り畳み持っていくから……って天気予報みたの?」
「うん。天気予報でも言ってたし『晴れ時々局地的カナブン』って……それにホラ今日って仏滅で赤口で友引だから……」
「何その天気予報!?……局地的カナブンって!!」
今までイナゴやクマゼミの大量発生以外でカナブンの異常発生は耳にしたことが無かった。
良識ある姉としては妹のワガママを心を鬼にしてでも正す必要がある。
「妹よ。そこまでして姉を足止めする理由を言いなさい」
「今日は休日で朝から私は待っていたのです」
妹が誰を待っていたかなんて態度を見たら解る。寧ろ聞くほうが野暮だ。
「それならお姉ちゃんの部屋に来れば良かったんじゃないのかな」
「……それは無理。私達姉妹で一線を越えるのはどうかと思うの。例えお姉ちゃんがジムで腹筋が五つに別れたとしても姉妹という関係に変化はないのよ」
「ンン~!?妹には色々ツッコミたいのだけど……取り敢えずジム通ったってお姉ちゃんの腹筋は五つに分かれないよ!もっと良くかんがえて!」
「あ~。お姉ちゃんごめんね。腹筋の数違ってたね~」
「OKOK!間違いに気付いてくれてお姉ちゃんは嬉しいよぅ」
「そうだよね。腹筋が五つになるわけないじゃんね。例え腹筋が七つに割れても私が妹である事実は変わらないわ!」
シックスパック!!
「まって!お姉ちゃんの腹筋そのものに七つに割る機構もならないから~!そもそも奇数にこだわる理由も分からないし腹筋割る予定も無いからぁ」
そもそもジムに行くのは夏入る前に体型を少し絞りたいだ。
妹には少々天然なところがあり、姉としては可愛くさえ思っている。
その妹が考えもなしに奇数に拘る理由はきっとある!
姉は溜息を吐きながら一人掛けのソファに座る。
「ふぅ。妹の用事を聞いてからジムに行くとするわ……どうしたのか話して」
それを聞いて快くしたのか、妹は姉の太ももの上に向かい合わさるように跨いで座った。
「妹よ」
「なーにお姉ちゃん」
少しだけ眉間にシワを寄せる姉と対象に綻んだ笑顔をする妹。
「妹よ。これでは話がしづらいから降りてはくれないかな……」
「嫌」
激しく首を振ってイヤイヤをする妹を残念だか姉は『くっそ可愛いぃぃぃぃ!』と思ってしまったのだ。
「OK!OK!私の膝の上に座る事は妥協するが何か言うことがあるだろ?」
「お姉ちゃんチュウしよ!」
「イヤイヤおかしいでしょ!?妹が用事あるって待っていたんだよね?」
「だからチュウしよ」
「チュウはしません!」
「だっておはようのチュウだよ?お姉ちゃんは私としたくないの?私はチュウしたいよ?」
「………それは」
「それは?」
「したいけど……今はちゃんとお話をねしたいのよ、妹は私に話したい事があるのよね?」
「むーっ。チュウしてくれないお姉ちゃんに話す事は無いんです!」
妹は首だけ横を向いている。背景に書き文字が見えたら明らかに『ツーン!』と文字が見えただろう位の見事な拗ねっぷりだ。
膝の上の妹が退かない限り姉は何処にも出かけることが出来ないのだから。
諦めて妹の頬にキスをする。
キスされた箇所に両手で弄り照れる妹を可愛いで許せてしまう姉に威厳もあったものではない。
威厳の失墜とでもいっても良いと思う。
「……それで何か悩みなのか相談なのかどうしたんだ?」
「口チュウないの?ねぇくーちーちゅーうー」
口を尖らせて口にしなければ治まりそうにも無い状況に姉は少し流されそうになる。
姉妹なのに恋人の様に接する妹に言葉を失いそうになる。
ヨウムですら50年の寿命の中で幾つもの言葉を発するじゃないか!
「もし妹がヨウムなら……」
ヨウムには二回反抗期があるそうだ。
妹は反抗期なのか!?
「……お姉ちゃんどうしたの?」
「OK!OK!お姉ちゃんの事より先ずは妹の話だ!」
「……話すけど………怒らない?」
「怒らないから話なさい」
「本当に?」
「本当だ」
いつに無く念を押すなぁマイシスター。
「あのね……お姉ちゃんとの赤ちゃん出来たかも?」
「………………え?」
しばらくぶりですm(_ _)m
基本に戻って姉妹にしてみました。
天然の妹に姉が苦労するのっていいかも?
ではでは。