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勇者と魔王のはなし

「よく来たな!」


 目の前の女性は玉座に座り確かにこう言った。

 全体のイメージは黒七割。後は紫と金と赤で構成されている。

 あと恐い。


 分からない?


 済みません人と話すのって慣れて無くて。

 オマケに柄にも無い勇者なんかやっててゴメンナサイ。

 なんなら変わって欲しいのですよ。まったく。

 取り敢えず立ってるの疲れました座ります。よっこいしょ。


「………おい」


 中央の祭壇みたいな場所に玉座があって。

 高圧的な視線が夏の太陽の様にサンサンと私目掛けて降り注ぎます。

 こんな時には部屋の隅でじっと目線を合わせないのが大事です。

 下手に見たりしたら、因縁つけられて財布人生ですよ。

 呼びつけられてはお金を吸取られる。

 あぁ石ころ帽子が欲しい。


「おい!コッチ見ろ!」


 うひぃぃぃぃ!

 いつの間にか後ろを取られた!

 体育座りのままだから思う様に距離が取れない!


「アタシに用が合って地下(ココ)まで来たんだろ?それにその鎧に付いた紋章は勇者の家系だよなぁ!」


 窮鼠猫を噛む。

 昔の人は言ってたから、頑張れ私!

 残りの人生を掛けて言ってやる!!


「…………お構い無く」


 よし!

 よし!頑張ったぞ私!


「構うよ!すっげぇ構うよ!!今日は本当は友達とサイクリングに出掛けてBBQの予定だったんだよ?なのにさぁ魔神(パパ)勇者(おきゃく)が来るから迷宮(かいしゃ)にいろって命令(いいつける)から朝からメイクして待ってたんだよ?」

「………ごめん」

「ごめんじゃ無くて何か勇者的に言う事あるでしょ?」


 えっと………考えても有る理由が無い。

 定型文(セオリー)を脳内辞書『魔王と対面した時の例文』から引用する。

 いや本当ボッチの時間潰し読書技能が役に立つ。


「………休日でこんな陽気にサイクリング!?更にBBQをするなんて!…………許せない!」

「えっ!怒りの矛先ソコ!?」

「リア充は敵だ!」

 

 私はリア充は爆死して欲しいと常に願う者だ!

 奴等は集団行動が得意で、体育や英語等の授業で教師による無慈悲なまでの命令『仲の良い人とグループを組んで授業します』に即対応出来る。

 しかし出来ぬ者には『独りで出来るもん』は発動させては貰えない!

『可哀想だから一緒にやろ?』

 1度も会話した事が無い相手に私のパーソナルスペースが蹂躙される気持ちが解るか?

 道を歩くリア充は他人の迷惑を考えずに横一列に成りたがる!縦に並んだら死ぬのか?と問いたい!

 それに自転車でも道路交通法を無視して逆走するわ、平気で並走するわやりたい放題………


「………やっぱりリア充は悪だな」

「勇者ちゃんって面白い。ねぇねぇ定番だけど『世界の半分上げるからアタシの勇者になってよ』って言ったらどうする?」

「要らない」

「いやいや絶対の権力が手に入るんだよ?」

「私は私のパーソナルスペースに対して既に3無い条約を出願している」

「3無い条約?」

「パーソナルスペースにて友人を作らない・持たない・持ち込まない」

「………友人を非核三原則みたい使うなよ」

「友人はリア充の元に成るから話し掛けない、作らない、行動しないと大戦後に『4プラス1無い運動』から派生したのよ」


 珍しく4行以上話をしたから疲れました。


「貴女なんで勇者になったの?」

「成りたくてなったんじゃ無い!変われるならどうにかしたいさ」


 半年前まではごく一般的なヒエラルキー地下4階に位置する学生だったさ。


「まって!ヒエラルキー地下って何?」

「ヒエラルキーは知ってるよね?所謂ピラミッドで表す価値基準だ。一番上が休日にBBQするリア充……この位置が魔王」


 私は石灰岩(いしぼく)で地面にピラミッドの絵柄を書いて4つの階層に分けて一番上の尖った部分に魔王と書いた。

 そしてピラミッド底辺の下に逆に二倍の深さを誇るピラミッドを書いて10階層に分けて4階層目に私と明記した。

 地下4階層から魔王クラスのリア充を目指すには7回程死なないと無理、現世では諦めようクラスだ。

 因みにピラミッド頂点の地下10階層はリア獣の世界だ。


「…………なんかごめんねぇ」

「いや私みたいなクズが息しててごめん」


 ある日朝起きてから、いつもの様に迷いの森に入って行ったんだよね。


「………突っ込んだら負け」


 そしたら子供の泣く声がしたから向かったの。

 私は自殺に来たのに、泣き叫ぶ子供置いて死ぬわけにもいかず。

 結局森の外まででは済まなくて家まで送る事になったの。


「………自殺って」

「よくあるじゃない?朝起きて1日が始まるから死にたくなるって」

「物騒だなぁ」


 それで子供の親が私にお礼って倉庫から鎧を持って来て着せてきたの。

 止め金がおかしいのか、鎧が脱げなくなってね。

 夜に紋章が光るから眩しくて寝れない。

 鎧には余計な加護があって通常の疲れ程度は瞬時に回復しちゃうの。もう大きなお世話だよね……死ねないじゃん!

 私はヒッソリ死ぬ予定だったのに、鎧のせいで何処へ行っても目立つ。

 それに何処からか勇者が来たって噂が立って人が集まるから家に居られなくなって夜逃げ感覚で旅に出たの。


「それでアタシのトコに?」

「それは偶然、私暗くてジメジメした場所って落ち着くから」

「………」


 見た目はビッチな感じだけど見掛けによらず話しやすい。

 こんなに自分の事を話すのは初めてだった。


「でも上の階層にウチの魔物(しゃいん)居ただろ?どうした?」

「?」

「?じゃ無くて魔獣や魔族達はどうした?」

「鎧を脱ぐのを手伝ってもらってたんですが、鎧に触れたら皆さん居なくなって。親切な方達でしたの」

「わかったわかったわかった。もうわかった。だからもうわかったって。もういいからもうわかったから。お前の言いたい事も……つまり鎧を外したいって話だよね。もしアタシが外せたらどうする?」

「馬鹿にしないで下さい!キチンと『有難うございます』って言えますよ!」


 いくらクズでも感謝くらいします!………でも燃えないクズなんだよね。


「勇者!お前の夢ってなんだ!」

「そういうの間に合ってます」

「そうじゃ無くて、何か些細な夢でもいいからさぁ。なんか無いか?」

「誰にも迷惑をかけずに家から一歩も出ないで生活すること?」

「鎧外せたら魔王の力で夢を叶えてやるよ………ふふふ」

「それは行政に申請してやってもらうから遠慮します」


 お婆ちゃんが言ってた、『息子に脛をかじられてボロボロだ』って。


「なんだかアタシには勇者が悪人にしかみえなくなってきたよ」

「そこまで言われると照れる。その分野で私の左に出る者は居ないね!」

「それだと右に出る奴等ばっかりだから底辺だって事になるがいいのか勇者?」


 魔王はエプロン姿になると青い手袋と眼鏡を着けると私の背後に立つ。


「髪の毛でホック見えないから上に上げてて」


 やって貰ってなんだけど、魔王ってお母さんみたいだな。


「これでいい?」

「普段髪の毛で隠れてるけどうなじに星型のホクロがあるんだね知ってた」

「今言うなアホ」


 自分でも知らない事、魔王に知られちゃった………どうしよう穴が合ったら埋めたいよぉ魔王を!


「なんか嫌な事考えてるでしょ?勇者。アタシそう云うのに聡いんだからね」


 パチンと音をたてて鎧は外れた。

 長い事着用していたのに汗臭く無い。嬉しい誤算だ。


「………えっと有難うね………魔王」

「外したんだから何かないの?」

「感謝の言葉は言ったよ?」

「そうじゃ無くてさ他にあるでしょ?」

「ないよ」

「じゃあこれからBBQの会場に行って勇者を紹介しても良い?」

「無理ぃ無理無理ぃ!邪魔になるし迷惑だし勇者だしねぇお願ぁい」

「うふふ。勇者からお願い貰っちゃった」

「ズルイ!魔王ってば卑怯だぁ」

「アタシ今魔王じゃないしぃ!タイムカード押したしぃイェーイ!」


 鎧無しの背中に魔王の身体全体が当る。

 トクントクンと心臓の音が聞こえる。


「アタシは勇者の世界の半分を制覇したのだぁ」

「あぁ返してよぉ私のパーソナルスペース」

「………勇者が本気で嫌なら止めるけど?」

「……いよ………ま、魔王だけは入っても………いいよ。ほかの人はダメ絶対」

「ん。解ってる勇者のパーソナルスペースはアタシが守る約束」


 鎧が外れたら途端に腹が減った。お腹が悲鳴をあげて食料を要求してくる。


「お腹減ってるなら家に来て食べない?何ならアタシの手料理ご馳走しようか?」

「………魔王自炊するの?」

「魔族の家系は料理上手が多いんだよ!そりゃ病みつきになるほどね♪」

「………何かコワイ」

「大丈夫!大丈夫!食事をしながら週末のキャンプの打ち合わせしようか」

「私そういうの無理だから」

「勇者はアタシの傍に居ればいいの!貴女はアタシの世界の半分何だからね」

久し振りです。

ネタを書いては消し、書いては半端に残してますが何か?


純粋なファンタジーです。


殺されても良いレベルのファンタジーです。


何とか他も上げられたら良いのになぁ。


では。


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