ラーメン屋
学校と寮の間に不釣り合いではあるがラーメン屋はある。
平屋のトタン屋根。
入口は花の模様が施されたガラスが嵌め込まれた引戸。
その上には草臥れた暖簾。
暖簾は年季が入っているのか油染みが出来ている。
店内にはコレといった特徴が無いが、どことなくノスタルジックな香りがした。
コタツの天板みたいな柄のテーブル。
緑色の丸椅子しかも真ん中に穴があるドーナッツタイプの丸椅子。
ウェートレスが持ってきた、ビール会社のロゴが入ったグラス。
壁には何時から合ったか解らない水着のグラビアモデルがビール瓶の後でジョッキを掲げている。
「いらっさいご注文は?」
会長はメニューを見ては悩んでいるようだ。
「キミは決まったかい?」
「あっじゃあ醤油で」
「注文はお決まりで?」
「彼女にキベタと私は普通のカップ麺」
「ドコの世界にラーメン屋に来てカップ麺頼むひといるんですか!それにワタシは醤油ラーメンですよ!キベタって何ですかぁ!」
「キベタは生醤油のメーカーで………」
「生醤油だけもってこられても困ります!赤札が来ても飲みませんからね!」
「わかったよ。意外と怒りっぽいんだな、ウェートレスさん彼女に醤油ラーメンと私にはグルグルもんじゃ」
「だがぁしぃ!ラーメン屋に駄菓子があるかい!」
「かしこまりました」
「かしこまっちゃったよぉ」
「あっお姉さん追加できます?」
「何でしょう」
「おみやげに連帯保証人の判も貰えます?」
「かしこまりました」
「かしこまっちゃったよぉ。なんでかしこまるのぉ?連帯保証人なんて一番ダメなのに判おみやにしちゃったよぉ」
品物が届くまでの間会長の奇行は止まらなかった。
「お姉さん。ちょっといい?」
「なんでしょう?」
「ここってビールある?」
「ございます」
「じゃあいらない」
ならなんで聞いた!
「かしこまりました」
「ウェートレスさんかしこまったらダメな場所でしょソコ?」
「そう言えば、生徒会室に来て変なこと無かったか?」
「変なこと?」
嫌だなぁ幽霊とか嫌いなんだけどなぁ。
「実はさぁ出るんだよ」
よくあるお化けのポーズをする。
うわぁやっぱり出るんだァ。
「恐い話は止めて下さいよぉ」
「いやでもな一応言って置かないとなぁ。出るんだよ副会長」
「へっ?」
副会長って生徒会副会長よね?
「副会長ってお化けなんですか?」
「生きてるよ」
「生霊なんですか?」
「まぁ騙されたと思って私を撮ってみ」
言われた通りに会長をファインダーにおさめるとシャッターを切った。
デジカメの画像には、会長に寄り添うように並ぶ全裸の女性がカメラ目線でピースしていた。
「会長………これは?」
「キミにまだ紹介していないが生徒会副会長だ」
話の途中で、ウェートレスさんは餃子を運んで来た。
「あのぅ餃子頼んでませんがぁ」
「いえアチラのお客様からです」
「ウェートレスさんならコレをアチラのお客様へ」
「会長何を贈ったんです?」
「ん?伝票」
「知り合いですか?」
「いや払いたそうな顔をしていたからな」
「どんな顔ですか」
「冗談だよ今日は初デート記念だからワリカンだ」
「学生ですもんね」
ジリリンジリリンと店のピンク電話が鳴る。
「あぁモシモシラーメン屋です」
「会長何普通に出てるんですかぁ」
「えっ今何してる?見て分かんないのかなぁラーメン屋でラーメン食うのは当たり前だろ?」
うわぁーグルグルもんじゃ食べてる人が言うそれ?
それに電話だよねぇ?
見えるわけ無いじゃん!
「誰から電話ですか?」
「副会長」
「副会長ってえぇえぇ」
「彼女の特技だ生徒会は個性派揃いで実に楽しいと思わないか?」
楽しいで済む話だろうか?
ふと目の端に伝票が入る。
伝票にはメモが添えられていて『ドンマイ!会計は終ってるからね♡副会長』
「副会長おおお!」
会長にファインダーを向けてシャッターを切るとそこにはウェートレス姿の副会長が写っていた。
「会長……このラーメン屋って」
「副会長の趣味でやってる」
なんか恐いを越えて気持ち悪いよ副会長!