無口な彼女が話すこと。
放課後の図書館
司書の先生は急用で私に予備鍵を預けて帰ってしまった。
今図書館には彼女と私の二人だけだ。
夕陽が彼女の黒髪を照らして紅く染める。今すぐポートレートにしてしまいたいと思うくらい絵になっている。
彼女と私はクラスメイトではあるけど交流といえるものは殆ど無かった。
学校に来てる時は本を読んでいる為特定の友人を作ってるのを私は見たことが無い。
初めは好奇心だった。
彼女が何を読んでいるのだろうと思い声を掛けてみた。
『ねぇ、何を読んでるの?』
声を掛けてみたけど反応無し。聴こえてないとは思わないけど無視されたのだとしたら悔しい。
それから毎日声を掛けた。
『おはよう』
『お昼一緒にどう?』
『次の体育一緒に組もうよ』
等など考えられる範囲で試してみたけど悉く撃沈。
そして今日のチャンスをいかさなきゃ私の女が廃るってもんだ。
━━ただ。
「うわぁぁぁ何て声をかけよう」
何度か無視され続けられたので言葉が思い付かない!
でも結局彼女の隣に腰を掛けて時間を過ごす。
まつ毛長い。
「…………慕情」
風の音でも消されてしまうようなソプラノが耳に届く。
私が知る始めての彼女の声。
「え?」
「………」
彼女の頬は夕焼けよりも紅く染まっていた。
それを見て私の鼓動もドクドクと速くなり流れる血液が沸騰しているかの様になり頬が上気していく。
「………質問……いい?」
「はっ、はい」
「………な……何で……ワタシに構う………の?」
何で?
何でだろう?
「最初は興味だった」
彼女は本を閉じて私の話を聞いている。
「でも今は………貴女と友達に成りたいって本当に思ってる」
「そう………残念だけどワタシは……貴女の友達になれる自信がないわ」
折角勇気出したのにあんまりだ!
「なんで……なんで友達に成れないの?そんなに私ウザかった?」
「違うの!違うの!違うの!………ちゃんと……ちゃんと話を聞いて下さい」
私は本日二度目の衝撃。
彼女の剥き出しの感情が心を抉る。
「………ワタシね。す、好きな、人が、居るの………その人はね」
ショックだった。
耳を塞いだら聞かずに済むと思ったけど指一本動かせない、体が強張って動かない。
「その人はね、一生懸命で明るくて……近くに居るだけでドキドキして、でも一緒に居ると思うと安心するの……」
「……素敵な人なんだね」
羨ましいなんて………全然思わない!
「そうね。とっても素敵な人」
「その人の事どう思ってるの?」
「うん。大好き!一緒の気持ちだと思うから余計に嬉しい!」
「………その人には告白はしたの?」
正直知りたくないけど、このままだと後悔する。
それは駄目だ!
「………したよ」
ガラガラと床が抜けてまっ逆さまに落ちていく気がした。
本当に落ちてしまえば苦しまなくて済むのに。
「……そう」
「今ね返事を待ってるの。ワタシじゃダメなのかなぁ?」
「そんな事ぜったい無い!貴女に告白されて断る人がオカシイよ!」
「ホントに?」
「私が保証する!抱きついてキスでもしたら速攻で落ち………」
私なんて事を言ってるんだ!バカバカ!
彼女黙っちゃったじゃんかぁ!
「…………わかった」
彼女は立ち上がってイスに座ったままの私を後ろから抱きしめて頬に顔を寄せる。
えっ?顔が近い。
いい匂いだし、後ろに感じる柔らかいのって…………
彼女をイヤらしい気持ちで見ちゃ駄目だ!………でも。
気持ち良くって。
いい匂いがして。
柔らかくって。
頬に当たる唇が気持ち良くって………。
頬に?《わたしの》
誰の?《彼女の唇》
何で?《わからない》
「………好きなの」
「私も………ってええええええ!」
「ねぇワタシってえっちぃのかなぁ?」
「………どうしたの」
「貴女とキスしたら……もっと深く……」
「もしかして身体の繋がりが欲しいの?」
彼女は黙って頷いた。
可愛い!
「…………貴女がしたいなら私は………良いよ?」
「それってズルい!ワタシばっかりエッチな気分になって変態みたいじゃない!」
「私は貴女の隣に居られれば今は充分幸せだよ」
自分の中の気持ちやっと言葉に出せた。
ヤキモキしてくれてありがとう。
「もう!やっぱズルい!」
誰も居ない放課後の図書室の床に私は横になった。
「うふふ。好き好き………大好き!」
彼女が私の上に重なる。
二人の重さが図書室の床に流れる。
私も負けじと彼女に抱きつく。
彼女の瞳に映る私は幸せな顔をしている。
彼女もきっとそう。
だって重なりあう二人の間に言葉を挟む場所は何処にも無いのだから。
始めての方は始めまして。
久しぶりの方は元気にしてましたか?僕は元気ですよ。
今回は甘々な感じを出したかったので思うままに甘えてみました。
ショートを出さないと忘れられてしまうかもって思い緊急に出しました。
まだまだ練習中ですが読んで頂いている事が幸せです。
ではまた次回。