嘘つきな躰
「この後ゼミをやるから」
教授にゼミの告知をされた。
生徒である私が断れるはずもなく教室に行くが誰も来ていない。
「………一番乗り?」
隣の研究室から教授が『今日は此方でやるぞ』と呼び声。
私は隣のドアを開ける。
ホワイトボートの前にパイプ椅子が用意されていてどうやら座れと指示されてるみたいだ。
「あの………他のゼミ生は?」
「今回は君しか呼んでない」
教授は私しか呼んでない。
一体何をするのだろうか。
「………それで私だけを呼んだ理由は何でしょうか?」
「ふむ………少々気になる事が有ってな。私くらいに年齢の女性がどの様な暮らしをしているのか気になってな」
時々教授は授業と全く関係の無い事でゼミを始める。
その度に巻き込まれるのはいつも私だけだった。
「………それで何がわかったのですか?」
「ほうほう。君も気にせずにはいられないようだな!私が調べるに結婚をして子をもうけている女性が居るらしいのだ」
この教授専門分野では天才と名を馳せているのに一般常識は皆無に近い。よくこれまで生活出来たのか不思議なくらいだ。
「はあ。それで教授は私にどうしろと?」
「まぁそう急かすな。どうやら私は結婚適齢期というのなんだとかで、このままの状態を放置したら往かず後家に進化してしまうらしい」
往かず後家って…………教授はいつの生まれですか!
「往かず後家が何だか知らぬのだが何故か嫌な気持ちになる。そこで君に頼みがある」
「はぁ」
「私に女性らしさを教えてくれないか?」
「はあ?女性らしさって言っても私だって解りませんよ……大体なんで私なんですか!」
「迷惑は承知の上なんだが、君しか………君の事しか考えられないんだ」
教授は私の事を考えると胸がドキドキして切ない気持ちになるらしい。
心不全を起こす歳でも無かろうに。
「一緒にどんな女性が好かれるのか考えて欲しい……駄目か?」
「………解りました。手伝いますから上目遣いでこっち見ないで下さい」
「そうか!協力してくれるのか!!ならコレに着替えてくれ」
嬉しそうに紙袋を私に手渡してくる。
数分後私は協力することを後悔するとは思っていなかった。
「………スミマセンこの服装は何なんでしょうか?」
「よく似合っているぞ!」
「ありがとうございます………じゃなくてどう考えても変ですよね?バニーガールって!」
黒のハイレグのバニーガール。
むき出しの両脚には網タイツが完全装備で恥ずかしさが先行していた。
「女性らしく色気と可愛らしさを考慮したら、セーラー服とバニーガールになったのですが………二十歳過ぎのセーラー服は痛いとネットに書いてあったので君に怪我が有ってはいけないと思ってバニーにしてみた」
私の右手を取って教授の胸に持っていく。
「君の姿を見てこんなにドキドキするコレが女子力と言うものなのか?」
「違うから!」
「でもなウサギはな年の殆ど発情しているから子宝の神として扱われていたらしいぞ。つまり神事に使われていた可能性も否定出来ないのでは」
これだけ自信を持って言われるとそうかなって思えてくる。
「………だから君が………その潤んだ瞳が私を狂わせる」
教授の眼から逃れる事なんて出来ない。
「………なんで教授の顔が近付いてくるのですか?」
「私が近付いているのではない!君が近付いて………」
当然とばかりに唇が触れあう。
吐息は混じり合い。
離れる事が難しくなり、お臍の辺りにムズ痒いような寂しさに包まれもっと教授を肌で感じたかった。
「もっと女子力を教えてくれ」
教授の指は私の敏感な場所に指を立てて深く浅くあてがう。
彼女の与える心地よさが全身を包み私の瞼がユックリ落ちていく。
吐く息は荒くなって、耳元に伝わる声が甘く聴こえる。
この声の主が私なのか彼女なのか解らない。
このまま溶けて一つに成りたいと全身が語ってるみたいだ。
「あぁ………教授……怖いの………私………こわいの」
「恐い事なんて無い………私にしがみついて」
私は言われるがまま両腕を教授の背中に廻して抱き締める。
目の前に白い火花が散る。
腰から下がビクンと弾けると目の前が真っ白になる。
「………今の君はとってもいい顔をしてる。さぞ心地よかったのだろうな」
素直に認めたら終わってしまう。
「………解りません。もっと、もっと教えて下さい」
ボヤけた視界に写る教授の顔は悦んでいる様にも見えた。
「…………嘘つきにはお仕置きが必要だね」
「………教授ぅ……脱がないと………シワになっちゃう………」
「少し位皺になっても問題無い。汚れたら洗えば良いじゃないか」
唇は再度塞がれた。
いや今度は私から塞いだ。本音を聴かれない様に。
4月1日です。
エイプリルフールですので嘘をテーマにしたのですがよく解らないですね。
あはは。
年に一度だけ嘘をついてもいい日なのですが、実際普段本音を隠して生活してるのだからたまには本当の事言えよって毎度思います。
さて僕は、もうじきでなろうで書きはじめて二周年になります。
今後とも宜しくお願いいたします。