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神待ち少女

 駅前はばらつきはあるものの家族やカップルであふれている。

 その中で独りでいる私は端から見て浮いた存在なのだろう。

 ただそんな私から見ても、噴水の側で携帯片手に誰かを待つ少女は浮きまくっている。


 特に校則で決まっているわけでも無いのに休日に制服姿で人を待っている。こんな夕刻にだ。

 デートならお洒落くらいするはず。

 気付けば私は少女に声を掛けていた。


「誰かと待ち合わせ?………委員長だよね?」


 普段三つ編み眼鏡の地味っぽいイメージの彼女が眼鏡無しで髪を下ろしている。

 それに、制服のスカートからは普段見られない健康的な太ももを覗かせている。


「………この香り。委員長もこのコロン使ってるんだ」

「ええ」

「誰かと待ち合わせ?………もしかしてデート?」


 この時必要に眼を合わせない彼女が下唇を噛みながら持っていた携帯に力がこもったのを私は見逃さなかった。


「相手………来ないなら。遊ばない?これから」

「………でも」

「さっきから見てたけど誰も来ないじゃん」


 ちょっと強引だったけど委員長の手を握ると噴水の前から連れ出した。

 カラオケボックスに連れて中に入ると彼女の手を離した。


「何か訳ありっぽいけど言いたくなかったら別にいいよ」


 密室に二人きりってこともあり、彼女は椅子に座ると天井を見上げてから軽く眼を閉じた。


「………私の友達の話なんだけど軽蔑しないで聞いてくれる?」

「友達の話なんだよね?」


 こういう時は大概本人の話なんだけど敢えて横槍は入れなかった。


「………あの………ね。お父さんリストラになってね急にお金が入り用になったの………でね出会い系で助けを求めたら………助けてくれるって人がいて………」

「…………出会い系で何人くらいに助けて貰ったの?お友達」

「えっ。あっ!うん。………今日が初めてだったんだけど………待ち合わせ場所間違えたのかな………ずっと………ずっと………わたし」


 ポロポロと流れ落ちる彼女の泪を私は抱き締めて胸で受け止めた。


「大変だったね」


 彼女の頭を撫でながら抱き締める。

 暫くすると彼女の身体が私から放れる。柔らかな温かみが無くなり、もう少し彼女を抱いていたかった。


「………ありがとう。貴女のこと勘違いしてた。もっと恐い人かと思ってた」

「そりゃ無いよ委員長。私ってそんなに恐い?」

「うん。悪いけど悪名って言うか………黒い噂は絶えないわね」

「え~!どんなの?」


 まぁ昔から目付きが悪いからよく因縁つけられたりはしたけど、私は安穏に暮らしたいだけなのになぁ。


「でもありがとうね。私学校辞める決心出来たよ」

「なんで辞める必要あるの?友達の話なんだよね?」

「そう………だけど、違うの!だって私は授業料払えないし……」

「その友達の授業料の件と親父さんの仕事が決まれば辞めないですむ?」

「…………それはそうだけど………この時勢に無理よ」


 私はテーブルの上に札束を置いた。全部で諭吉50人。


「勘違いしないで!これは仕度金これで親父さんに再就職の準備をしてもらうのと委員長には友達の代わりに働いて貰うけどいい?」

「………働くって?」

「家政婦を探してたのよね。家でね………給料はあまり良いとは言えないけど学費を払うくらいは余裕で出来るよ……それに、私の知らない委員長の友人を雇うのは気が惹けるわ」


 私のしていることは、人として最低な行為。それは理解しているがどんなに汚い手を使っても彼女を近くに置きたかった。

 いえ………寧ろ彼女と深く繋がりたかったのは私自身。


「そのお金持ってても良いわよ、その変わりに今度の土日に家に来てよ」

「………えっ!困るよこんな大金無くしたりしたら………」

「信用と信頼の違い解るよね?私が委員長の信用リスクが低く信頼出来ると判断しただけ」

「でも………」

「私の人間観察眼ってそうそう外さないのよね」

「自画自賛?」

「そうかもね。だから失敗したら私を初めて騙した女に成るわね!二重の意味でね」


 その日はそののまま途中まで彼女を送ると早めの帰宅をして父に頼み事をした。


「一人私専属で家政婦を雇いたいの。候補は決まってるからお願い」


 私から父に頼み事をするのは小学校上がりたての年のクリスマス以来だった。

 そんな事もあり保護者からの承諾書と契約書をファイルから取り出すと「娘から頼まれて悪い気はしないな」と笑った。

 最近まともに会話すらしていなかったから父の笑顔は久しぶりな気がする。


 翌日の学校生活での私の周囲からの立場は変化は無い、触らぬ神になんとやらと目も合わせようとしない。

 だから私は机で突っ伏して惰眠を貪ることで周囲に壁を作る。

 その壁を容易に乗り越えてくる変わり者が出来た………委員長。

 今日は校則道理の膝下丈のスカートに髪を編んで眼鏡使用だ。まるで生徒手帳の見本みたいな格好である。


「良かったらお昼一緒にどう?」

「………飯?」

「呆れた!お昼まで寝てたの?」


 弁当箱を二つ抱えて私からの返事を待っている。


「私昼は学食かパンで弁当用意してない」

「ちゃんと用意してあるよ。お口に合うか分からないけど………」


 委員長の手作り。

 悪くない。

 アスパラ巻きに少し焦げた卵焼き…………不格好でお店に出せる物では決して無かったけど、気持ちが隠っていて美味しくて泪が溢れた。


「え!やだ何か変なの入ってた?」

「違うの………大丈夫だから……美味しいから…………うれしいから」

「ありがとうね、週末楽しみにしてるから」


 本当は私から聞くつもりだったのに彼女を選んで良かった。



 週末彼女を家に招くとお茶を用意する。

 戻ってみるとテーブルの上には白い封筒が二通あった。


「父から承諾書は貰ってあります。後はお金は受け取れないと言われました」

「そう、いつから来れる?」

「今日からでも大丈夫です」


 私は彼女に仕事内容と約束を取り付けた。


 ・家庭教師兼日常生活の補助


 それが彼女の仕事。


 ・主従関係で在っても友人として接する。


 これは取り決めでは無く私からの切なる願いなのだ。


 委員長は根が真面目なのか仕事を幾つもこなしながらも学業に手を抜く事は無かった。

 かくゆう私はいつも通りに登校して委員長に起こされるまで寝る生活を送っている。

 時たま意地の悪い教師から奇問を出題されるが私が答えを出すと苦虫を噛み締めた様な顔を見せる。

 それを見てからまたうたた寝を始める。


 家では家庭教師の委員長が勉強を教えてくれる。


「………委員長。そこの計算ミスってるよ」

「…………ほんとうだ!ねぇ質問なんだけど」


 家政婦の時の彼女は髪をうしろに束ねて少し短めのメイド服を特注で仕立てて着せた。

 当初は恥ずかしがっていたが一週間もしない内に馴れたみたいで今では家ではこの姿でいる事が殆どだ。


「なに?」

「貴女ってお勉強出来るのに授業態度はアレなの?」

「皆は今制約の中で生きているだろうけど、私の自由って学生時代だけの短い期間だけなんだよね」


 どうせその内政略結婚の道具で望まない結婚や出産を義務づけされるのだろう。

 だから今だけは好きに生きたいと思う。


「だから友達を作らないの?」

「………作らないんじゃないの!」

「なら好きな人とかいないの?」


 今日の委員長は饒舌だなぁ。


「………好きな人はいるけど」

「告白しないの?」

「この話おしまい!」


 私は逃げるように自室に向かった。

 あとから委員長が追いかけてくるが恥ずかしくてまともに見れなかった。


 翌日教室でいつものように惰眠を貪っていると、複数の女子が言い争っていた。


「委員長。最近付き合いわるいよ」

「最近アノ不良と付き合ってるって」

「何も知らないのに彼女を色眼鏡で見ないで!」


 どうやら委員長が責められてるようだ。

 私は彼女の前に立ち他の女子に相対する形を作っていた。


「委員長はなぁ!私のモノだ勝手に手を出すな!」


 感情に任せて口走ってしまい口に手を当てたが刻すでに遅し。

 クラスは黄色い歓声。

 当の委員長は私のワイシャツの裾を摘まんでクスンクスン泣いている。


「えっと…………」

「良かったね委員長」

「おめでとう」


 初めから茶番劇だったのかどうか分からないが、クラッカーがアチコチで炸裂する。


「委員長?」

「………うれしいよぅ」

「委員長の事は好きだけど付き合うとかは無いから!」


 周囲からブーイングが入るが知るか!!


「だって委員長と付き合ったら私は友達が居なくなるじゃん!」

「なら、私の友達を紹介するよ!みんな好い人ばかりだから大丈夫」


 その日から私と委員長はクラス公認になり私にも友人が少しずつ増えていった。



 最近では…………。


「最近友達付き合いが多すぎます!」


 文句を言う委員長を壁に追い詰めて唇を重ねる。

 あの時噴水の前に呼び出したのが私だと彼女は知らない。

 本気で好きになったのもカラオケでだ。


「愛してるよ委員長」






纏めがどうもねぇ。


キャラクター練習場なんだけど、不良っぽさが無い。委員長のキャラクターがブレブレ。


欠点は有るけどこの関係早めすぎたかなぁ。


では。

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