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ヤンデレ教授の話その2

「いやぁ、部屋にPCとベッドしか無いから恥ずかしくて……」

「え!そこなの?」


 彼女クーデレはワタシの部屋に入って直ぐに壁や天井を眺めながら言った。

 妻の写真が飾られているのは普通の事だろう。愛してるのだから。

 写真はB2全に引き伸ばしたのからチェキで撮ったものまで種類は様々で数は数えるのは面倒なくらい飾ってある。どれも素晴らしい出来だ。


「……デレデレさんが好きなのは解るけど……なんで殆どの写真は隠し撮りなんだ?」

「ワタシは自然な彼女デレデレの写真に価値があると信じてるから彼女の居る場所には防犯用と銘を打ってカメラを取り付けさせてもらったのだよあっはっは」

「……それって盗撮と言わないか?」

「盗撮なんて人聞きの悪い!彼女への溢れる愛の迸りだから危険は無いよ」

「……その愛情を少しはこっちにも向けてよ」


 ワタシは折り畳み式テーブルをベッドの下から取り出すと組み立てて、酒とつまみを並べた。


「ん?何か言った?」

「……いや気にするな」


 テーブルに無造作に並べた缶を適当に手を伸ばしてプルタブを開ける。

 カシュっと軽い音が室内に響く。


「河岸を変えたって事は研究室あそこでは話せない事よね」

「ここは大丈夫か?」


 PCの側に置いたメモリースティックをクーデレに渡すとiPodナノほどの大きさの箱を用意して延長コード・テレビアンテナのジャック・蛍光灯・置時計などに箱を接続する。それからベッド近くの角にハンカチ様の布を仕掛けた。


「……何ごと?」

「少し待って」


 PCを起動するとクーデレに目線を向けた。


「これで大丈夫よ?ただの盗撮と盗聴だから」

「盗聴盗撮って……」

「だから今ごろ偽の映像と音声でエンジョイしてるはずね」

「?」

「あの角にあるハンカチが薄型モニターになってるの あと箱は受信機でPCからのデータを盗撮機器に流すことで、こちらの音声を遮断してるの凄いでしょ!」

「なんの映像だ?」

「クーデレがワタシの尾てい骨をひたすら舐め回すやつ」

「……なっ!そんなの何処から?」

「ワタシが作った、かなりリアルだよ見る?」

「……あとでデータをくれ」


 ワタシの携帯にメールの着信があった。

 それをクーデレに見せた。


 《ヤンデレかわゆす♡(*≧з≦)》


「……なぁこれって」

「メールもそうだが、装置の設置は妻がやったのだが素人丸出しで恥ずかしい」

「恥ずかしがる場所がおかしい」


 彼女は呆れたのかそれ以上口にすることは無かった。

 変わりにノートパソコンに渡したメモリースティックを装着すると内容を確認する。


「……これは」

「ご存じ遺伝地図のシミュレートした結果」

「こいつは驚いた、全部一人でやったのか?」


 研究者の悪いところは採算を度外視した事を興味本意だけで初めてレポートが出来るまで止められないってこと。

 興味猫を殺すと言うけど、ワタシもいつかは興味に喰われるのかも……いやワタシの躰はどのくらい残ってるのだろうか。


「半端なレポートで悪い……素人の浅知恵と笑ってくれても構わない」

「いや、専門機材はどうした?」

機械工学うちのラボのPCを使った……結果が出るのに一ヶ月掛かったよ」


 あははと笑うワタシを余所に、彼女クーデレは肩を落としていた。


貴女おまえなぁ生物学ラボがどれだけ時間掛けて……」

「あくまでも理論上の結果に過ぎないじゃないか」

「だけど肝細胞の増殖には成功してるよな」

貴女クーデレの本がなければ成功はしなかったよ」


 ワタシの出した手をクーデレは両手で包む様に握り返した。

 その時の彼女の瞳が潤んでいた様に見えた。


「しかし、これだけの事が実現したら義手義足も今よりずっと良くなるな」

「そればかりじゃない、寝たきりの人も跳んだり出来るはずさ」

「それは凄いな」


 夢のようだがそれも可能な話だろうが、比例して一般化されるまでは軍事転用されるのは避けられないのだろう。戦争等で傷付いた兵士の治療なら良いけど死なない兵士としての兵器転用は今は目を瞑りたい。


「そこまでやっておきながら、やる事って残ってるのか?」

「こればっかりはワタシには無理だからお願いしたい」




 梯子を途中から切って別の場所に溶接して欲しい。



「まさかそれって……」


 それはクーデレが正しく理解したと判断することができた。

 つまりは遺伝子組み換えで他の臓器を作ることをお願いしたのにほかならなかった。


「賢い子は好きだよ、だからクーデレは大好きさぁ」

「他ならぬ貴女だから受けるけど、こればかりは時間を掛けて慎重になるべき」


 そんなこと言われなくても分かってる、でも……。


「肝臓がある間に作りたい、人工皮膚も脳制御プログラムも完成はした、ただ……」

「……」

「遺伝地図のシミュでも分かっていたが敢えて避けた項目がある」


 クーデレは再度レポートを見直す。

 部屋には呑みに来たはずが研究者の発表会になってしまった。

 これはこれで良かったのだと思う。


 子供の頃に描いたロボットを思い浮かべていた……それはどんな色をしていただろうか。ワタシは―――。



「……そうね重要な欠点で、このままでは間違いなく失敗する」







第二話です。


問題点が解ったって方はコッソリ教えて下さい。

妄想科学だから現実とリンクはあまりしてないと思います。


次回も一緒にレプリカントを作りましょう。


では。

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