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ヤンデレ教授のはなし…その1

 リアルドールを作るのは造作も無い。

 場所パーツ毎に素材を変えれば良いだけだ。

 皮膚なら人工皮膚とか張り合わせれば良い。

 しかし人体に装着となると話は変わる。


 そうだろ?

 考えてもみたまえ、肉体は人が造った物だが人工物ではない!

 口で綺麗事を列べても、身体は素直だ!

 嫌なら拒絶するし、酷ければ死ぬことさえある。

 文字通り『死ぬほど嫌』なのだろう。


 前回助手兼妻(自称)のリアルドールを作製して気を良くしたワタシは、医学部協力のもと彼女デレデレの肝細胞を基に培養を重ねて組織を増やすことに成功したのだ。


 30ほどのシャーレにタイプの違う培養液を入れて組織を入れて蓋をした。


 三日間で変化は目視出来るほどだった。


「B3・D5・E1・F2が予想以上の成果だな」


 四つのシャーレには人の約1/12サイズの肝臓が生きていた。


「B3・F2を残して後は……」


 残りを纏めてクーラーBOXに詰めて外に出る。

 気温はそれほど温かく無いのは助かる、なにせ生物なまものを扱ってるからな鮮度は命だ!

 それでも5分と掛からない距離に目的地があるのは助かる。


「おーい、機材を使わせろ!」


 このラボの主に向けて誠心誠意の言葉で頼んだ。


「……ん?貴女ヤンデレか……不躾にも程があるぞ」

「つれない事を言うなよなぁ?……一寸でいいからさぁ」


 ここは生物学のラボ。

 ワタシはクーラーBOXをポンと叩いて中を見せる。


「……シャーレにレバ刺って色気がねぇなぁ」

「バカ良く見ろ」


 主はクーラーBOXに近寄りシャーレを手に持つと眺める。

 主の眉が僅かに動いた……これは良いものを見たと。

 なに…このおんな何が起きても面倒なのか眉一つ動かさないのだから人間を辞めた口だと思っていたくらいだ。


「機材を貸さない事は無いが……二つばかり聞いておきたい」

「答えられる範囲でならな」


 ワタシも専門外の事をやってる自覚はあるし、聞かれて説明出来ない部分もあるから彼女クーデレの協力が得られるのは正直助かる。


「……貴女きみは神にでもなるのかい?」

「そんなものには興味は無いよ……ただ泪を流してるより血を流してる方がマシな時もあるのさ」

「……たーく狂人バカのお守りは楽じゃないからね」


 にっしっしと、クーデレは懐からシガレットケースを取りだし白い筒状の物をくわえてクーラーボックスを掴んで立ち上がる。

 その姿は釣り堀に来たオッサンのようだった。


「なによ?」

「……ん、ここは禁煙じゃないのか?」

「バカねココアシガレットよ?」

「なんだいそりゃ」

「あきれた……こっちに来なさい」


 クーデレは手招きしてワタシを呼んできた、正直あまりコイツの近くには近付きたく無い……だってデカいんだもん何もかもさ。

 あまり近付きたく無いとはいえそうそう邪険にすると器材を借りたいのは此方だし……嫌われたく無いっーかさ。

 近付いた瞬間ワタシの準備してない口には、彼女の舌から押し出されたココアシガレットが押し込まれてきた。


「……」

「……」


 シガレットケースから出して渡せばいいものを……貴女アイツはまるでキ、キ、キスをするかのようにワタシの顎を……くいっとな……ばかーっ!


 恥ずかしいの禁止!


 だってココアシガレットって5cmも満たないんだよ?

 それを、口移しなんて何処のハリウッド女優よ!……あぁデレデレごめんなさい。ワタシ悪いお嫁さんです。


「今回どこまでの完成を目標にしてるのか?」

「あぁヒトゲノム……そういきたいけど……」


 ワタシの趣味の範疇を越えてるのは解ってる。

 ゲノムプロジェクトになったら本当に大掛かりな実験になる。つまりは金が掛かるって話。

 だから今回の目標は……。


「遺伝地図と物理的地図とQTL地図のどれかは作りたいなって……駄目かな?」


 ワタシは貴女クーデレの顔をまともに見ることが出来なかった。まぁ無理もないって解るでしょ?

 ワタシが地図を欲しがってる以上ゲノムプロジェクトも視野に入れてるって事くらい読まれてる。彼女クーデレはそんな女だ。


「……これは発表するのか?」


 彼女クーデレの声音はいつになく真剣だった。

 口元は少し開いていて……まるで玩具を目にした子供の様に瞳は輝き笑いを堪えているようにも見えた。


「それに、今回は研究試料作りでは無い……」

「じゃあ何だって言うんだ?これだけの材料と器材で何を作るつもりだ?答えろヤンデレ!」

「……解ったよ、だけど笑うなよな……絶対!」

「年末の二十四時間笑ってはいけないを見てもピクリともしなかった私を信じろ」


 学生寮に住んでいた時もそうだった。

 あの時のお尻の痛みは決して忘れない!ワタシは!!


「尻を押さえてどうした?撫でるか?」

「ケッコウ!」


 ワタシは事実を基に大量な脚色を加えて話した。

 それを彼女は眉ひとつ動かす事は無かった。(まぁいつもと変化は無いのだが)


「つまりは生きたバービーが欲しかったんだな?」

「……誰もそんなこ……と……」

「欲しかったよな!」

「……」

「な!」




「……はい」


「よし!……しかしだな、完成してもリアルドールと遜色無いぞ?」


 胸からワインすら出ないし……と追加されていたが彼女の名誉の為に伏せておく。

 ワタシはパーティードールや生バービーが欲しいんじゃない!


「チルド保存で良いのか?」


 疲れがピークすぎてボーッとしてたらしい。


「だからチルドで良いのかレバ刺」

「それで良いけど……研究材料をレバ刺言うな!」


 クーラーボックスからシャーレを冷蔵庫に移しかえる彼女の後ろ姿を眺める……いい尻だ。


「シャーレの数が合わないけど良いのか?」

「あぁ二つは別枠だ」

「じゃあこれから暇よね?付き合いなさい」


 この上から目線が鼻につくが、彼女ならそのほうが自然にみえるから腹を立てる前に許せてしまう。


「何をさせる気よ!アタシに!」


 クーデレは片手でお猪口を作る感じでクイッと動かした。リーマンの『今夜はどう?』ってやつだ。


「わかったわよ……全く……で、何処でやるの?」

「オレと貴女ヤンデレとなら決まってるだろ?」


 ワタシの家でワタシの奢りで呑ませろと言ってるのだ。やはりこの女は最低だ!


「なんで何時もワタシの家なのよ!」

「無理だろ、大学二年の夏……」

「……言わなくもいい!」


 こいつと知り合って初めて飲みに行ったら『うちでは出せるお酒が無いのですよ、お嬢ちゃん』などと言われて……それ以来外で呑めないのよ。


「まだあそこに住んでるの?」

「……引っ越したよ」

「まだ教えてもらってませんけど?」

「貴女に教えたらたかるつもりでしょどうせ」

「人聞きの悪い、竹馬の友の祝いに駆けつける深い友情じゃないか」

「……それを『集る』って言うのよ」

「誰がそんなことを?」

「金田一先生が仰ってましたわよ」


 どちらとも分からない笑い声は遠くの空へ消えていった。

お久しぶりです。


暫く続きますが、これは科学小説ではありません。

妄想科学小説です。

『ここはこうじゃねぇだろ』とかツッコミはあるとは思いますが、まぁ寛大な気持ちでお付き合い下さい。


では。

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