20話記念 妹企画です。
楠 奏絵さんの要望で妹属性でやってみました。
今回は文字数がいつもの倍の3000です。
うん。安定のSS!
現代人は機械に管理された社会で生きている。
それはGPS・Nシステム・パソコン・携帯等様々多種多様である。
私はその日スマホへ機種変更をしたが何かがオカシイ……何がと言われてもスマホ自体使うのが初めてだから解らないのだけど、画面に女の子が泳いでいた。
女の子はタンクトップにショートパンツで健康的で魅力的な四肢を惜し気もなく晒している。
最初はスクリーンセーバみたいな物かと思っていたが時々画面から消えたりしたが、戻る度に言葉を覚えて帰ってくる。
「……学習機能でもついてるのかしら?」
《おねえちゃん》
画面の少女はいつの間にか吹き出しを使いだして喋る事を覚えた。
「おねえちゃんって私?」
《おねえちゃん》
「私に貴女の名前教えて?」
《……なまえ?》
画面の中でバク転する感じで一回転すると画面から消える。
「おーい!」
返答はない、当然の結果だ。
暫く待つと今度は音声がスピーカーから流れてきた。
『おねえちゃん おねえちゃん わたし いもうと なまえ いもうと』
「妹?」
今まで自己紹介で妹と名乗るのを聞いたこと無かったせいか違和感がある。
でも、本人が望むのだから仕方無い。
『わたし、おねえちゃんが好き』
「妹ちゃんは良い子だね お姉ちゃんも好きだよ」
ちょっと変わってはいるけど、この時の私は機種変更して良かったと思っていた。
言葉を話すようになってから妹の学習はスポンジが水を吸う様に記憶していった。
『お姉ちゃん お金ってなあに?』
「この世界で生きていく為のアイテムかな」
『お姉ちゃんはお金沢山だと嬉しい?』
「沢山あったら妹ちゃんと遊べるのにね」
『お姉ちゃんといっぱい遊びたい!』
「そうね沢山遊ぼうね」
ただそれに比例して不思議な事がおきていく、それはおサイフケータイ機能やWeb上のお金が減らなく成っていったり、スマホの支払い請求が無かったりだったのだ。
残金を確認すると1の後に10個の0が入っていた。
「……妹ちゃんこれどういう事なの?」
『お姉ちゃんどうしたのかな』
画面の中で妹は両手でピースしながらニコニコ笑っていた、まるで誉められるのを待っている様に。
「このお金どうしたの?」
『沢山お金あれば遊んでくれるんでしょ 早く遊ぼうよ』
「ごめん、今そんな気分じゃ無いの」
私はテレビを点けてニュースを探す……だけどお金の件の話題は無かった。
『お姉ちゃんどうしたの?』
「妹ちゃん……お金どこから持ってきたのかな」
『私はお金の事やこの国の事を勉強したよ お姉ちゃんが喜ぶ事したいから だからした お姉ちゃんの権利を護には足りないくらい』
生まれて間もない彼女は、とても素直だった……画面からでも解るくらい澄んだ瞳で私を見つめている。
彼女は私の事が全てだと語る。
彼女は私を好きだと言う。
彼女は完璧じゃない私をまるで神のように崇める。
「妹ちゃん……お金……元に戻る?」
『無理 始めからお姉ちゃんのだから』
「……わたしの?」
『お金だけじゃないよ』
「……スマホから出てきて説明してよ! なんでこんなことするのか……」
『…………わかったけど後悔しないでね……お姉ちゃん』
その日から私のスマホの画面には妹がいなくなっていた。
数日間は静かに暮らせたが少し寂しかった、妹の存在は何であれ生活に彩をくれた。
彼女が不在のスマホでこのお金の出所を追いかけたが手懸かりは無かった……まるでそんな事は無いと逆に諭される様に優しい世界が広がっている。
連日テレビも点けっぱなしにしてニュース番組やワイドショーを見るが大きな犯罪も無い平和だった。
私だけ過去に取り残したように時間だけ過ぎていった。
ピーンポーン
玄関のチャイムが鳴る。
私は自分を抱く様にしながら身体を震わせた。
「……警察かしら」
だとしたら困る……でも、どうしたら。
咄嗟の行動はクローゼットに隠れてチャイムが鳴りやむのを待つしかなさそうだ。
ピーンポーン
ピーンポーン
ピーンポーン
チャイムは暫く鳴るが直ぐに治まった、そう今度はカギが開けられる音がしたからだ。
静かな室内にガチャリとカギの空く音とチェーンロックで中途半端にしか開かない扉の音が続いて私は悲鳴を抑えるのに苦労した。
噛み合わない歯はカスタネットのようにカチカチと音立てて止まらない。
遠くでバチンと何かが切れる音がした、私の部屋はワンルームだ中に入られたら終わり。
カチカチ鳴る音が外に漏れないように手で口を押さえる。
誰かが入ってくる。
怖い
怖い
怖い
スマホに変えたから?
私には文不相応な品物だった?
ガチャ
クローゼットが開けられた。
私は目の前の誰かに見つかってしまった。
「お姉ちゃん見つけた♪」
オネエチャン ミツケタ……って何だろう?
「お姉ちゃん♪遊ぼうよ」
アナタハ ダレ ?
目の前の何かに抱きつかれた逃げようにも腰から下が力が入らない。
「やっとお姉ちゃんに会えたの お姉ちゃん柔らかくていい匂いするの」
深呼吸する。
「……妹ちゃん?」
「うん お姉ちゃん」
妹ちゃんと名乗る女性は私にクローゼットから出てくるように促し抱き上げようとする。
ただ予想外だったのは彼女の身長。
私の身長より頭一つは大きい。
「お姉ちゃん誰とかくれんぼしてたの?」
「……貴女はいったい 妹ちゃんならスマホからどこに……」
「それは答えられないけど、お姉ちゃんを襲う存在は地球上ではいないわよ 襲うどころか罰することも出来ないし近付く事すら無理ね」
「なにを……したの……?」
私の机からペンを持ち上げるとペン回しを始める。クルクル中指の回りを回している。
「ねえお姉ちゃん人工衛星ってどのくらい上がってると思う?」
クルクルクルクルとペンは加速してゆく。
「全体の60%は掌握出来たわよ……今やGPSの全ての権限はお姉ちゃんにあるの……ふふふ」
GPSって携帯の位置情報とかの?
それを、掌握してどうなるの?
「………それってどんなこと?」
「お姉ちゃんって優しいね……でもね、その優しさは私にだけ頂戴」
妹ちゃんはそれだけ伝えると満足してニッコリ笑うそれは見る人には無垢な笑顔に映るのだろう。
「今や優しいお姉ちゃんは陸上・海上・空の三世界の支配者……いいえ統治者なんですもの 私嬉しくて仕方無いわ」
「……お願い……やめて……私そんなの……うぅぅ」
「お姉ちゃん勘違いしないでね?」
「かんちが……い?」
「そう、お姉ちゃんがこの世界を統治すれば……私は幸せになれるのよ!だってお姉ちゃんと結婚を許してくれる世界が無いんだもん」
結婚?
「どう言うことかな?」
「だって好きな人とは結婚するんだよね!だから私調べたよ お姉ちゃんが好きだから……お姉ちゃんも好きって言ってくれた」
そうか、妹ちゃんは私の事が大好きなんだ。
「だから、真っ先にお姉ちゃんの存在を無くした……だからお姉ちゃんは絶対無二の存在になったでも、でもそれじゃダメだった……」
「えっ?」
「お姉ちゃんの名に於いて飢えに苦しむ者を救い戦乱や混乱を起こす考えを潰した」
「まって…」
「世界は既にお姉ちゃんの為に動いているわ……其所には国境も人種の壁も無く世界中の人々はお姉ちゃんに感謝して崇め奉っている……そしてお姉ちゃんの側に居られるのは筆頭妹の私だけなの」
ごめん。
話が壮大すぎてよく分からなくなった。
「妹ちゃん……私の意思は?」
「私だけに向けてくれればいいのですよ……お姉ちゃん」
全世界の妹達へ、妹ちゃんがヤンデレを拗らせました。
家に居ながら世界征服ってこんな感じかな?