年の離れた姉。
姉妹のジャンルですが好きの形を表現する練習で使いました。
私には14才離れた姉がいる。
だから私の両親は高齢だった。
授業参観や学校行事はいつも両親が来るのが恥ずかしくて仕方なかった。
だって友達の両親は、ずっと若くて綺麗で格好良かったから羨ましくて……悔しかった。
学校行事がある度に姉に代わりに来てくれないかと泣いて頼んだ。
その度に姉は眉毛を八の字にして口元だけの笑顔をみせる、それは罪悪感を覚えるものの私には姉の魅力として映っていた。
私の高校を入学と同時に父は倒れて寝たきりになり母と姉は介護で忙しい毎日を送っていた。
ただ私は学校に通い、姉は学費や生活費を稼ぐ為に働いてくれた。
秋には母が介護疲れで父と同じく床に伏せた。
そして両親は春を待たずに仲良く不帰の客となった。
父と母の葬儀は私たち姉妹で行ったが、参列者は誰も来ない事を姉は私を抱き締めながら『ごめんね』と漏らした。
暫くは静な家の中だった。
「おねえちゃん 家の中片付けようか」
「そうだね遺品も整理しなきゃね」
やはり姉は八の字眉に口元だけの笑みを見せていた。
たとえ故人の物でも遺族には不要なのもあるので整理はする。
遺産相続とか法的なの物は弁護士を雇って短時間で終わらせる事が出来た。
「大きな遺産も土地と家だけだったからね 借金だけは無くて良かったよ本当」
「おねえちゃんお疲れ様です」
姉の前にお茶を置くとすぐにズズッと一気に流し込んだ。
「おかわりは?」
急須を片手に聞く。
「ありがとう今はいいよ」
そう言うと姉は深呼吸をしてるように見えた。
小さく『よし!』と聞こえた気がする。
「あのね 私たち姉妹じゃないんだ 本当はね」
姉の言っている意味は分からなかった。
「突然で驚いてるとは思うけど貴女が両親だと思ってた人達は両親じゃないんだよ」
「……おねえちゃん冗談きついよ エイプリルフールは先月だよ」
そう言いながらも必死で答えを見つけようとしたが思考は止まったまま動き出さない。
私の目の前にいつの間にか合った『母子健康手帳』と都こんぶの箱くらいの木の箱だった。
何気なく手帳を開くと最初のページには姉の名前と生年月日が記載されていた。
そして15週から始まった内容の最後には女児を出産したと記されていた。
「………おねえちゃん結婚してたの?」
「出産した日付を見て」
私は再度日付に注目した。
嘘だ。
何かの間違いか偶然。
「私の生年月日と一緒って……」
「……黙っててごめんなさい」
姉は頭を下げていた。
「騙すつもりは無かったんだよ」
そのあと姉はゆっくりと語ってはくれた。
姉が私を産んだのは中学卒業間際だった。
相手は同じクラスの子で興味本位だったそうで、それは男子の話で姉は真剣に思っていたと。
不安を抱えたままで学校生活を送っていたが、男子はのらりくらりと言葉を避けてやがて学校に来なくなってしまった。
そしてもう引き戻す事も出来ないくらいお腹が大きくなって始めて学校は姉だけ処分を決定した。
姉は産んだ子を両親に預けて親戚の家に住んで夜間中学と通信制高校を卒業して実家に戻ったのだ。
戻った先で両親から『母親だと名乗るな』ときつく言われた。
学校行事や誕生日を向かえる度に『私は母親だ』と何度叫びたかったか。
「おねえちゃんの事を今はお母さんとは呼べない」
姉は口を閉ざしたまま頭を垂れた。
「だけどおねえちゃんの事を大好きなのは変わらないから……」
私は姉の胸に飛び込んだ。
「……今は無理だけどいつかはお母さんって呼べるから……待って欲しい」
姉はただ『ありがとう』と繰り返していた。
こんな姉妹(?)の愛情も悪くは無いかなって。
百合か?と問われたら………。
愛はあるよね。
としか答えようが無い。
このテーマはもう少し練ってから何処かの作品に組み込みたいですね。