娘の友達。
デレデレとクーデレです。
タイトルに偽りありですがねえ。
「こんにちは」
玄関で声がする。
ウキウキわくわくして足取りが軽くなるが、それを相手に知られるのは悔しい。
「変かな」
姿見で髪形をいじる。
咳払いをしてから深呼吸して玄関まで冷静である風を出して行く。
「いらっしゃいクーデレちゃん」
「デレデレさん今日は宜しくお願いします」
クーデレちゃんが家に来たのは2ヶ月前でした。
最初は細くて長身な宝塚の男役みたいな綺麗な人だから彼氏だと思ったんです。
「ねえ ヤンデレちゃん格好いい子だけどお母さんに紹介してよ」
「格好いいでしょ 私のなんだよ」
「えっと クラスメイトのクーデレです」
娘の彼氏に見とれてたなんてバレたら大変!
「クーデレちゃんモデルとかやってるの?」
「やってませんが」
うそ!モデルじゃないのに格好いいなんてズルい!
「そうなの?じゃあヤンデレとはいつからの?」
「……まだね。」
そ、そうよね。 せめて娘の恋の手伝いくらいはしなきゃ。
「ちょっと待ってね いいもの持ってくる」
トントントンとキッチンへ行くと冷蔵庫からケーキを取り出して切り分ける。
今日は自信作のヨーグルトクリームのフルーツケーキ。
紅茶はレディグレー。
ちょっとフルーツがうるさいかなって思うけど…カロリーが抑えたケーキなんだし紅茶も砂糖無しでも甘い方が良いと思う。
クーデレちゃんはフレーバーティーとか大丈夫かな。
「おまたせ お母さんの自信作」
「わー お母さんのケーキ大好き」
「クーデレちゃんも良かったらどうぞ お口に合えば良いのだけど」
ただケーキを食べてるだけなのにクーデレちゃんって格好いい。
「………美味しい」
「クーデレちゃんどう?」
「凄く美味しいです 料理上手なんですね」
「クーデレちゃんは料理は?」
「……得意じゃないから 」
これはチャンス?
「良かったら料理何かやってみる?」
「お母さんクーデレちゃんに迷惑だから」
「ぜひ教えてくれますか?」
よっしゃ!私ナイス!!
「じゃあ月水金は教室やってるけど それ以外の曜日で暫くこれそうなのってある?」
「木曜日と土曜日でも良いですか?」
「良いわよ。何かやりたい事ってある?作りたいとか食べたいとか。」
「お弁当のおかずやデザートが作りたいけど 月謝は幾らに?」
「娘のお友達からお金は取れないけど 秘密にしてね」
そんな訳で娘の友達に料理を教える事になった。
「デレデレさん宜しくお願いします」
「今日はアスパラのベーコン巻きとヨーグルトケーキにしましょう」
「宜しくお願いします」
アスパラを洗ってるクーデレちゃん様になるけど……あれ?
「……痛」
「大丈夫 クーデレちゃん見せて」
人指し指から血が出ていた。
咄嗟の判断で傷ついた指を私は口に入れていた。
「………デレデレさ…ん」
「もう少し……こうしてて」
今、クーデレちゃんはどんな顔してるだろう?
今、私はどんなふうに見られてるのだろう?
恥ずかしさを隠そうとポケットから絆創膏を出すと傷口に貼り付けた。
「……ありがとうございます」
「クーデレちゃんは器用そうなのに不器用なんですね」
可愛い人だな………でも護ってあげたい人。
「すみません」
「クーデレちゃんはもっと包丁に馴れなきゃ それよりも私が持たなくても良い生活にしちゃうって手もあるけど?」
クーデレちゃんにはまだ早かったかな。
「デレデレさん 我慢出来ません」
クーデレちゃんの顔が近い……潤んだ瞳が綺麗。
「……クーデレ……」
えっ……キスしてる……柔らかいな。
体つきも柔らかくて、甘い香りがする。
もしかしなくても。
「好きです デレデレさん」
「ちょ、ちょっと待って あなた女の子?」
「そうですけど 気付かなかったんですか?」
「ごめんね」
本当に悪かったと思う。
「改めて聞くけど 好きですデレデレさん」
「私 オバサンだよ?子持ちだし」
「だから? ヤンデレが居なければ出会えなかった」
どうしよう……ドキドキが……鎮まれ鼓動。
待ってる……何か言わなきゃ……。
「どうしょう 年甲斐も無くドキドキしてる」
「それが私の為のドキドキなら嬉しいよ」
歳上なのにリード出来ない。
こんなにもキス弱いなんて知らない。
私……堕ちちゃう!
気付くとクーデレちゃんの胸の中で抱き止められていた。
このドキドキは私の?それともクーデレちゃんの?ドキドキがシンクロしてるの?
「デレデレさん ヤンデレになんて話そうか」
「後で考えましょ? 今は……」
私は今日何度目かの口付けを交わした。
無理ありな設定も百合では普通にある。
女子高百合より共学百合に萌える。