やんでれせんぱい。
会社員ヤンデレと新入社員のデレデレ。
彼女の口から吐き出された煙はゆっくり空に消えていった。
私がこの会社に入って半年間ずっと気にかけてくれたヤンデレ先輩。
彼女との時間を増やすために吸い始めたタバコ。
いつも美味しいとは思わないけど、今日は特に苦かった。
「先輩。最近妙な噂を…」
「うわさ?」
私は噂は事実ではないと彼女の口から聞きたかった。
「…総務のツンデレ?それとも、庶務のメンヘラ?経理のツンツン?秘書のクーデレ?それとも…モトヤン課長の奥さん?」
確かに噂で聴いた名前だけど本人から名前が出ると胸が痛い。
「安心して、課長の奥さん以外全部嘘だから…。」
「………ヤンデレ先輩。」
彼女はタバコを再度吸い込むとそのまま私に口付けをしてきた。私の口内に彼女の舌が入る度タバコの煙とヤニの臭いが充満して苦くて涙がでた。
――――課長の奥さんとの関係は事実って事じゃない!…安心出来る処はどこにも無いじゃない!
「な、なんで……?」
彼女は灰皿にタバコを消す。
「課長にバレたの…。」
私の胸はざわついたけど聞かない方がもっと辛いのだろう。
「……初めは課長から誘ってきたのにね。」
モトヤン課長はヤンデレ先輩に『同じ女性だから妻の話を聞いて欲しい』と頼んだのだが、奥さんの相談事は浮気をしてると疑われているって内容だった。
しかし、奥さんの相談を聴くうちに関係は深まり……課長の疑いの元は事実になった。
ただ課長の予想すらしてない相手だったのだろう。
切っ掛けはどうあれ課長は自分の妻に浮気相手を紹介したのだから、バレた時の心中は面白く無かったに違いない。
「……事実を聞いてどう?」
「サイテー!」
私は先輩を床に押し倒した。
パイプ椅子が幾つか音を立てて弾け飛ぶ。
「最低なワタシをどうするつもり?」
「………くっ!」
先輩のシャツを掴むと乱暴に引っ張ると近くでカチンカチンと音がした。ボタンが飛んだのだろう。
「先輩にとって私は何だったんですか?」
「…………都合の良い玩具?」
「くっ!」
ヤンデレ先輩の口を塞ぎ力を込めて胸を揉む。
「……先輩はヤニ臭いんですよ!」
「うん。……もっと酷いこと言って。」
私は獣みたいに先輩の胸に喰らいつく。
「いい………ワタシをもっと!……詰って!辱しめて!……罰して!」
「変態!淫売!」
「………もっと!」
「……………でも、でも好きなんです。先輩。」
「ん。」
ヤンデレ先輩は優しく私の頭を撫でてくれた。
そして、去り際に『もう、変な人に捕まるなよ。』と言った。その背中は小さく寂しそうだった。
次の日からは先輩に会っていない。
無断欠勤だそうだ。
課長の奥さんが行方不明と聴いたのも丁度この頃だったのだろう。
そして、課長の転勤が急遽決まった。名目上出向となっているが左遷だと噂されている。
そして私は今日も喫煙所であまり好きではないタバコの煙を吹かしていた。
「―――ここいいですか?デレデレ先輩♪」
彼女は隣に座るとタバコに火を点ける。
しかし彼女もどうやらタバコは苦手らしく、煙で噎せていた。盛大に咳き込んでいるその姿が、あの時の自分に重なった。
「あのさ、二人で禁煙始めませんか?」
関係性を変える事で思考をかえる。
設定は馴染みだから楽だけど、キャラが違うね。
ごめんなさい。