白の少女と脱出
「俺もそうしたいんだけどよ・・・」
しかし見渡せばあるのは汚く積み上げられた遊具以外には白で塗りつぶされた空間しかなく、扉や穴など外に出られる場所はなく落胆するばかりだ。
「ちょっと、こっちに来てくれますか?」
シロガミは俺の手を引くと遊具の山に向かって歩き出した。
「おい、その遊具にはたどり着かな・・・」
シロガミは俺の声に反応することなくその場所に行くが、一分ほど歩くと距離がどんどん近づき辿り着く。
「さっきの場所はね、私が付いていないと距離が変わらないまま辿り着くことはないんだ」
遊具の山は俺の身長をとおに越して100メートルは下らないだろう、シロガミは遊具に触れると亀裂が走り粉々に砕け散り雪粒のくらいの大きさになり消えていってしまった。
「「ワシらの遊具がぁぁぁぁあああ!!!」
りんごが2個は余裕に入りそうな口に鼓膜が破れそうな大声で叫びだすと体育座りから仰向けに倒れる。
「また作ってあげるから」
「シロガミが一人で作れ上げたのか!?」
今はもう跡形もなく砕け散った遊具だがこれを一人で作るとなるととてつもなく時間と労力がかかるはずだ。
この子は一体何者なんだ?
創成者にしては規模がデカすぎる、このレベルじゃ普通にAランクは確実のはず。
俺は考え事をしていると遊具のあった場所に埋もれていて気づかなかったが、ダンボール箱くらいの大きさのテレビのような形をしたものが不自然に空中に浮いていた。
「このくらいのものなら5分あったら作れるよ」
なんてことはない口調で喋り、空に手をかざすと真っ白で無機質の椅子が二つ現れる。
「とにかく座って?いろいろ話したいこともあるし」
椅子に座るとシロガミも座ると話し出す。
「そこにあるのは私たちはソコアル君って呼んでる、私がここにいるときから取り扱い説明書といっしょにずっとあるけど剣で切れないし、ダンプカーを落としても壊れないんだよね」
名前適当過ぎだろシロガミなんて見たまんまだし、脱出に繋がるものを壊そうとすんなよと心の中で突っ込む。
またもや空中から突如、綺麗にまとめられた紙が手の上に落ちてきて掴むと紙を広げ目を通して見た。
「そこに書いてるのを大雑把に言うと、魔力を込めるとここから出れますよって書いてあるんだけど。
私の魔力じゃあ出力が全然足りなくて」
「そこで俺を呼んだってわけか」
俺たちの世界は魔力が欠かせないもので、電気、火、水などを操ることや、シロガミのようにものを無から有に作ることも可能だ。
シロガミは規模が違いすぎるが。
日常で使うことや狩猟でモンスターを捕獲、討伐などに使う武器、魔力を込めば様々なものに使える魔石を取るため洞窟に行っての発掘や古代遺跡の調査などに使う抗具など、魔力はなくてはならないものだ。
「私は一応ここから出れるんだけど、意識だけ貴方たちの世界に行けて体はこっちの世界に残るから」
モニターみたいなものか。
確かに映画を見ていて、見るだけではなく実際に触れてみたい、喋ってみたいと感じるようにシロガミも見るだけでは満足できないというわけか。
「私はここから出て、いろんなものを経験してみたい!学校や狩猟、トレジャーハント、料理もしてみたいし」
「「わしらも連れって行ってはくれまいだろうか、古谷殿」」
いつの間にか跪いて顔をこっちを見ていた運系と快慶は何一つずれぬ声を揃えて呼びかけてきた。
その表情は少しだけ柔らかくなったような気がする、表情が変わったといえど般若と閻魔が睨んで見えるのは多分、気のせいだろう。
「任せとけ」
椅子から立ち上がりソコアル君と向き合い上部に手を置き瞳を閉じる。
「やれるかわかんないけど、行くぞっ!」
力をいれ、ソコアル君にありったけの魔力を込る。するとソコアル君からピキピキとヒビが入る音がし、さらに魔力を注ぎ込める。
亀裂がどんどん大きくなり周りに不快な機械音、黒板を爪で引っ掻いたような音が鳴り始めるとソコアル君からひび割れた部分か黒い光漏れ出す。
「これ、大丈夫なんだろうなぁ!」
「わ、わかんない。こんなこと初めてでっ!?」
まさに壊れたテレビのように割れた画面から黒い文字が現れかすかに見える。
「いっテらっシャい」
文字が映ると白い画面に戻ると、限界が来たのかソコアル君が振動し始めると次の瞬間。
そこにあるのはがしゃんっと音を立て落ちたボロボロのガラクタと二人が座っていた真っ白な椅子が残っただけで他の四人はまるでいなかったかのように忽然といなくなっていった。