結末
デジャブじゃない。
これは今朝見た夢と同じだ。
行きつけの隠れ家的なバーに一人で座っている。これはあまり驚くことではない、仕事帰りにこのカウンターにいるのは日常茶飯的なことだ。
そう、一人の女性が横に座るのだ。これはめったにない、いや、めったにもない。
そして言う、
「同じものを」
俺が飲んでいるのは何だ。そんなことはどうでも良い。
そして彼女が言う。
「ひとりで寂しいわね。私の寂しさにも付き合ってよ」
これは期待せずにはいられない。男なら誰だってそうだ、結局はそうだ。
夢の中では何と言ったっけ。覚えていない。女は微笑んでこっちを見ている。
そしてマスターが差し出す俺と「同じもの」に口をつける。
俺はまだ彼女の方を見ない。微笑んでこっちを見ているのは夢の中での彼女で、実際に今微笑んでいるかどうかはわからない。そんな気がするだけだ。
正夢だとしたらこのあとどうなるのだったか。
思い出せない、もしかしたらこの辺で途切れてしまっていたか。
女が俺の腕をつかむ、胸が当たる。
「眠くなってきちゃった」
あった、夢にあった。
そうだ、そして俺は女を連れて店を出るのだ。そしてこの物語はクライマックスに向かっていく。
そうだ、席を立ってそのまま夜の街へ消えればいい。
結構酔いが回っていたようだ。座っているからわからなかったが立とうとするとよくわかる。
気を静めて立とうとするが足に力が入らない。それは酔いのせいでもあるし、腕に当たっている女の胸のせいかもしれない。
だめだ、立てない。そして睡魔がいきなり襲ってくる。
もう少しなのに、もう少しで男が大好きな結末を迎えるのに。なんだ、めまいがする。
女の顔もぼやけて見える、くそっ、ちゃんと見ておけばよかった。
ダメだ、
落ちる、
床が崩れる、
バランスを崩す、
ああ、ダメだ。
「お客さん、店閉めますよ」
なんだかいい夢を見た気がする。




