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 本作はあくまで設定がゲームになぞられているだけで異世界トリップ物ではありません。なろうの流行には大きく外れていますが、それでも読んで頂けるとありがたいです。


 ご意見、ご要望お待ちしておりますm(_ _)m

 「学校ってのは子供達を縛るためにあると思うんだよな。規則とかルールで雁字搦めにされているようで俺は嫌いなんだよ」

  石黒要いしぐろかなめはいきなり自論を持ちかけた。要は自由奔放で俗に言うチャラ男だ。男らしい顔立ちに金髪。少し不器用だが、背も高く何故か頭も良い。いつもテストで学年で五番以内に入っている。外では勉強している素振りは見せないが、実は家ではかなり勉強している努力家だ。そう考えるとこの持論はまさに要らしいと言える。

 「私はどうでしょう。どちらかというと学校は私達を守るためにあるんだと思います。安心ができるので私は好きです。」

 南岸沙智みなぎしさちは小首を傾げながら言う。腰まである黒髪がゆったりと揺れる。沙智は少し童顔だがかなりの美人である。烏の濡れ羽色の髪は腰までストレートに伸びていて、まさに風貌からして大和撫子だ。さらに弓道までやっていてこの前は全国大会で3位になったと集会で表彰されていた。今も弓と矢筒を肩にかけている。勉強、料理が苦手だがそれを補って余りあるほどの能力を持っている。

 「海斗くんはどうですか?」

 沙智は僕、斑目海斗まだらめかいとに尋ねた。はて、学校のイメージか。平凡な僕は勉強する場所というものがまず浮かぶ。しかしこれは行為であり、この質問の答えとしては些か的外れである。僕にとっての学校。平凡な僕が先の二人のように特殊な人と出会えたのはこの学校のおかげだ。そして己の小ささを味わえたのもこの学校のおかげだ。そうと決まれば答えは一つしか無い。

 「僕も自分の限界を教えられているようで嫌いだよ。でもそれはとても大切なことだと思う」

僕は全部平均的で、自分の限界など簡単にたどり着いてしまうだろう。沙智と要だって苦手なものはたくさんあるし、得意なものを死ぬ気で頑張っても決して1位になれるわけでは無い。

 「ったく。いつもお前はネガティブだよな。お前は人には無いもん持ってるだろうが。射撃とかあの百発百中具合見たら皆驚くぜ。」

 あぁそうだった。僕は目が良く目測が得意なんだった。クレー射撃を一度やったことがあったが円盤の形をしたクレーを50個全部を撃ち落とした事がある。けれど実際はオリンピック選手などの方が僕よりずっと上手い。練習したって器用貧乏な僕の射撃の精度の伸び代など高が知れている。ついでにあの時、要は1個で沙智は43個の記録だった。

 「まぁ確かにあれは僕の唯一の長所だね。ん、明日香が来たみたいだ。そんじゃ帰ろう」

 気恥ずかしさを感じていた。だから少し素っ気ない態度を取ってしまったが、しかし生徒会の仕事が終わった明日香が来たのも本当で、僕は自分の机から鞄を取って立ち上がった。

 それに合わせたように教室のドアが開く。

 「はいはーい。ごめんね。あたしのせいで下校時刻ギリギリまで待ってもらっちゃって」

 「本当だぜ。もうすぐテストなんだぞ。早めに帰らせろ」

 「えー!いいじゃんいいじゃん。要はいつも良い成績とってるんだからさ」

「お前は生徒会入ってるくせに全然勉強出来ないけどな」

「うー!頭が良くなくちゃ模範的な生徒になれないわけじゃないもん。」

 八重明日香。運動や勉強で突出している所は無いが、誰からも好かれる性格をしている。さらに容姿も抜群で沙智とはタイプが違うがやはりトップクラスの美貌を持っている。亜麻色の髪をサイドポニーにしていて、見た目からも活発な女の子だと伺えた。

 要と明日香は言い争いをする事が多い。けれど別に仲が悪いというわけでは無く、これはスキンシップに近い。お互いどこか表情が笑っているので険悪な空気は流れない。沙智も二人のやり取りを微笑ましそうに見ている。

 斜陽に照らされた教室はとても綺麗だ。時刻はそろそろ午後の五時を回ろうとしている。外から部活の喧騒が響いている。三年が抜けて二年生が張り切っているように見える。一年もレギュラーに入ろうと必死なのだろう。

 『皆さん下校の時刻になりました』

 いつもと同じ録音された音声。僕達はこれを合図にいつも帰る。このあと「教室の戸締りをし、速やかに下校しましょう」という台詞が流れる。しかし今回はいつもと大分違っていた。

『只今からゲームを始めます。化物に化けている化物、メタモルフォーゼを六匹倒して下さい。ではスタート』

 「え?」

誰が声に出したか分からない。僕かもしれないし、他の誰かかもしれない。もしくは全員という可能性もある

 聞き慣れた音声。けれど放送している内容はいつもと全く違う。訳のわからない説明不十分過ぎる内容。おちょくっているとしか言えない内容。しかし今回は単なる嘘でもふざけている訳でも無い事がすぐに分かった。

 「キャーーーー! 」

 「うぐああああああ! 」

突然の悲鳴。僕達は運動場を見た。女の子が手に口を当てて泣いている。彼女はバレー部だろうか。そしてその前には首を食いちぎられた男子生徒とその男子生徒の頭を今にも噛み砕こうとしている大きな犬がいた。いや、あれは狼か。四本足の状態でも高さは一メートルを優に超えている。そして後ろにもたくさんの狼がいた。

 「ひっ、こ、来ないで!」

 震えた声が聞こえる。

 「う、うあぁぁぁぁ!」

 情けない声が聞こえる。

 それも仕方ない。あちらでは目玉が直径一メートル近くもあり、体の大半を占めている蝙蝠に男子生徒が食われていた。数は10匹程度だろうか。それにこちらでは5匹の大きな狼が女子生徒を楽しげに追い詰めている。

 ある者は恐怖で足が震えて立てず、ある物は怪物に食われ、ある者は必死に逃げようとしている。その中でも早く立ち直れたものはいた。彼らは校門へと必死に走っている。外には人も車も、そして化物も全くいない。それはまるで校門の外と内では世界が違うようだった。上手く逃げれたものは校門に行ったり、フェンスに足をかけて学校から脱出しようとしている。しかしそのどれもが見えない壁にぶつかったようになり、そして倒れ、化物に食われていった。夕陽により赤く染められた運動場に、真紅と呼んでも良い血が飛び散る。それは同系色相であるのにも関わらず、全くと言っていいほど馴染んでいなかった。その様まさに地獄。脱出も出来そうも無い。

 「どういう事なんですか?これは……」

 沙智が顔を青褪めながら言った。

 「わからない。何かの演出だったら良いんだけど…… 」

 僕は答える。そんな希望的観測。間違っているに決まっている。現に今も人が殺されているのだ。けれど誰も否定しない。間違っている事は分かっているのに誰も否定したく無いのだ。

 「ねぇ、さっきまでこんなの無かったよね…。」

 明日香が僕の机を指差した。確かに僕の机の上にはさっきまで何もなかったはずである。しかし今は黄色い蔦を張り巡らせたような真っ赤な箱が置いてあった。大きさは小学校のお道具箱程度。

 「開ける?」

 明日香がさらに聞いてくる。誰も答えない。答えれない。

 「…… 」

僅かに沈黙が流れる。勿論外からの悲鳴は止まない。

 「ーーあぁ!くそ!」

 得体の知れない物はとても怖い。それは目隠しして道を歩くのに近い感覚だ。今自分が歩いている場所は車道かもしれない。自分の前方は崖であと一歩進んだら真っ逆さまに落ちてしまうかもしれない。そんな恐怖。けれど要はその恐怖を押し殺すように叫んだ。そして箱にズカズカと近づき、勢い良く開けた。箱には鍵もストッパーもされていなかったらしく、何かに引っかかるような事は無い。要は中身を見ると皮肉気に笑い、そして箱の中身を僕達にも見せて来た。果たしてその中には銃が2丁入っていた。


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