第16話「種族を超えて」
あれから——
数年が、過ぎた。
俺たちの冒険は——
いつの間にか、伝説になってた。
「オークの勇者」の物語。
種族の壁を——
越えた、英雄譚。
最初は——
誰も、信じなかった。
でも——
今は、違う。
王都の大通りを——
歩いてると、子供たちが集まってくる。
「グロッグさん!」
「本物だ!」
人間の子供も——
オークの子供も、ゴブリンの子供も——
みんな一緒に、笑ってる。
「サインください!」
「冒険の話、聞かせて!」
俺は——
膝を、つく。
子供たちの——
目線に、合わせる。
「いいっすよ! 何でも聞いてくれっす!」
エリシアが——
呆れたように、笑う。
「相変わらず、子供に甘いですわね」
「いいじゃん! 可愛いっすもん!」
リオンも——
剣を、磨きながら微笑む。
「昔なら——考えられない光景だな」
◆
王国では——
「種族平等法」が、制定された。
オークや——
他の魔物種族も、市民権を得た。
共に——
学び、働き、暮らせる。
そんな——
社会が、実現した。
最初は——
反発も、あった。
「魔物に権利など!」
「危険すぎる!」
でも——
俺たちの活躍が、証明した。
種族なんて——
関係ない。
大切なのは——
心だって。
クロード騎士団長が——
王の前で、言ってくれた。
「彼らは——我が国の英雄であります」
「種族ではなく、行いで人を測るべきです」
王は——
頷いた。
「そうだな……我々は、間違っていた」
法律が——
変わった。
社会が——
変わった。
人々の——
心が、少しずつ変わっていった。
◆
今日は——
小さな村に、立ち寄った。
ここにも——
変化が、訪れてる。
村の広場で——
子供たちが、遊んでる。
人間の子供が——
オークの子供と、鬼ごっこしてる。
「待てー!」
「捕まえてみろー!」
笑い声が——
響く。
ドワーフの子供も——
エルフの子供も、混ざってる。
みんな——
同じ、子供だ。
種族なんて——
関係ない。
ただ——
一緒に、遊んでる。
俺は——
立ち止まった。
胸が——
熱く、なる。
視界が——
滲む。
「やっと……」
声が——
震える。
「やっと、こんな世界になったんすね」
涙が——
頬を、伝う。
止められない。
この光景が——
嬉しくて、嬉しくて。
ずっと——
夢見てた、世界。
種族の壁が——
ない、世界。
みんなが——
笑い合える、世界。
それが——
ここに、ある。
エリシアが——
隣に、立つ。
「あなたが変えた世界ですわ」
優しい——
声だった。
「いや……みんなで、変えたんすよ」
俺は——
涙を、拭う。
「エリシアも、リオンも、ミーシャも、ザックも」
「みんながいたから……ここまで来れたんす」
リオンが——
剣を、掲げる。
「俺たちの冒険は——終わらない」
力強い——
声だった。
「まだまだ、やることはある」
ミーシャが——
弓を、担ぐ。
「次はどこ行く?」
ワクワクした——
声だった。
「新しい場所、たくさんあるよね!」
ザックが——
杖を、握る。
「どこだって付き合うぜ」
ぶっきらぼうだけど——
優しい、声だった。
グルーシャが——
俺の腕に、しがみつく。
「グロッグ様と一緒なら、どこでも!」
熱い——
視線だった。
「ついていきますわ、永遠に!」
「はいはい……ありがとな、グルーシャ」
◆
夕日が——
沈み始める。
空が——
オレンジに、染まる。
美しい——
色だ。
俺たちは——
村を、出る。
次の町へ——
向かう。
まだまだ——
困ってる人が、いる。
助けを——
必要としてる人が、いる。
俺たちは——
そこへ、向かう。
それが——
俺たちの、使命だ。
勇者として——
じゃない。
仲間として——
友として。
ただの——
冒険者として。
「なあ、みんな」
俺は——
振り返る。
仲間たちの——
顔を、見る。
エリシアの——
誇らしげな、笑顔。
リオンの——
頼もしい、笑顔。
ミーシャの——
明るい、笑顔。
ザックの——
不器用な、笑顔。
グルーシャの——
純粋な、笑顔。
みんな——
最高の、仲間だ。
「異世界転生、最高っす!」
俺は——
叫ぶ。
空に——
向かって。
「これからも、よろしく頼むっす!」
「「「おー!」」」
声が——
重なる。
夕日の中——
俺たちは、歩く。
前を——
向いて。
未来を——
見つめて。
道は——
続いてる。
どこまでも——
続いてる。
まだ見ぬ——
景色が、待ってる。
まだ会わぬ——
人が、待ってる。
新しい——
冒険が、待ってる。
オークの勇者と——
仲間たちの、物語。
それは——
これからも、続いていく。
種族を——
越えて。
偏見を——
越えて。
限界を——
越えて。
俺たちは——
進む。
どこまでも——
どこまでも。
空は——
まだ、青い。
大地は——
まだ、広い。
世界は——
まだまだ、知らないことだらけだ。
それが——
楽しい。
それが——
最高だ。
グロッグ・ブレイドハート。
元は——
普通の人間だった。
今は——
オークの勇者だ。
でも——
本当は、そんな肩書きなんてどうでもいい。
俺は——
俺だ。
仲間と——
笑い合える。
困ってる人を——
助けられる。
新しい世界を——
見られる。
それだけで——
十分だ。
「行くぞ、みんな!」
「おー!」
夕日が——
背中を、照らす。
影が——
長く、伸びる。
一つ、二つ、三つ——
六つの影が、重なる。
俺たちは——
一つの、パーティだ。
これからも——
ずっと。
◆
オークだけど勇者やってます。
その物語は——
ここで、終わる。
でも——
彼らの冒険は、終わらない。
世界の——
どこかで。
今日も——
誰かを、助けてる。
今日も——
笑い合ってる。
今日も——
前を、向いて歩いてる。
種族を——
超えた、絆。
それは——
永遠に、続いていく。
新しい——
世界で。
新しい——
明日へ。
——完——




