第15話「新たな旅立ち」
戦いが終わって——
三日が経った。
王都は——
復興作業に追われていた。
破壊された城壁が、修復される。
倒壊した建物が、建て直される。
街に——
活気が、戻ってきた。
「グロッグ殿」
謁見の間で——
国王が、俺を呼ぶ。
「はい」
膝を——
つく。
「そなたの活躍、まことに見事であった。王国の名において、そなたに勇者の称号を授ける」
おお——
マジか。
勇者の称号って——
あれだ、正式なやつ。
「ありがとうございます!」
頭を——
下げる。
でも——
「でも、俺はまだまだ未熟っす」
顔を——
上げて、国王を見る。
「魔王は倒したけど、世界にはまだ危険がいっぱいあるっす。もっと強くならないと、みんなを守れない」
国王が——
微笑む。
「そうか。ならば、旅を続けるのだな」
「はい! パーティのみんなと一緒に、世界中を旅するっす!」
エリシアが——
一歩、前に出る。
「陛下、わたくしも同行いたします」
リオンも——
続く。
「俺もだ。まだこいつには及ばないからな」
ミーシャが——
手を挙げる。
「あたしも行く! グロちゃんと一緒じゃなきゃつまんない!」
ザックが——
腕を組む。
「まあ、こいつら放っといたら死にそうだしな」
みんなが——
揃ってる。
最高の——
仲間たちだ。
「では、そなたたちに幸あれ」
国王が——
手を掲げる。
謁見の間を——
出る。
廊下で——
クロード騎士団長が待っていた。
「グロッグ」
「騎士団長」
彼は——
俺の肩を、叩く。
「最初は……正直、認めたくなかった」
「知ってるっす」
笑う。
「だが、お前は俺の考えを変えた。種族じゃない、心だ。それを教えてくれた」
「照れるっすね」
頭を——
かく。
「また王都に戻ったら、顔を見せろ」
「もちろんっす!」
王都を——
出る前に。
俺には——
行かなきゃいけない場所があった。
「グロッグ様ああああああああっ!」
グルーシャが——
全速力で、突進してくる。
オークの村だ。
ドスン。
抱きつかれる。
重い。
「お、おう……」
村長が——
近づいてくる。
グルーシャの、父親だ。
「グロッグ殿、魔王を倒したと聞きました」
「はい、みんなで頑張ったっす」
村長が——
深々と、頭を下げる。
「我が娘を……よろしく頼みます」
「えっ」
「娘はずっとあなたを慕っております。どうか、妻にしてやってください」
おいおい——
プロポーズかよ!
「ちょ、ちょっと待ってください! 俺、まだ旅に出るんすよ! 」
「旅にも同行させます!」
「グロッグ様! あたし、お料理も洗濯もできます! ついていきます!」
グルーシャが——
目を、キラキラさせる。
オーク視点だと——
俺、イケメンらしいし。
困った。
「あの、俺、今は冒険に集中したいっていうか……」
エリシアが——
助け舟を、出す。
「グルーシャさん、グロッグには今、やるべきことがありますの。もう少し待ってあげてくださいな」
「エリシアさん……」
グルーシャが——
涙目で、頷く。
「わかりました……でも、必ず戻ってきてくださいね」
「おう、約束するっす」
村を——
後にする。
背後から——
「待ってます、グロッグ様ああああっ!」
という——
叫び声が、聞こえた。
ミーシャが——
クスクス笑う。
「グロちゃん、モテモテだね」
「笑うなって……」
出発の——
朝。
王都の門に——
人が、集まっていた。
たくさんの——
民衆だ。
「オークの勇者!」
「ありがとう!」
「また戻ってきてくれ!」
声が——
響く。
子供が——
走ってくる。
「勇者様! サインください!」
「おう!」
しゃがんで——
紙に、名前を書く。
字は——
下手だけど。
「ありがとう!」
子供が——
嬉しそうに、笑う。
老人が——
近づいてくる。
「わしの孫を、救ってくれてありがとう」
深々と——
頭を、下げる。
「いえ、当然のことをしただけっす」
商人が——
手を、振る。
「旅の途中で困ったら、うちの店に来てくれ! サービスするぞ!」
「マジっすか! ありがとうございます!」
みんなの——
笑顔が、眩しい。
エリシアが——
隣に、来る。
「次の目的地はどこですの?」
地図を——
広げる。
「ここっす!」
指差した先は——
未開の大陸だ。
「東の海を越えた先にある、謎の大陸っす! 誰も行ったことがないらしいっすよ!」
リオンが——
眉を、ひそめる。
「危険じゃないか?」
「だから面白いんすよ! きっとすごい冒険が待ってるはず!」
ミーシャが——
目を、輝かせる。
「わあ! 未開の大陸だって! どんな生き物がいるのかな!」
ザックが——
溜息を、つく。
「まあ、こいつが行くって言ったら止まんねえしな」
「わかってるじゃないっすか!」
リオンが——
剣を、掲げる。
「ならば、行こう。まだ俺たちは成長途中だ」
エリシアが——
杖を、構える。
「未知なる知識が待っていますわね。楽しみですわ」
みんなが——
前を、向く。
「じゃあ、行くっすよ!」
門を——
くぐる。
民衆の——
歓声が、背中を押す。
「いってらっしゃい!」
「無事でな!」
「また会おう!」
手を——
振り返す。
みんなも——
手を、振ってる。
◆
王都が——
遠ざかっていく。
街道を——
歩く。
風が——
心地いい。
「なあ、グロッグ」
リオンが——
話しかけてくる。
「なんすか?」
「お前と旅をして……俺は変われた気がする」
「リオンが?」
「ああ。種族とか、見た目とか……そんなものに囚われてた自分が、恥ずかしい」
彼は——
空を、見上げる。
「お前を見てたら、大切なのは心だって、わかった」
「照れるっすね」
笑う。
「でも、まだお前には勝てない。だから、もっと強くなる」
「おう! お互い、頑張ろうっす!」
拳を——
合わせる。
エリシアが——
本を、読みながら歩いてる。
「エリシア、前見ないと危ないっすよ」
「大丈夫ですわ。これは未開の大陸に関する数少ない記録ですの」
「へえ、何が書いてあるんすか?」
「古代文明の遺跡があるとか、巨大な魔獣が生息しているとか……興味深い内容ですわ」
目が——
輝いてる。
「楽しみっすね!」
ミーシャが——
スキップしてる。
「ねえねえ、グロちゃん! 未開の大陸って、美味しいものあるかな!」
「あるんじゃないっすか? 珍しい果物とか!」
「わあ! 食べたい!」
ザックが——
呆れた顔で、言う。
「お前ら、能天気すぎだろ」
「ザックも楽しみなくせに」
ミーシャが——
からかう。
「別に……」
顔を——
そむける。
でも——
口元が、緩んでる。
みんな——
楽しそうだ。
俺も——
楽しい。
異世界に——
転生して。
オークに——
なって。
最初は——
びっくりしたけど。
今は——
最高に、幸せだ。
仲間が——
いる。
冒険が——
待ってる。
これ以上——
何が、必要だ?
「なあ、みんな」
立ち止まる。
みんなも——
止まる。
「どうした?」
リオンが——
聞く。
「俺、みんなと旅できて、マジで幸せっす」
「急にどうしたんですの?」
エリシアが——
不思議そうな顔。
「いや、なんか言いたくなって」
笑う。
「これからも、よろしく頼むっす!」
ミーシャが——
飛びついてくる。
「グロちゃん! あたしも幸せだよ!」
リオンが——
肩を、叩く。
「ああ、こちらこそだ」
エリシアが——
微笑む。
「わたくしも……感謝していますわ」
ザックが——
そっぽを、向く。
「まあ……悪くねえな」
みんなの——
顔が、見える。
最高の——
仲間たちだ。
「じゃあ、行くっすよ! 未開の大陸へ!」
「おー!」
声を——
合わせる。
道は——
続いていく。
地平線の——
向こうに。
未知の——
世界が、広がってる。
どんな——
冒険が、待ってるんだろう。
どんな——
出会いが、あるんだろう。
考えるだけで——
ワクワクする。
俺は——
オークだけど、勇者だ。
それが——
俺の、誇りだ。
見た目なんて——
関係ない。
大切なのは——
心と、行動だ。
それを——
証明してきた。
これからも——
証明していく。
風が——
吹く。
新しい——
冒険への、風だ。
「グロッグ!」
リオンが——
指を、差す。
「見ろ、海が見えるぞ」
「マジっすか!」
走り出す。
丘を——
越える。
そこには——
青い海が、広がっていた。
キラキラと——
光を、反射してる。
「きれい……」
エリシアが——
呟く。
「あの海の向こうに、未開の大陸があるんすね」
「船は手配してありますの。港まで行きましょう」
「おう!」
海に——
向かって、歩く。
太陽が——
高く、昇ってる。
空は——
どこまでも、青い。
グロッグたちの——
冒険は、まだ始まったばかりだ。
世界は——
広い。
まだ見ぬ——
場所が、たくさんある。
まだ会わぬ——
人が、たくさんいる。
その全てが——
俺たちを、待ってる。
「行くぞ、みんな! 新しい世界へ!」
「おー!」
海風が——
頬を、撫でる。
潮の——
匂いが、する。
これから——
どんな冒険が、待ってるんだろう。
楽しみで——
仕方ない。
俺たちは——
前を、向いて歩く。
新たな——
物語へ。
オークの勇者と——
仲間たちの、冒険は——
これからも、続いていく。




