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第14話「戦いの終わり」

魔王が——


倒れた。


その瞬間——


戦場に、静寂が訪れる。


魔王軍の魔物たちが——


力を失ったように、その場に崩れ落ちた。


指揮官を失った軍勢は——


統制を失い——


逃げ惑い、霧散していく。


「勝った……のか?」


リオンが——


呆然と呟く。


「ええ……勝ちましたわ」


エリシアが——


震える声で、答える。


そして——


次の瞬間。


「勝ったぞ! 魔王が倒れた!」


「戦争が終わった!」


兵士たちの——


歓声が、戦場に響き渡る。


剣を、空に掲げ——


仲間と抱き合い——


涙を流して喜ぶ者たち。


みんな——


生き延びた喜びに、震えている。


俺も——


膝の力が抜けた。


「……終わったんだ」


呟く。


実感が——


じわじわと、湧いてくる。


長かった戦いが——


本当に、終わったんだ。



王都に——


帰還した俺たちを迎えたのは——


街を埋め尽くす、民衆の歓声だった。


「勇者様万歳!」


「魔王を倒してくれた!」


「平和が戻った!」


道の両側に——


びっしりと人が並び——


花を投げ、旗を振る。


その熱狂に——


圧倒される。


「すごい……」


ミーシャが——


目を丸くする。


「これが、勝利の凱旋というものか」


リオンが——


感慨深げに呟く。


「でも、みんな……」


エリシアが——


戸惑いを隠せない表情で。


「グロッグを見ても、逃げませんわね」


そう——


民衆の視線は——


俺にも向けられている。


オークの姿を見て——


誰も悲鳴を上げない。


誰も顔を背けない。


それどころか——


「オークの勇者!」


「グロッグ様、ありがとう!」


「あなたが世界を救ってくれた!」


歓声は——


俺にも、向けられている。


涙が——


出そうになった。


こんな日が——


来るなんて。


思っても、いなかった。


「グロッグ」


エリシアが——


微笑む。


「これが、あなたが勝ち取ったものですわ」


「違うっす」


俺は——


首を振る。


「みんなで、勝ち取ったんすよ」


「……そうだな」


リオンが——


笑って、肩を叩く。


「俺たちの、勝利だ」



王宮では——


盛大な祝賀会が開かれた。


大広間は——


華やかな装飾で彩られ——


貴族や騎士団の幹部たちが、集まっている。


俺たちが——


入場すると——


一斉に、視線が集まる。


その中には——


好奇の目も、警戒の目も、混じっている。


でも——


以前とは、違う。


明らかな敵意は——


感じられなかった。


「勇者パーティの諸君!」


クロード騎士団長が——


壇上に立ち——


朗々と、声を張り上げる。


「君たちの活躍により、我が王国は救われた!」


拍手が——


広間を満たす。


「特に——」


クロードは——


俺を、見た。


「グロッグ・ブレイドハート」


緊張が——


走る。


何を、言われるんだろう。


まさか——


やっぱり、オークだからって——


「お前こそが、真の勇者だ」


その言葉に——


場が、静まり返る。


「私は恥じている」


クロードは——


続ける。


「最初、お前を勇者と認めたくなかった」


「オークなどという魔物が、勇者になれるわけがないと——」


「そう、思い込んでいた」


彼の声は——


深い反省を、にじませている。


「だが、お前は戦い抜いた」


「種族の壁を、実力で超えた」


「仲間を守り、民を守り、王国を守った」


「それは紛れもなく——」


クロードは——


拳を、胸に当てる。


「勇者の、行いだ」


「オークも、人間も、関係ない」


「真の勇者とは——」


彼は——


俺を、指差す。


「グロッグ、お前のような者を言うのだ!」


その瞬間——


広間が——


割れんばかりの拍手に包まれた。


「オークの勇者万歳!」


「グロッグ万歳!」


「勇者に種族など関係ない!」


貴族たちまでもが——


立ち上がり、拍手する。


まだ、全員じゃない。


複雑な顔をしている者も、いる。


でも——


確かに、何かが変わった。


少しずつ——


確実に——


差別の壁が、崩れ始めている。


「やったね、グロちゃん!」


ミーシャが——


嬉しそうに、はしゃぐ。


「まあ、当然っちゃ当然だ」


ザックが——


照れ臭そうに、呟く。


「あなたなら、成し遂げると思っていましたわ」


エリシアが——


優雅に、微笑む。


「おい、調子に乗るなよ」


リオンが——


笑いながら、からかう。


みんなが——


祝福してくれる。


これ以上——


嬉しいことは、ない。



祝賀会が——


最高潮に達した頃。


エリシアが——


俺に近づいてきた。


「少し、外へ出ませんか?」


「あ、はい」


バルコニーに——


出ると——


夜風が、心地よい。


王都の街並みが——


眼下に広がっている。


あちこちに——


焚き火が見え——


民衆が祝杯を上げているのが、わかる。


「本当に、終わったんですわね」


エリシアが——


しみじみと、呟く。


「そうっすね」


「正直に言いますと——」


彼女は——


夜空を、見上げる。


「最初、あなたのことが理解できませんでした」


「オークなのに、なぜそこまで明るいのか」


「なぜ、差別されても笑っていられるのか」


「なぜ、諦めないのか」


彼女の声は——


静かで、穏やか。


「でも、今ならわかりますわ」


「あなたは——」


エリシアが——


俺を、見る。


「誰よりも強く、優しく、勇敢だったから」


「種族なんて——」


「本当に、些細なことだったのですわ」


彼女は——


微笑む。


「あなたと出会えて——」


「私の世界は、広がりましたわ」


「ありがとう、グロッグ」


その言葉が——


胸に、染みる。


「こっちこそ、ありがとうございます」


俺は——


頭を下げる。


「エリシアさんたちがいなかったら——」


「ここまで、来れなかったっす」


「まあ、当然ですわね」


彼女は——


くすりと笑う。


その笑顔は——


最初に会った時とは——


全然、違う。


心から——


リラックスした、笑顔だった。



翌日——


訓練場で——


リオンと、会った。


「よう」


彼は——


剣を、肩に担いでいる。


「一本、どうだ?」


「え、今からっすか?」


「戦争は終わったが——」


リオンは——


不敵に、笑う。


「俺とお前の勝負は、まだついてない」


「はは、そりゃそうっすね!」


俺も——


剣を、抜く。



激しい——


打ち合いの末——


俺たちは、同時に剣を収めた。


「……まだ、届かないな」


リオンが——


悔しそうに、呟く。


「でも、すごい腕前っすよ」


「誰のおかげだと思ってる」


彼は——


笑う。


「お前という、最高の目標がいたからだ」


そして——


拳を、差し出す。


「次は——」


「俺が、お前を超える」


その目は——


以前とは違う。


ライバルとしての——


尊敬と、闘志が——


込められている。


「いつでも来てくださいっす!」


俺も——


拳を、合わせる。


ゴツン——


という音が、響く。


「また、強くなろうぜ」


「もちろんっす!」


笑い合う。


仲間同士の——


最高の、瞬間だった。



その後——


ミーシャとザックにも、会った。


「ねえねえ、グロちゃん!」


ミーシャが——


弾んだ声で言う。


「戦争は終わったけど、冒険はまだまだこれからだよね?」


「また一緒に、色んな所に行こう!」


「当たり前っす!」


俺は——


笑う。


「これからも、よろしく頼むっす!」


「まあ、お前が困ったときは助けてやるよ」


ザックが——


ぶっきらぼうに、言う。


でも——


その目は、優しい。


「ありがとうございます!」


「……礼なんていらねえよ」


彼は——


照れ臭そうに、そっぽを向く。


みんな——


最高の仲間だ。



そして——


「グロッグ様ー!」


飛び込んできたのは——


グルーシャだった。


「う、うわっ!」


「グロッグ様、会いたかったです!」


彼女は——


俺に、抱きつく。


「あの、グルーシャさん……」


「グロッグ様、本当にかっこよかったです!」


「魔王を倒すなんて、さすがです!」


「もう、惚れ直しちゃいました!」


彼女の目が——


キラキラ、輝いている。


「だから——」


「グルーシャは、グロッグ様と結婚します!」


「ええええ!?」


周囲が——


どっと、沸く。


「いや、まだ早いっすよ!」


「早くないです!」


グルーシャは——


頬を膨らませる。


「グロッグ様は、世界一のイケメンで、世界一強くて——」


「グルーシャの理想の殿方です!」


「理想って言われても……」


困り果てる俺を見て——


みんなが、笑う。


エリシアも——


ミーシャも——


リオンもザックも——


みんな、楽しそうに笑っている。


ああ——


これが——


平和なんだな。


こんな——


馬鹿みたいなやり取りができる。


それが——


どれだけ、幸せなことか。



数日後——


俺は——


王都の、城壁に立っていた。


遠くに——


地平線が、広がる。


まだ見ぬ——


世界が、待っている。


「グロッグ」


振り返ると——


エリシアたちが、いた。


「次は、どこへ行くんだ?」


リオンが——


聞く。


「うーん……」


俺は——


考える。


「まだ、決めてないっすけど——」


「世界は、広いっすからね」


「まだまだ、冒険したいっす」


「それに——」


俺は——


みんなを、見る。


「まだ、種族の壁が完全に消えたわけじゃないっす」


「オークや、他の魔物種族への差別も——」


「まだまだ、残ってる」


「だから——」


俺は——


拳を、握る。


「もっと、冒険して——」


「もっと、活躍して——」


「みんなに、見せたいんすよ」


「種族なんて、関係ないって」


「誰だって、頑張れば——」


「認められるって」


その言葉に——


みんなが、笑顔になる。


「相変わらず、お人好しですわね」


エリシアが——


呆れたように、笑う。


「でも——」


「それが、あなたの良いところですわ」


「じゃあ、また冒険だね!」


ミーシャが——


嬉しそうに、飛び跳ねる。


「まあ、付き合ってやるよ」


ザックが——


肩を、すくめる。


「俺も、まだまだ強くなりたいしな」


リオンが——


不敵に、笑う。


「グロッグ様、どこへでもついていきます!」


グルーシャが——


目を、輝かせる。


みんなが——


一緒に、来てくれる。


こんなに——


心強いことは、ない。


「じゃあ——」


俺は——


剣を、空に掲げる。


「また、冒険の始まりっすね!」


「おう!」


みんなの——


声が、重なる。


風が——


吹く。


新しい——


冒険への、風だ。


世界は——


まだまだ、広い。


俺たちの——


物語は——


これからも、続いていく。


オークだけど——


勇者やってる。


それが——


俺の、生き方だ。


これからも——


ずっと——


みんなと一緒に。


空を——


見上げる。


青空が——


どこまでも、広がっている。


新しい——


世界へ——


歩き出そう。


「行くぞ、みんな!」


「おー!」


俺たちは——


新たな——


冒険へと、旅立った。


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