第12話「王都攻防戦・前編」
王都の、城壁——
見上げる。
石造りの、巨大な壁。
そこに——
無数の、魔物が、群がっている。
「うわぁ……マジっすか、これ」
思わず、呟く。
城壁の上では——
兵士たちが、必死に応戦している。
弓矢が、放たれる。
魔法が、炸裂する。
それでも——
魔物の、波は、止まらない。
「数が多すぎる!」
リオンが、叫ぶ。
「文句を言っている暇があったら戦いなさい!」
エリシアが、鋭く言い放つ。
その手に——
青白い光が、集まる。
「《氷結の槍》!」
魔法陣が、展開される。
空中に——
無数の氷の槍が、出現する。
「いけっ!」
エリシアの、号令。
氷の槍が——
一斉に、魔物たちへ降り注ぐ。
ゴブリンが、吹き飛ぶ。
オーガが、凍りつく。
それでも——
次から次へと、新たな魔物が現れる。
「キリがねえな!」
ザックが、舌打ちする。
「まあ、やるしかないっすけどね!」
俺は——
剣を、抜く。
魔剣エクリプス。
その刀身が——
鈍く、光る。
「行くっすよ!」
地面を、蹴る。
魔物の、群れへ——
突っ込む。
「《流水剣・瞬》!」
一閃。
横薙ぎの、軌跡。
前方の魔物たちが——
一度に、切り裂かれる。
「っし!」
そのまま——
踏み込む。
次の、魔物へ。
「《雷鳴剣・迅》!」
縦の、斬撃。
電撃を纏った、刃。
オーガの、巨体が——
真っ二つに、なる。
「さすがグロちゃん!」
ミーシャの、声。
振り向くと——
彼女が、弓を構えている。
「私も負けてらんないよね!」
矢が、放たれる。
一本、二本、三本——
連射。
全ての矢が——
確実に、魔物の急所を穿つ。
「ナイスっす、ミーシャ!」
「へへっ!」
彼女が、笑う。
「後ろ!」
リオンの、警告。
振り向く。
魔物が——
俺の背後に、迫っている。
間に合わ——
「遅い!」
リオンの、剣閃。
魔物が——
俺に届く前に、切り伏せられる。
「助かったっす!」
「ふん。礼は後だ」
リオンが——
すぐに、次の敵へ向かう。
その背中は——
頼もしい。
仲間が、いる。
共に、戦える。
これが——
「《回復の光》!」
ザックの、魔法。
温かい、光が、体を包む。
浅い傷が——
瞬時に、塞がっていく。
「おっ、サンキューっす!」
「ぼーっとしてんな! まだ来るぞ!」
その言葉通り——
新たな魔物の波が、押し寄せる。
しかし——
「はあああっ!」
エリシアの、魔法が、炸裂する。
「いけえっ!」
ミーシャの、矢が、降り注ぐ。
「でやああっ!」
リオンの、剣が、閃く。
「ちっ、しつけえ!」
ザックの、光の槌が、魔物を打ち砕く。
そして——
「俺の、番っす!」
《流水剣・円舞》。
回転しながらの、全方位斬撃。
周囲の魔物たちが——
一掃される。
「っし!」
着地。
息を、整える。
パーティの、連携。
完璧だ。
「民を守れ!」
「勇者様が戦ってくださっている!」
城壁の上から——
兵士たちの、声。
民衆が——
こちらを、見ている。
希望の、眼差し。
「……頼られてるっすね」
呟く。
重い。
でも——
悪く、ない。
「グロッグ!」
エリシアの、声。
「何っすか!」
「あれを見なさい!」
彼女が、指差す方向——
見る。
魔物の群れが——
割れる。
そこから——
現れたのは、人型の影。
いや——
人では、ない。
漆黒の鎧を纏った——
魔族。
「魔王軍、幹部……!」
リオンが、警戒する。
幹部が——
こちらを、見る。
「クク……久しぶりだな、オークの勇者」
その声に——
覚えが、ある。
「……ベルザード!」
以前、戦った——
魔王軍幹部の一人。
「よくぞ生き延びたものだ」
ベルザードが——
剣を、抜く。
禍々しい、黒い刃。
「今度こそ、貴様を殺す」
「やれるもんなら、やってみるっす!」
俺も——
剣を、構える。
「ふん。相変わらず減らず口を……」
ベルザードが——
言葉を、止める。
そして——
嘲笑する。
「そういえば——忘れていたよ」
「何っすか?」
「貴様は哀れな存在だったな」
「……は?」
「オークでありながら、人間の勇者を名乗る」
ベルザードの、声が——
冷たく、響く。
「人間は貴様を仲間とは思っていない。差別し、蔑んでいる」
「っ……」
「そしてオークたちも——貴様を裏切り者と見なしている」
「それが、何っすか」
「わからぬか? 貴様には居場所がないのだ」
ベルザードが——
一歩、踏み出す。
「人間にも、オークにも——どこにも属せぬ、哀れな存在」
その言葉が——
胸に、刺さる。
以前なら——
動揺、していたかもしれない。
でも——
「……それが、どうした」
俺は——
剣を、握り直す。
「俺の居場所は——」
仲間を、見る。
エリシア。
ミーシャ。
リオン。
ザック。
「仲間がいる、ここっす!」
叫ぶ。
「人間だろうが、オークだろうが——そんなもん、関係ねえ!」
「……ほう」
「俺は、俺っす! それ以上でも、それ以下でもねえ!」
魔剣を——
構える。
「お前を、倒す!」
「フハハ……面白い」
ベルザードが——
剣を、振りかぶる。
「ならば——その覚悟、試してやろう!」
地面が、砕ける。
ベルザードが——
突進してくる。
速い。
けど——
「遅い!」
《流水剣・瞬》。
横へ、回避。
同時に——
斬撃。
「ぬっ!?」
ベルザードの、鎧に——
刃が、食い込む。
「やったっす!」
「甘い!」
ベルザードの、拳。
腹に——
叩き込まれる。
「があっ!」
吹き飛ぶ。
地面を、転がる。
「グロッグ!」
エリシアの、声。
「だ、大丈夫っす……!」
立ち上がる。
痛い。
けど——
「まだっす!」
再び、構える。
「《氷結の槍》!」
エリシアの、魔法。
氷の槍が——
ベルザードへ、殺到する。
「無駄だ!」
ベルザードが——
剣を、一閃。
氷の槍が——
全て、砕かれる。
「ちっ!」
「私が援護する!」
ミーシャの、矢。
連射される、矢の雨。
「虫が!」
ベルザードが——
剣を、振るう。
矢が——
弾かれる。
「くそ!」
「俺が行く!」
リオンが——
突撃する。
「《烈風剣》!」
風を纏った、斬撃。
ベルザードと——
剣が、ぶつかる。
火花が、散る。
「ぬおおっ!」
「ぐっ……!」
押し合い。
リオンが——
押され始める。
「させるか!」
俺が——
横から、斬りかかる。
「《流水剣・連》!」
連続斬撃。
ベルザードの、体に——
幾つもの傷が、刻まれる。
「ぐああっ!」
ベルザードが——
後退する。
「今だ、リオン!」
「ああ!」
リオンと、俺——
同時に、踏み込む。
「「でやああああっ!」」
二人の、剣。
交差する、斬撃。
ベルザードの、体が——
大きく、裂ける。
「ぐ……ぐおおおっ……!」
膝を、つく。
「……やった、っすか?」
息を、整える。
ベルザードが——
倒れる。
「《回復の光》!」
ザックの、魔法。
体力が、回復する。
「サンキュー、ザック」
「礼はいい。まだ戦いは続くぞ」
その言葉通り——
周囲には、まだ魔物が溢れている。
「みんな、続けるっすよ!」
「ええ!」
「了解!」
再び——
戦いへ。
魔物を、切り裂く。
倒す。
護る。
時間が——
過ぎていく。
どれだけ、戦っただろう。
息が——
上がってくる。
「はぁ……はぁ……」
それでも——
魔物は、減らない。
「キリが、ねえっす……」
呟いた、その時——
空気が、変わる。
冷たい。
重い。
圧倒的な——
魔力。
「な、何っすか、これ……!」
空を、見上げる。
そこに——
「人間たちよ」
声が、響く。
天空に——
人影。
いや——
魔王。
「よくぞ、ここまで耐えた」
ゼルギウスが——
ゆっくりと、降りてくる。
その姿は——
威厳に、満ちている。
「だが——もう終わりだ」
地上に——
降り立つ。
魔王ゼルギウス。
その瞳が——
俺を、捉える。
「さあ、オークの勇者よ」
ゼルギウスが——
剣を、抜く。
「私と決着をつけよう」
周囲の、魔物たち。
兵士たち。
仲間たち。
全てが——
静止したように、見える。
魔王と——
俺。
一騎討ち。
「……上等っす」
俺は——
剣を、構える。
最終決戦——
今、始まる。




