第6話 放課後クロスオーバー その10
瑞乃は生徒玄関でスマホの時刻表示にため息をつく。
珪斗と“相棒”は決着したのだろうか。
他人の痴話ゲンカなど知ったことではないけれど、ただ、今回は自分から首を突っ込んだ以上、結果を確かめずに帰るのも無責任な気がして帰れずにいる。
「そろそろ、かな」
つぶやいた時、ふと人の気配を感じて顔を向ける。
いつのまにか自分のかたわらにスーツ姿の青年が立っていた。
青年は被っていたサファリハットを浮かせて穏やかな笑顔で会釈する。
「初めまして」
もちろん瑞乃に見覚えはない。
そもそもさっきまではいなかった。
校内に存在する見慣れない人物――それはまさしく不審者以外の何者でもない。
それがなんの気配もなく突然現れ、自分に声を掛けている。
そんな事実に瑞乃は心中で恐怖がじわりとわき上がるのを感じた。
「だ……れ?」
思わず声を震わせる瑞乃だが、青年は穏やかな笑みと口調で答える。
「私は虎目と申します。人間以外の存在です」
「バケモノ……」
その言葉とは裏腹の穏やかな口調と表情に、瑞乃は不思議と全身から緊張感が消えていくのを感じる。
「私は湖山珪斗君の相棒同様に姿を見せる相手を選べるのです。その私があえてあなた、ええと、失礼ですがお名前は」
この怪しい人物に答えるべきか否か、そんなことを考えて迷っているはずの瑞乃の口が勝手に答える。
「上浜……瑞乃」
「ああ、きれいなお名前ですね。その上浜瑞乃さんに姿をお見せしたのは、ひとつお願いしたいことがありまして……」
瑞乃の表情が少し険しくなった。
この男が何者で、どういうつもりでなにを頼もうとしているのかは知らないが、そもそも、頼まれたり頼んだりすること自体があまり好きではない。
しかし、虎目はそんな瑞乃へ優しく諭すように告げる。
「いや、厄介なことではありません。今回の件であなたが湖山珪斗君から信頼されているということを私は理解しました。そこでお願いします。もう少ししたらすべてが終わります。その時に湖山珪斗君のそばにいてあげてほしいのです」
確かに“そばにいる”だけならたいした話ではないけれど――その意図が読めない以上はうかつに引き受けたくはない。
「それはどういう……」
瑞乃が問い掛けた時、虎目が背後に目をやった。
「おや、終わったようです」
瑞乃が虎目の目線を追う。
珪斗がやってくるのが見えた。




