第6話 放課後クロスオーバー その7
その頃、教室では――。
「……」
瑞乃はプレートから飛び出してきた妄想ノートを繰っていた。
珪斗が教室を出てからずっと呼びかけて、ようやく帰ってきた反応がこれだった。
ぱらぱらと繰ったページに、眉をひそめ、苦笑し、頬を染め、すべてのページを見終えた瑞乃は改めてプレートに向き直る。
瑞乃から見れば他愛のない内容だが、珪斗の言う通り怒っているとしたらこのノートが原因なのだろう。
とはいえ“他愛のない”というのはあくまでも瑞乃の感想に過ぎず、自分の印象や感想を他人も同じとする考え方は瑞乃が最も嫌う考え方のひとつだった。
瑞乃はノートを机に置くと、改めてプレートに語り掛ける。
「アタシは同性からも異性からも相手にされない人間だから、こういう経験をしたことがない。だから無責任に聞こえるかもしれないけれど……湖山に悪気はないと思う。もちろん、悪気がなければなにをしてもいいってわけじゃないけど」
反応しないプレートに瑞乃は淡々と続ける。
「湖山は“相棒さん”に対しては真剣だったと思う。“相棒ってどんなヤツ?”って訊いたけど、その答えもいやらしい感じはなかったし。一緒に川へ行った時に、アタシに口止めしたことを憶えてる? あの時の湖山はその理由を“守りたいから”って言ってたけど……。それだけ“相棒さん”の存在や自分との関係を失いたくなかったんだろうね。ずっと一緒にいてほしかったんだろうね」
珪斗ほどではないけれど瑞乃もあまり弁が立つ方ではない。
とりあえず、珪斗のことについて思い出せるまま口にする。
「“相棒さん”は知らないだろうけど、教室での湖山ってずっといるんだかいないんだかわからないような、いてもいなくても気にならないような存在だったんだよ。それがちょっと前から妙に存在感が出てきたっていうか、いるだけで生気を感じるっていうのかな――そんな感じになってきてたんだ」
自分でも“生気ってなんだよ、意味わかんねえ”と思うが、他に適当な言葉が思いつかなかったのだからしょうがない。
いわゆる身体から溢れだしている元気というか、生命エネルギーみたいなことを伝えたかった。
「それはアタシだけが感じてるんじゃなくて、クラスの中でもうわさになるくらい、はっきりと湖山は変わってきてたんだ。でも、それがまた最近は以前みたいに戻ってきてて……。で、今日、話を訊いたら“相棒が会ってくれない”ってあわあわしてさ。それでわかったよ。“相棒さん”の存在が湖山の生気を左右してるって」
改めてノートを手に取り、ぱらぱらと繰ってみる。
「湖山がこんな目で見てたってのは確かにきもいしショックだっただろうし、それをアタシが許してやれとは言えないけど……。でも、許せないなら許せないで、それを直接、湖山に伝えてやってよ。そうすりゃ湖山は絶対に改める。湖山はそれだけ“相棒さん”に対して真剣だし、必死なんだからさ」
そこまで言って瑞乃は自問する。
どうして自分はここまで湖山をフォローしているのだろう?




